―上昇一服局面が絶好の仕込み場に、これからスポットライト浴びる銘柄に刮目せよ―
●風向きは変わってもトレンドは変わらず
2月第3週(15~19日)の株式市場は週前半と後半でガラリと風景が変わった。週初の15日と翌16日は、買い意欲旺盛で2営業日合計で950円近い上昇をみせた。日経平均は週明け早々に約30年半ぶりにフシ目の3万円大台を回復したが、その大台ラインなど眼中にないと言わんばかりに騰勢を強め、あっという間に3万700円台まで上値を伸ばした。
しかし、さすがに目先スピード警戒感も拭えず週央を境に利益確定売り圧力に押される展開となり、週末に向けて3日続落、取引時間中に再び3万円台を割り込んだ。いわば行き過ぎた振り子が戻る局面に入ったわけだが、これはあくまでスピード調整の域を出ず、大勢上昇トレンドに変化はないとみてよい。中長期上昇相場におけるここでの踊り場形成をいかに個別株戦略に生かすかは、個人投資家それぞれの裁量に委ねられている。
直近の押し目は総論として買い場であろう。海外投資家の日本株への攻勢はまだ始まったばかりだ。海外投資家は2月に入ってから日本株への投資姿勢を強めている。第1週は現物株を4200億円あまり買い越したが、第2週も3500億円近い買い越しとなっている。今週(第3週)については「いったん利食いの動きが優勢になったようにも見えるが、あくまで中休みであり、全体指数の値幅調整が一巡すれば再び買い直してくる公算は大きい」(ネット証券ストラテジスト)という見方が強い。
●上値の伸びしろが大きい半導体関連
では、実践的にどこに目を向ければよいかだが、その答えはグロース株ということになる。ここ最近は新型コロナワクチンの普及期待から景気敏感セクター、いわゆるバリュー株の底上げが相場を主導したが、空売りの買い戻しも含め目先は一巡した。一方、19日の東京市場では日経平均が一時400円近い下げをみせる場面があったが、全般地合い悪に抗して東京エレクトロン <8035> などの半導体関連株に再び資金が還流してきた。半導体関連はグロース株の象徴として再び青空圏突入を目指す展開が予想される。
ハイテク株全般は米長期金利の上昇が気にされているが、実際のところ米10年債利回りにして1.3%台というのは決して動揺するような水準ではない。昨年春先のコロナショックに遭遇した後の視点に立てば、かなり高みに進んだようにも見えるが、コロナショック前の昨年1月の時点で米10年債利回りは1.5%台、更に1ヵ月遡って19年12月の時点では1.9%台にあった。アフターコロナが意識されている以上、1.3%台程度への金利上昇は景気回復期待の断片に過ぎない。日米株式市場ともに、過剰流動性をベースとする循環物色のなかでグロースからバリューへの資金シフトが起きてもそれは一時的なリターンリバーサルだ。今回のハイテク株の軟化について米長期金利の上昇は売りの口実に使われただけである。
半導体関連株全般はまだ上値の伸びしろが大きいと思われる。昨年来のコロナ禍にあっても半導体へのニーズはむしろ増幅し、直近では供給不足が生じて自動車生産に世界的な影響を及ぼしたという事実が、株式市場にも強烈なインパクトを与えた。米国では大統領令でサプライチェーンの見直しを進める構えであり、既に台湾の半導体受託生産トップTSMCなど主要メーカーに増産を要請していることも明らかとなった。
WSTS(世界半導体市場統計)は2021年の半導体市場規模は前年比8%増の4694億ドル(約50兆円)という試算を公表しており、これは過去最大である。高速通信規格5G関連が半導体需要を牽引するほか、リモート化に伴うデータ通信需要の増大がデータセンター増設や情報端末需要を喚起している。そして来年以降も自動車産業のエレクトロニクス化(自動運転技術の進展やEVシフトの動き)が半導体市場の更なる成長エンジンとなっていく。
そうしたなか、東エレク、アドバンテスト <6857> 、レーザーテック <6920> 、あるいはルネサスエレクトロニクス <6723> 、SUMCO <3436> といった一連の半導体関連の主力株が改めて再評価の時を迎える可能性は高い。一方で、中小型株にもスポットライトが当たり、ここまであまり脚光を浴びていない銘柄群の見直しも本格的に進みそうだ。
