今週の新興市場は上昇したものの、売買代金は膨らまず、迫力に欠ける展開となった。同時期の騰落率は、日経平均が+6.59%だったのに対し、東証グロース市場指数は+1.33%、東証グロース市場250指数は+2.09%だった。米国株上昇など外部環境を材料に東証プライム市場の大型株が強い動きを見せるなか、新興市場も買い優勢となったが、上げ幅は限定的となった。時価総額が大きいソニーグループ<6758>やキーエンス<6861>などTOPIXコア30銘柄を中心に海外投資家と思われる投資資金が向かう一方、東証グロース市場の売買代金はさほど変化が見られず。日経平均がバブル後の高値を連日更新するなか、東証グロース市場指数、東証グロース市場250指数ともに昨年末水準で上値は重かった。
個別では、決算発表を材料にプログリット<9560>が急伸したほか、25万株(2.00億円)を上限として自社株買いを実施すると発表したさくらさくプラス<7097>も大幅高となった。また、中国のバイオ医薬品企業JIXINGなどと資本業務提携すると発表したティムス<4891>が週末大幅高。そのほか、アクアライン<6173>、リニューアルJ<9522>が買われた。一方、直近IPO銘柄の雨風太陽<5616>、yutori<5892>、QPS研究所<5595>は利益確定売りに押された。また、能登半島地震に関連する思惑で買われていた地盤ネット<6072>も売り優勢となった。なお、東証グロース市場Core指数20の採用銘柄では、BASE<4477>、ジーエヌアイ<2160>が上昇した一方、ウェルスナビ<7342>が下落した。
■引き続き決算関連銘柄の値幅取りなど短期資金の流出入中心か
来週の新興市場はもみ合いか。海外投資家と思われる買いはTOPIXコア30銘柄など時価総額10兆円前後の大型株に向かっており、東証グロース市場は物色の蚊帳の外となっている。今週末の日経平均は「幻のSQ値」および36000円手前で上影(上ヒゲ)を残したことから、短期的な過熱感が意識されて売りに押される可能性がある。利益確定売り後の資金は、プライム市場の出遅れ銘柄に回る可能性はあるが、アナリストレポートなどが少なく国際的に知名度が低い新興市場に海外投資家の投資資金が向かう展開は想定しにくい。引き続き、決算関連銘柄の値幅取りなど短期資金の流出入中心で、東証グロース市場指数、東証グロース市場250指数ともに方向感は乏しくなろう。両指数ともに昨年11月の戻り高値水準を上回らない限り、主力株を中心に出来高を伴う展開は難しい。TOPIXコア30銘柄に関心が向かっている状況下、新興市場は静かな相場展開となりそうだ。
昨年12月18日に東京証券取引所は、「グロース市場の機能発揮に向けた今後の対応について」を公表した。市場の反応は限定的だったが、1月15日、東証が主導するコーポレートガバナンス改革の一環として「資本コストや株価を意識した経営の実現」に対応した企業の一覧表を東証が開示することで、今後、「企業統治」に絡んだ思惑が東証グロース市場に向かうかもしれない。海外の機関投資家も対象としたIR活動や、アナリストによるカバレッジなど東証グロース市場の企業統治の観点で対応するべき項目は多々ある。仮に物色が入った場合、GENDA<9166>、ウェルスナビ<7342>、ispace<9348>など東証グロース市場Core指数20の採用銘柄など主力どころに資金が向かうと考える。可能性は非常に低いものの、「企業統治」への期待感はもっておきたい。
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