3日の米株式市場でダウ平均は10.87ドル高(+0.03%)と小幅に3日続伸、ナスダック総合指数は+0.20%と続伸した。独立記念日の前日の短縮取引で動意に乏しい展開だった。追加利上げ懸念がくすぶり一時下落する場面があったが、6月ISM製造業景況指数が3年ぶりの低水準に落ち込むと追加利上げ観測が後退、金利先高観の後退で買い戻されて再び上昇に転じて終えた。一方、前日の大幅高の反動が先行した日経平均は241.07円安からスタート。寄り付き直後は33500円を意識する動きが見られたが、早い段階で同水準を割り込むと、その後はじわじわと下げ幅を広げる展開となった。
個別では、共同開発中の新薬の試験結果が嫌気された第一三共<4568>が急落。アステラス製薬<4503>、中外製薬<4519>の他の医薬品株も下落した。ファナック<6954>、ソニーG<6758>、ダイキン<6367>、キーエンス<6861>、ファーストリテ<9983>、信越化<4063>の値がさ株が大きく下落し、三菱商事<8058>、丸紅<8002>、三井物産<8031>
の商社の下落も目立つ。ほか、三菱重<7011>、コマツ<6301>などが安い。
一方、目標株価が引き上げられた三井住友<8316>、みずほ<8411>、三菱UFJ<8306>の銀行株が大きく上昇。ディスコ<6146>、アドバンテスト<6857>、太陽誘電<6976>、新光電工<6967>のハイテク、川崎汽船<9107>、商船三井<9104>、郵船<9101>の海運、トヨタ自<7203>、日産自<7201>の自動車の一角などが堅調。決算が好感されたネクステージ<3186>と象印マホービン<7965>が急伸し、世界初の特許取得に関するリリースで日東精工<5957>も大幅高。ほか、千葉興業銀行<8337>、富山第一<7184>など地銀株が上昇率上位に多く入っている。
セクターで医薬品、ゴム製品、卸売が下落率上位に並んだ一方、銀行、海運、保険などが上昇率上位に並んだ。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の58%、対して値上がり銘柄は38%となっている。
前日は米供給管理協会(ISM)の6月製造業景況指数が発表された。結果は46.0と景況感の拡大・縮小の分岐点である50を8カ月連続で割り込んだ。市場予想(47.1)は5月(46.9)からの改善を見込んでいたが、結果はむしろ悪化した。それにもかかわらず、前日の米株式市場は短縮取引ではあったが、底堅く推移し、主要株価指数は揃って続伸、景気敏感株の構成比が高いダウ平均も上昇して終えた。
市場関係者の間では製造業の悪さは想定内との声もあり、さほど材料視されなかったもよう。むしろ、米連邦準備制度理事会(FRB)の健全性審査(ストレステスト)を通過し増配を発表した大手銀行株が買われたほか、4-6月納車台数が過去最多を記録した電気自動車のテスラが大幅高になるなど、個別株物色が全体を支えた。
また、米ISM製造業景況指数も、たしかに予想を下回ったとはいえ、中身はそこまで悲観的ではなかった。項目別でみると、前回5月分の際に急低下し景気後退懸念を強めた新規受注(4月45.7→5月42.6)と受注残(43.1→37.5)がそれぞれ45.6と38.7へと揃って改善した。今回の景況指数の低下は主に在庫や雇用の項目の低下によるもので、この点が相場の影響が限られた背景と考えられる。
一方、新規受注と受注残は依然として50を大幅に割り込んでおり、「想定内」や
「底入れ」と前向きばかりに評価していいとは考えにくい。株式益利回りから10年債利回りを差し引いて算出するイールドスプレッド、債券利回り対比でみた米国株式のバリュエーションは依然として歴史的な割高感を示しており、少なくとも今回のISMの結果はバリュエーションの割高感を正当化できる材料ではない。FRBの利上げもまだ年内2回実施される可能性が残されており、今後どのような形で足元のバリュエーションを正当化し続けるのか注意深く見守る必要があろう。
一方、本日の東京市場は米株高をよそに反落、前日の大幅高の反動が優勢となっている。前日の日経平均の大幅高、そして終値でのバブル崩壊後高値の更新については目を見張るものだったが、本日は早々に33500円を割り込んでおり、この水準では強弱感が対立しやすいようだ。
ただ、前日は値幅の割には東証プライム市場の売買代金が3兆4000億円台と、ここ数週間の水準と比較すると活況とはいえない水準だった。一方で先物の日中売買高をみると、日経225先物が5万811枚、東証株価指数(TOPIX)先物が4万5851枚と、前者の売買高が多めだった。前日の日本株の大幅高については、四半期末に伴う需給イベント通過などのあく抜け感が意識されやすいなか、短期筋の先物主導での買い戻しが中心だったと冷静に見た方がよさそうだ。
海外投資家が取引主体である東証プライム主力銘柄の好パフォーマンスが引き続き際立っているが、セクター騰落率を見ていると物色は日替わり感が否めない。また、半導体を中心としたハイテクや値がさ株頼みの構図が再び強まっている印象も受ける。しかし、ISM製造業景況指数の下降トレンドが続き、為替の円安も1ドル=145円を前に一服しているなか、景気・為替の動向に左右されやすい主力大型株に対してはなお慎重な投資スタンスが必要と考える。こうした関連銘柄よりは、独自要因で高成長を続けているにも関わらず足元の地合いに乗りきれていないような内需系グロース株を長期目線で仕込む方が、投資妙味が高いと考える。
(仲村幸浩)
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