●AI関連も出番待ちの銘柄がひしめく
そして、グロース株の観点からもう一つ相場に発展しそうなセクターが人工知能(AI)関連だ。AI技術はあらゆる産業分野に浸透し、時に融合してイノベーションの源泉となる。ディープラーニングの登場によって、人間によるインプット作業を必要としない革命的な進化の翼を得た。もはや先端科学分野において不可欠の存在となっているが、ある意味でAIの進化は半導体需要の拡大、高集積化の流れとも連動した部分がある。
米国ではGAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)などのITの巨人たちがAI分野に巨額の資金を投下して研究開発を進めている。しかし、近年では先頭を走る米国に中国が肉薄している。数千社にのぼるAI関連企業を国内に擁し、ディープラーニングの特許申請数は米国の7倍以上に達しているというデータもある。米中摩擦の底流ではAI覇権を巡る激しい争いが繰り広げられているが、それだけ同分野で優位性を維持することは政治的・経済的にも重要な意味を持つ。
米画像処理半導体大手のエヌビディアはAI関連の雄に位置づけられているが、それは同社がGPUを応用して大量のデータ処理を担うAI半導体を手掛けていることが大きい。同社がソフトバンクグループ <9984> から英アームを買収したことが世界の耳目を驚かせたが、これはアームの半導体設計に特化した能力を採り入れAI半導体開発で不動の地位を確立するためである。AI半導体チップは今後急速にその市場を拡張し、ここ数年内に500億ドル規模を超えるとみられている。
日本も米中覇権争いのレベルにはまだ遠いものの、菅政権が掲げるデジタル改革の流れと相まって、デジタルトランスフォーメーション(DX)におけるAIを活用したソリューションは重要な役割を担っていく。くしくも新型コロナウイルスによってもたらされた就業形態及びライフスタイルの変化は、労働集約型の産業構造そのものを大きく揺るがし、DX化を加速させる背景ともなった。AI分野を深耕する企業は、DX推進の担い手として株式市場でも改めて物色の矛先が向かうことが必至だ。
今回のトップ特集では、AI関連としてここから活躍が期待される4銘柄と半導体関連で今後見直し機運に乗るであろう4銘柄を厳選、計8銘柄をエントリーした。
【その1】AI関連の覇道株候補4銘柄
◎ニューラルポケット <4056> [東証M]
昨年8月にマザーズ市場に新規上場したニューフェースだが、独自AIアルゴリズムを活用した画像・動画解析技術を手掛けるほか、エッジコンピューティング分野にも精通し、その成長余地の大きさがマーケットでも強く意識されている。損益は赤字脱却した矢先だが、トップラインの伸びが鮮烈だ。20年12月期は売上高が前の期比2.5倍の7億6200万円で、営業損益は1億7000万円と黒字転換。続く21年12月期は売上高が前期比65%増の12億5600万円、営業利益は同2.2倍の3億8000万円を見込む。株価は抜群の人気度で、上場直後の20年8月に1万850円の高値をつけ、いきなりテンバガーデビュー(公開価格比)した経緯がある。
◎ユーザーローカル <3984>
ビッグデータ解析やAIを活用した業務支援ツールや情報提供サービスを展開し、国内企業1000社以上の顧客基盤を有する実力派。自社AIアルゴリズムの拡充、AIアルゴリズム実装、AIサービスの新規開発などに重点を置きニーズに応える。オンライン会議の自動議事録作成やオンライン授業中の学習態度分析AIなどカバーする領域は多岐にわたる。13年6月期以降、売上高・利益ともに高成長路線をまい進中で、21年6月期は15%増収、12%営業増益を見込む。株価は目先押し目形成も早晩切り返し、昨年10月の昨年来高値5520円を通過点に、上場直後の17年4月につけた最高値7045円も視野に。
◎アドバンスト・メディア <3773> [東証M]
