3日の米株式市場のダウ平均は127.93ドル安(-0.38%)と続落。1月雇用統計やISM非製造業景況指数の予想を大幅に上回る強い結果を受けて、利上げ長期化懸念が再燃し、売りが先行。一方、景気後退懸念の緩和に伴う買いも見られ、一時上昇に転じる場面もあった。しかし、一部ハイテク企業の冴えない決算や金利高を警戒したハイテクの売りが重しとなり再び下落した。ナスダック総合指数は大幅反落、終盤にかけて下げ幅を拡大して終了した米株市場を横目に、日経平均は前週末比255.20円高の27764.66円と4営業日続伸でスタート。その後は、高値圏でのもみ合い展開が続いている。
個別では、郵船<9101>や川崎汽船<9107>、商船三井<9104>などの海運株、三井物産<
8031>や三菱商事<8058>などの商社株、ファーストリテ<9983>や信越化<4063>、などが大幅に上昇。トヨタ自<7203>やデンソー<6902>、メルカリ<4385>、日立<6501>、ソフトバンクグループ<9984>なども上昇した。NTT<9432>やKDDI<9433>などの通信株、JAL<
9201>やANA<9202>などの空運株も堅調。そのほか、業績予想の上方修正を発表したオーバル<7727>が急騰、第3四半期決算を好感されたタムラ製作所<6768>も大幅高、IRJ−HD<6035>、平河ヒューテック<5821>などが東証プライム市場の値上がり率上位に顔を出した。
一方、東エレク<8035>やレーザーテック<6920>などの半導体関連株の一角が軟調に推移、三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>、みずほ<8411>などの金融株などが下落している。キーエンス<6861>、ソニーグループ<6758>、なども軟調に推移。また、10-12月期の営業利益が前年同期比11%減となったことが嫌気されたカチタス<8919>が大幅に下落した。そのほか、チャームケア<6062>、ウシオ電機<6925>、テクノプロHD<6028>などが東証プライム市場の値下り率上位に顔を出した。
セクターでは卸売業、不動産業、輸送用機器が上昇率上位となった一方、銀行、保険が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の68%、対して値下がり銘柄は28%となっている。
本日の日経平均は、シカゴ先物にサヤ寄せする格好から買い先行で取引を開始。朝方は上げ幅を縮小する動きを見せたが、その後は再度買いが広がっており、高値圏でのもみ合いが継続している。足元の為替市場で円安ドル高が進んでおり、安心感を誘っているようだ。
一方、新興市場では軟調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は朝方からマイナス圏で推移。売り一巡後は下げ幅をやや縮小している。労働市場の逼迫と景気後退には程遠いサービス分野での強い需要が確認されたことは国内の個人投資家心理にネガティブに働いている。また、米長期金利は一時3.52%まで急上昇しており、バリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株に重しとなっているようだ。前引け時点で東証マザーズ指数が0.35%安、東証グロース市場Core指数が0.30%安となっている。
さて、3日に発表された米1月雇用統計を簡単に振り返る。非農業部門雇用者数が前月比51万7000人と前月(+26万人)から大幅に増加し、市場予想(+19万人)を大きく上振れた。また、失業率は3.4%と市場予想(3.6%)に反し、53年ぶりの水準に低下したようだ。ただ、平均時給は前年比+4.4%と前月(+4.8%)から鈍化、前月比でも+0.3%と前月(+0.4%)から鈍化した。
また、米ISM非製造業景気指数は1月に55.2と急回復、市場予想(50.5)を大幅に上回っていた。リセッション予想とは相いれない動きで、FRBに対して利上げ継続を求める圧力が強まった格好。雇用市場の力強さも維持されたため、労働力の需要は引き続き供給を上回り、賃金の強い伸び継続とさらなるインフレ高進につながる恐れも出てきているようだ。
前週2日には、「国際通貨基金(IMF)が、世界の中央銀行は金利をより高く長期にわたり維持しなければならない可能性が高いことを金融市場に明確に示す必要があるとの見解を発表した。」とロイターが報じている。「早すぎる緩和は、経済活動が回復した後にインフレが急上昇し、各国が一段のショックによる影響を受けやすくなり、インフレ期待を抑制できないリスクをもたらす」としている。
パウエル議長はFOMC後の会見で、経済動向が予想通りであれば年内の利下げはないと改めて主張していた。また、インフレ率2%の目標を達成するために、今後も継続的な利上げが必要とし、あと複数回の利上げを行うことが適切であるとの認識を示していた。今後も雇用統計及びインフレ指標の結果には従来通り警戒して相場を見守る必要があろう。再度物価が上昇していった場合のシナリオも想定しておきたいところだ。
このような状況下で、本日6日には「政府が日本銀行の黒田東彦総裁の後任人事について雨宮正佳副総裁に就任を打診した」と日本経済新聞で報じられた。雨宮氏は、黒田総裁の政策を踏襲するとみられており、現副総裁の雨宮正佳氏が選ばれれば円安につながるとの見方が優勢だった。実際、同報道を受けて外国為替市場で円安が進行、一時は132円41銭を付けた。また、金融政策の不透明感が払しょくされたことで、本日の東京市場では自動車や商社、電機といった輸出関連企業を中心に買いが広がっている。
そのほか、民間調査による2022年12月のホテル平均客室単価は新型コロナ流行前の19年同月比で約2割高だったようだ。全国旅行支援や訪日客の急増に加えて人手不足による客室の供給減少が影響した。閑散期にあたる1月に入っても需要が落ちておらず、稼働率も2019年平均(8割強)に近い水準を維持したという。引き続き、インバウンド増加に伴って旅行関連や人流増加に伴う消費が直結する関連企業には注目しておきたい。さて、後場の日経平均は、高値圏でのもみ合い展開が続くか。米株先物の動向を横目に、東証プライム市場の銘柄中心に物色が継続するか注目しておきたい。
(山本泰三)
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