13日の米株式市場でダウ平均は376.66ドル高(+1.11%)と続伸。欧州委員会が23年の欧州の成長見通しを引き上げたことで、米国経済に対する景気後退懸念も緩和。
また、1月NY連銀消費者調査の結果で、家計収入の伸び率予想が前月から大幅に低下すると、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ長期化懸念も後退し、相場を一段と押し上げた。ナスダック総合指数は+1.48%と4日ぶり大幅反発。米株高を引き継いで日経平均は278.05円高からスタート。為替の円安進行という追い風もあったが、今晩の米1月消費者物価指数(CPI)の発表を前に様子見ムードが強い中、寄り付き直後からは失速。その後もじわじわと上げ幅を縮める展開が続いた。
個別では、今期大幅増益・増配見通しを発表したファインデックス<3649>、前期上振れ着地・今期大幅増益見通しとなった市光工業<7244>、大幅増収・赤字縮小が確認された河西工業<7256>、前期上振れ着地・今期大幅増益見通しのAppier Group<4180>
などが急伸。また、業績上方修正と増配を発表したロート製薬<4527>、前期大幅増配や今期大幅増益見通しが好感されたイトーキ<7972>、今期の高い成長率見通しが評価されたサイボウズ<4776>なども大幅高。サントリーBF<2587>は減益見通しも10-12月の大幅増益から保守的との見方が強く、大きく上昇。ライオン<4912>も減益見通しながらも10-12月期の2ケタ営業増益や社長後退に伴う経営体質の変化などが評価され大幅高。東京応化工業<4186>は悪化する半導体市況の中でも好調な決算が評価されて買われた。
一方、業績上方修正も主力のHRテクノロジー事業の鈍化や減益決算が嫌気されたリクルートHD<6098>、大幅な業績下方修正と減配が失望されたアルバック<6728>、ユニプレス<5949>が大きく下落。今期の大幅減益見通しが失望されたダブル・スコープ<6619>、2ケタ減益決算となったクロスマーケ<3675>は急落。業績予想を下方修正した日本製鋼所<5631>、減益決算が嫌気されたサワイグループHD<4887>なども大幅に下落した。
セクターでは金属製品、食料品、機械が上昇率上位となった一方、サービス、陸運、ゴム製品、輸送用機器の4業種が下落となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の74%、対して値下がり銘柄は22%となっている。
前日の米株式市場は大きく上昇。ニューヨーク連銀による1月消費者調査の結果によると、家計収入の伸び率予想は中央値で1.3ポイント低下して3.3%となった。月間ベースの下げ幅としては、約10年前の統計開始以降で最大という。これが米1月雇用統計以降に高まっていたインフレ懸念を緩和させ、米長期金利の上昇も一服、投資家のセンチメント回復に寄与したようだ。
一方、同調査における1年先の期待インフレ率は5%で、前月から変わらず高止まり。また、先週末に発表された米2月ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)では、1年先の期待インフレ率は4.2%へと(前月:3.9%)むしろ上昇していた。今晩に発表される米1月消費者物価指数(CPI)も、ガソリン価格や中古車価格の反発傾向を背景に、前月比+0.5%と(前月:-0.1%、修正値:+0.1%)と加速する予想。また、1月分から米労働省労働統計局(BLS)はCPI内訳項目のウェイト変更を行うため、これがコア指数を0.03ポイント程押し上げる可能性があると指摘されている。米1月CPIはコア指数で前月比+0.4%(前月:+0.3%、修正値:+0.4%)と予想されている。
今晩の米CPI後の短期的な市場反応は正直読めない。米雇用統計以降、米連邦準備制度理事会(FRB)高官からタカ派発言が相次いだことで、かなり事前の警戒感は高まっているため、余程大きく上振れない限りはネガティブな反応はさほど大きくならない可能性も期待される。しかし、米雇用統計以降に警戒感を高めているのは主に債券市場の方で、株式市場の方はあまり事前に悪材料を織り込めていない印象も否めない。
フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込むターミナルレート(政策金利の最終到達点)は米雇用統計以降、ようやくFRBのドットチャート(政策金利見通し)が示す中央値にまで引き上げられ、年内に見込んでいた利下げ期待も大分後退してきた。米10年債利回りも2日の3.39%から先週末10日には3.74%まで大きく上昇した。
一方、株式市場はあまり調整していない。日米ともに上昇は一服しているものの、米株式市場にいたっては、主要株価3指数そろって上向きの25日移動平均線に沿った上昇トレンドが継続する形となっている。S&P500種株価指数の予想株価収益率(PER)も19倍程度と、過去の推移と比較して高い水準にとどまっている。
10-12月期決算の発表が一巡したが、法人向けサービスを中心に米企業の景況感は急速に悪化している。FRBの年内の利下げ転換期待が大きく後退してきている中、今後も法人向けサービスの需要は低迷、もしくは一段の落ち込みが予想される。逼迫した労働市場などを背景に個人向けサービスは堅調でも、企業業績が10-12月期をボトムに底入れしたと判断するのは時期尚早だと思われる。
日本企業の決算も、サービス業を中心に内需系企業の業績は堅調も、製造業はハイテクや素材・化学などを中心にかなり厳しい内容のものが多かった。半導体など電子部品関連については、年後半からの市況回復を想定する経営者の声も聞かれ、今回の10-12月期決算をボトムと捉える投資家も多い様子だ。しかし、FRBの利上げ停止と利下げ転換のシナリオが1月時点から大きく後ろ倒しされている中、急速に冷え込んだ最終製品市場の需要が本当にあと半年で回復に転じるかにはやや疑問符が付く。仮に水準としては今がボトムとしても、当面いまのボトム水準が長期化して、回復に転じるのはもっと先ということも考えられる。
こうした中、株価は目先、弱含み、良くても、もみ合いレンジ相場にとどまるとみておきたい。今晩の米CPIが仮に予想並みにとどまったとしても、年始からの株価ラリーが再開するとまでは過度に期待しない方がよいだろう。
(仲村幸浩)
<AK>
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