音声認識エンジンAmiVoice(アミボイス)を中核技術とした業務用ソフトを開発。2月に入ってから富士通<6702.T>と販売パートナー契約を締結、更に通信システム・ソリューションを手掛けるネクストジェン <3842> [JQG]ともパートナー契約を締結するなど矢継ぎ早に提携戦略を打ち出している。医療業界向け音声入力システムの需要も開拓、医療ICTの一端を担う。消費者の巣ごもり化で需要が高まっているコールセンターでは電話によるなりすましなどが問題視されるなか、その対策ニーズで同社の声紋認証分野での実績も重視。22年3月期は売上高50億円台乗せから営業利益2ケタ成長路線に復帰へ。株価は4ケタ大台をにらむ。
◎HEROZ <4382>
BtoCサービスの将棋AI開発を起点に蓄積したディープラーニングを強みに法人向けAI構築など多面的に展開。18年4月にマザーズ市場に鳴り物入りで新規上場した際、公開価格4500円に対し約11倍となる4万9000円で初値を形成するという爆発的人気を博した。21年4月期は売上高2ケタ伸長見通しながら、先行投資で営業利益は前期比5割減見通し。同社が開発した販売予測AIを膨大な生活用品を扱うアイリスオーヤマに提供し、アイリスオーヤマのDX化推進を支援、更なる顧客企業の開拓が期待されている。また、株式ポートフォリオ診断サービス分野などにも踏み込む。株価は2月に入り上値指向が強い。
【その2】半導体関連の覇道株候補4銘柄
◎エノモト <6928>
半導体用リードフレームなど半導体用部品のほかコネクター用部品を手掛ける。世界的なテレワーク導入の動きを背景にパソコンなどの情報端末の売れ行きが加速しており、半導体リードフレーム需要にもフォローの風が強まっている。また、スマートフォン向けコネクター用部品は5G対応製品の量産による恩恵を享受することが予想される。業績は20年3月期の20%営業増益に続き、21年3月期も2ケタ成長を見込む。加えて年間配当は従来計画比10円増額の40円に。株価は2月9日に1898円の高値をつけた後調整を入れているが、時価予想PER10倍前後、有配銘柄にしてPBR0.7倍は見直し余地が大きい。
◎イソライト工業 <5358>
耐火断熱材を製造し、セラミックファイバーではトップメーカーとして君臨する。セラミックファイバーは半導体用工業炉向けで高水準の需要があり、ここ最近の半導体需給の逼迫で商機が高まっている。業績面で21年3月期は向かい風が強いものの、合理化努力などが寄与して営業利益は従来計画から2億円上方修正し19億円(前期比33%減)となる見込み。3%超の配当利回りにしてPERは9倍に過ぎず、22年3月期業績V字回復への期待を背景に指標面の割安さが強く意識される可能性がある。株価は長期波動でも今年に入って底値離脱の動きをみせており、当面は19年11月の戻り高値734円奪回が目標に。
◎TOWA <6315>
モールディング(封止)装置やシンギュレーション(切断・加工)装置などを主力とする半導体製造装置メーカーで、トランスファ金型やコンプレッション金型など超精密金型でも実績が高い。世界的に半導体不足が顕著となるなかTSMCなど台湾の受託生産大手への増産要請が伝えられ、同社はそうしたメーカーの設備投資需要を捉える。足もとの業績は絶好調といってよく、21年3月期業績予想は増額修正を繰り返し、営業利益見通しは前期比4倍強の33億円を予想。22年3月期も2ケタ伸長が有力視。株価は2000年7月に5070円の上場来高値と天井も高い。目先利食い急ぎの動きが出たが拾い場を提供。
◎大阪有機化学工業 <4187>
エステル化成品で実績の高い独立系化学メーカーで電子材料分野に傾注しており、液晶や有機EL向け材料で実力を発揮するほか、5G関連投資に絡む半導体レジスト向けで商機を捉えている。特にここ急速に市場が拡大傾向にあるEUV(極端紫外線)関連で需要獲得が期待され、ArF(アルゴン・フッ素)原料に高水準の引き合いがある。コロナ禍にあって20年11月期営業利益は前の期比21%増の伸びを確保、21年11月期は前期比2.4%増益を会社側は見込むが保守的で上振れる期待が大きい。株価は押し目買い好機。4000円大台復帰から、1月14日につけた上場来高値4275円奪回を目指す。
株探ニュース
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