8日の米国市場でNYダウは371.65ドル高(+1.05%)と続伸。企業決算を好感した買いから寄り付き後上昇。新型コロナウイルス変異株「オミクロン型」感染の流行がピークをつけた可能性から経済活動再開への期待が一段と高まり、引けにかけて上げ幅を拡大。ハイテク・グロース(成長)株にも買いが入り、ナスダック総合指数は+1.27%、フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)は+2.40%となった。こうした流れを引き継いで日経平均は204.13円高でスタートすると、取引開始直後に27543.76円(259.24円高)まで上昇。節目の27500円近辺では戻り待ちの売りが根強く一時失速する場面もあったが、香港ハンセン指数の上昇などを支えに再度騰勢を強めると、再び27500円を回復。その後は同水準を挟んだ一進一退となった。
個別では、SOX指数高を受けてレーザーテック<6920>、ルネサス<6723>が大幅高となり、米長期金利の上昇を追い風に三菱UFJ<8306>も上昇。丸紅<8002>や三菱商事<8058>
などの商社が堅調で、郵船<9101>もしっかり。業績予想を上方修正した日産自<7201>
が大幅高となり、本日後場に決算発表予定のトヨタ自<7203>も堅調。ほか、決算が好感されたところでJFE<5411>、AGC<5201>、IHI<7013>などが大幅に上昇し、CMK<6958>、シマノ<7309>、ジェイリース<7187>などは急伸し、東証1部値上がり率上位に並んだ。一方、原油先物価格の下落を受けINPEX<1605>やENEOS<5020>が下落、NTT<9432>、KDDI<9433>、第一三共<4568>など内需系の一角も軟調。ほか、決算が失望感を誘ったところでデジハHD<3676>、BEENOS<3328>、レノバ<9519>、ポピンズHD<7358>などが値下がり率上位に並んでいる。
セクターでは精密機器、鉄鋼、輸送用機器などが上昇率上位に並んだ。一方、鉱業、石油・石炭製品、食料品などが下落率上位に並んだ。東証1部の値上がり銘柄は全体の67%、対して値下がり銘柄は26%となっている。
本日の日経平均は3桁の上昇で心理的な節目の27500円を超えてきている。上値抵抗線とみられる25日移動平均線に近づいており、上昇一服も意識されるところだが、東証株価指数(TOPIX)はすでに25日線を超えてきている。TOPIXが先んじて上値抵抗線だった同線を超えてきたことはトレンド転換に期待を持たせてくれる。また、朝方の上昇後に一時失速した日経平均だが、そのまま軟調が続けば、27500円での上値の重さが改めて印象付けられてしまい、嫌な流れになるところだったが、すぐに切り返して再び同水準を上回ってきたことは強い動きを印象として与える。
前日の米国市場では米10年国債利回りが一時1.97%と2019年11月以来の高水準にまで上昇した。注目点は、そうした中でも、ナスダックやSOXが大幅に上昇したことだ。
これは、株式市場が金融引き締めを相当程度織り込んできた証左とも考えられ、ポジティブに捉えられる。実際、米金利先物市場は年内の利上げ回数として5回以上をほぼ完全に織り込んでいるうえ、6回以上の織り込みも進んできている。他方で、米連邦準備制度理事会(FRB)では、複数の高官から、3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ幅として0.5%は考えていないなどと、ややハト派に修正するような発言が出はじめている。市場が想定している以上にタカ派的な引き締め確率が下がっているのだとすれば、株式市場の足元での買いも無謀なものではなく合理的といえる。
しかし、10日に発表予定の米1月消費者物価指数(CPI)を確認するまではまだ楽観できない。既に記録的な伸びは予想されているため、市場予想並みにとどまれば無難に通過することが見込まれるが、仮に大幅に上振れると再び楽観の揺り戻しが起きかねない。また、来週には1月FOMCの議事要旨が発表予定だ。1月5日の議事要旨(昨年12月開催分)公表を受けて相場が急落したことを踏まえれば、注目度は高く、これを見極めたいとの思惑もくすぶるだろう。足元の相場は悲観的になり過ぎで、絶好の買い場と指摘する大手金融機関もある。ただ、年始からの急落相場のなかで醸成された過度な悲観を徐々に修正することは必要だろうが、依然過度な楽観に傾くことには慎重になった方がよいだろう。
さて、後場の日経平均は27500円を上回ったまま推移できるかが焦点となる。そうした中、後場中頃には注目のトヨタの決算が予定されており、内容次第では全体の流れを左右しそうだ。トヨタの決算がポジティブなものとなり、日経平均が一段高となって27500円を優に上回った状態で本日を終えることができれば、市場のムードも好転してきそうだ。
<AK>
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