週明け17日の米株式市場でNYダウは3日ぶりに反落し、54ドル安となった。インフレ加速への警戒感が根強く、長期金利の上昇とともにハイテク株などに売りが出た。
「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は一時21台半ばまで上昇。ただ、連邦準備理事会(FRB)のクラリダ副議長が金融緩和縮小の協議は時期尚早との考えを再表明すると、引けにかけて下げ幅を縮めた。一方、日経平均は時間外取引でのNYダウ先物の動向を睨み、米株安を先取りしていたこともあって、本日は押し目買い優勢で106円高からスタート。その後も上げ幅を広げる展開となり、前引けにかけて一時28480.90円(656.07円高)まで上昇した。なお、朝方発表された1-3月期国内総生産(GDP)速報値は実質年率換算で5.1%減と市場予想を下回ったが、株式相場への影響は限られた。
個別では、三菱UFJ<8306>やブリヂス<5108>が決算を受けて買われ、リクルートHD<6098>は7%超の上昇となっている。その他売買代金上位もソフトバンクG<9984>、トヨタ自<7203>、ファーストリテ<9983>など全般堅調で、KDDI<9433>や第一生命HD<8750>の上げが目立つ。また、ティラド<7236>やノーリツ<5943>は決算が好感されて急伸し、東証1部上昇率上位に顔を出している。一方、任天堂<7974>やNEC<6701>は軟調。決算発表銘柄では日清粉G<2002>の下げが目立つ。また、UMCエレ<6615>やユニデンHD<6815>が東証1部下落率上位に顔を出している。
セクターでは、非鉄金属、保険業、鉄鋼などが上昇率上位で、その他も全般堅調。
電気・ガス業とパルプ・紙の2業種のみ下落した。東証1部の値上がり銘柄は全体の81%、対して値下がり銘柄は16%となっている。
前場の日経平均は一時600円を超える上昇となった。前日の米市場では売りが先行したものの、引けにかけて下げ渋り。時間外取引のNYダウ先物は上昇しており、アジア市場でも香港ハンセン指数などが堅調な出足のため、押し目買い意欲が高まったのだろう。売買代金上位は日経平均への寄与が大きい値がさ株、景気敏感系のバリュー
(割安)株ともに買われている。特に市況関連株の上昇が目立つ印象で、インフレ観測は根強いようだ。ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円あまり。新興市場ではマザーズ指数が2%近く上昇しているが、ゴールデンウィークの連休前後からの下げが急ピッチだったため、ひとまず反発していることは安心材料と言える。
さて、前日の日経平均は寄り付き直後に高値28312.78円を付けると失速し、後場には一時400円を超える下落となった。3月安値水準となる28300円近辺は直近の急落局面で節目意識が働き、いったん下げ渋る動きが見られたため、戻り局面でもネックになるのではという指摘があった。本日はこの28300円水準をクリアしてきたとはいえ、引き続き28500円近辺までは自律反発に期待して押し目買いを入れた投資家の利益確定売りが出やすいかもしれない。
もう一点、先週末14日の当欄で日経平均の反発は「海外勢の先物買い戻し主導」という推察を述べたが、この日の先物手口を見ると野村證券の日経平均先物の買い越しが大きかった。一方、海外勢は大きく買い越しに傾いた感がなく、17日は先物全体の売買高自体がやや低調だった。ここ数日、日経レバETF<1570>純資産総額の増加と日経ダブルイン<1357>の資産減が顕著となっており、ネット証券売買代金ランキングではこれら商品が積極的に売買されていたことが窺える。急落の起点こそ海外勢の先物売りだったものの、足元の反発は個人投資家の押し目買いや売り持ち解消が主導している可能性がある。
個人投資家は「安値で買い、高値で売る」という逆張りの傾向が強い。それに日経レバETFの純資産総額は17日時点で3636億円とかなりの高水準に膨らみ、一方の日経ダブルインは2065億円という低水準になっている。マクロ系ファンドなど相場の方向感を決定づけるタイプの海外投資家が様子見を続ける限り、個人投資家の反対売買が上値の重しとなりそうだ。
個別株も物色の方向感がつかみにくくなるかもしれない。本日は全般押し目買いムードだが、前日はというと景気敏感色の強い市況関連株、それに値がさのグロース
(成長)株がともに売られていた。中国では卸売物価が急騰しており、大連商品取引所や上海先物取引所が鉄鉱石・鉄鋼価格の上昇抑制に向けた措置をとると発表。商品市況はここまで上昇ピッチが急だったこともあり、目先調整を予想する向きが多い。
市況関連株も以前と比べ積極的に買える状況ではなくなっただろう。
一方、17日の米10年物ブレークイーブン・インフレ率(期待インフレ率の指標)は2.54%(+0.04pt)と引き続き高水準。4月小売売上高の予想下振れなどで景気回復への期待はやや後退したが、政府・FRBの政策スタンスが変わらない限り「景気刺激効果は過剰」との懸念はくすぶるだろう。労働需給ギャップなどの構造要因が解消されるめどが立ったわけでもない。独アリアンツの首席経済アドバイザーであるモハメド・エラリアン氏、著名投資家のスタン・ドラッケンミラー氏らが相次いでFRBの政策スタンスを批判したが、「債券王」として知られるジェフリー・ガンドラック氏もFRBの
「インフレは一過性」という主張に疑問を呈している。
前日の市況関連株・値がさ株売りは、市場のムード次第で「悪いとこ取り」となり得ることを示している。腰の入った買いが入りづらいのもやむを得ないだろう。
(小林大純)
<AK>
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