21日の米株式市場でダウ平均は522.45ドル安(-1.70%)と大幅続落。連邦準備制度理事会(FRB)が連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げピークを示唆する可能性などを期待した買いで上昇スタート。しかし、その後FOMCが市場の予想通り3会合連続で0.75ptの利上げを決定した一方、FRBのスタッフ予測で政策金利見通しが大幅に引き上げられると金利先高観が強まり売りに転じた。また、景気後退を懸念した売りも強まり、引けにかけて下げ幅を拡大。ナスダック総合指数も-1.79%と大幅続落。米国株の大幅続落を受けて日経平均は259.55円安と下落スタート。心理的な節目の27000円を手前に度々下げ渋っていたが、前場中ごろには同水準を割り込み一時26955.18円(357.95円安)まで下落。その後は再び27000円を回復するなど同水準を挟んだ一進一退の展開が続いた。
個別では、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、ファーストリテ<9983>、ダイキン<6367>など指数寄与度の大きい主力株のほか、村田製<6981>、新光電工<6967>、ファナック<6954>のハイテク株、リクルートHD<6098>、JMDC<4483>のグロース株が大きく下落。商船三井<9104>、川崎汽船<9107>の海運大手は大幅反落。米長期金利の上昇一服で三菱UFJ<8306>、第一生命HD<8750>が売り優勢。UACJ<5741>、大阪チタ<5726>、住友鉱<5713>など非鉄金属は総じて安い。3日ぶりに場中で値が付いたダブル・スコープ<6619>は乱高下の末に結局下落。
一方、露プーチン大統領の演説で地政学リスクの高まりが意識される中、三菱重<7011>、IHI<7013>が上昇。円安進行でトヨタ自<7203>、三菱自<7211>が堅調、ほか、JR東<9020>、JR東海<9022>の陸運、三井物産<8031>、伊藤忠<8001>の商社などがしっかり。
セクターでは海運、繊維製品、サービスを筆頭にほぼ全面安となった。一方、陸運のみが上昇した。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体72%、対して値上がり銘柄は23%となっている。
本日の日経平均はギャップダウンでのスタート。前日に割り込んだ75日、200日移動平均線を大きく下放れ、テクニカルな形状は悪化した。日足一目均衡表では、7月19日以来となる雲下限割れとなっている。
FOMC結果公表後の米株式市場は大幅続落。公表直後は下落した後に再度上昇する場面も見られたが買いは続かなかった。事前に警戒感が高まっていたうえ、株式市場は直近高値から調整していたこともあり、あく抜け期待もあったが厳しい結果となった。
下落の要因はやはり来年以降の政策金利水準を巡るFRBと市場の間のギャップだったと推察される。政策金利見通し(ドットチャート)では2022年末に政策金利が4.4%まで引き上げられた後、来年23年末には4.6%まで引き上げられることが示された。今年については、残る11、12月のFOMCでそれぞれ0.75pt、0.5ptの利上げが実施される可能性が高まった。
重要なのは来年末の政策金利水準だ。FOMCの結果公表前、金利先物市場は来年3月をピークに政策金利が4.5%近くまで上昇した後は利上げが停止され、来年末時点では4.0%程度の水準を予想していた。つまり、年後半に0.5pt程度の利下げを織り込んでいた。しかし、FRBが示したターミナルレート(政策金利の最終到達点)は4.6%とピーク時点での予想を上回ったうえ、年末時点では0.6ptもの乖離があった。FRBのドットチャートは年末一時点の予想値しか示さないため、単純な比較はできないが、やはり来年からの利下げ期待を持ち続けてきた市場と、来年の利下げは時期尚早としたFRBとの乖離が大きかったといえよう。
特にパウエルFRB議長の記者会見が印象的だった。パウエル氏は会見で「今の政策金利水準は抑制的な領域においては一番低いところ」だと言及。つまり、景気を犠牲にしてでもインフレ抑制を最優先にすることを繰り返し主張しているFRBの姿勢を踏まえれば、今後もまだまだ利上げを続けるという積極的タカ派スタンスが示されたと解釈できる。
そうしたスタンスは更新された最新の経済成長見通しからも窺える。2022年の米国経済成長率は6月時点の1.7%から0.2%へと大幅に下方修正され、23年も1.7%から1.2%へと引き下げられた。潜在成長率が1.8%とされていることから、来年もインフレ沈静化のために景気を大きく抑制することが示唆されている。
米2年債利回りが4.0%台と2007年来の高水準に、米10年債利回りも3.5%と2011年来の高水準にまで上昇している。ここから更なる金利上昇が待ち控え、景気後退に陥ってもすぐには利下げに転じず、高水準の金利を維持するというかなり厳しい見通しが表明された。金利先高観と景気後退・企業業績の悪化に対する懸念、まさに株式市場にとってはダブルパンチだ。これならば、満期まで持っていればほぼノーリスクで高利回りを享受できる米国債に投資した方が無難で、あえて株式に投資する妙味が乏しいと言わざるを得ない。いま株式市場に突き付けられている現実はまさしくこういう事なのだ。
後場の東京市場は上値の重い展開が続きそうだ。国内は明日から3連休となる。今晩以降の米株式市場に一段と下げる余地が残されている中、連休中の空白リスクも相まって積極的な押し目買いは限られるだろう。日経平均は心理的な節目の27000円を維持して終えられるかが焦点となる。
(仲村幸浩)
<AK>
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