1. 2021年11月期の業績予想
2021年11月期業績予想については、コロナ禍が及ぼす影響額について、今後の取り組みを見込んだ正確な予測が困難であるとし、未定としている。しかしながらネクスグループ<6634>では、コロナ禍が通期にわたり影響を及ぼした場合でも、黒字回復を目標としているもようだ。
確かに、コロナ禍の今後の状況については予測不能であり、同社の各事業に与える影響も正確な予測は困難である。しかし、いずれにしても今後は「withコロナ」の新生活様式に対応したビジネスモデルに早期転換させていく必要があるものと思われる。そういった意味で、同社の各事業がシナジーを発揮して、特にIoT関連事業のノウハウを核とした新製品・新サービスを早期に確立していくことが重要と弊社では考える。
以下に、直近でリリースされた同社の新製品・新サービス及びそれらにかる事業提携、実証実験などのトピックスを紹介する。
2. トピックス
(1) IoT関連事業
a) IoTデバイスを取り扱うネクスでは、現在販売中のLTE/3G USBデータ通信端末「UX302NC-R」※1にGoogle Chrome OSを搭載したコンピューター「Chromebook」対応機能を追加したバージョンを2020年12 月より提供開始した。文部科学省が教育改革案として推奨している学校のICT化「GIGAスクール構想」の「1人1台の学習者用PCと高速ネットワーク環境などを整備する5年間の計画」では、Microsoft Windows に加えてGoogleのChromebookとiPadが学習用端末の標準仕様として提示された。文部科学省の仕様に対応したChrome OSを搭載した学習用パソコンのChromebookは、シンプルな使い勝手や起動の早さに加えて、学習端末の補助割合の上限である4.5万円※2におさまる価格帯であるといった特徴から、今後学校・自治体での導入が進むと想定されている。従って同社でも、「UX302NC-R」に、これまでのMicrosoft Windowsに加えて、Chrome OSの対応を行うことで、GIGAスクール構想の学習用端末に幅広く展開していく。また、コロナ禍対策として、在宅勤務などのテレワーク導入企業が増加しており、今後も新しい働き方として定着することが予想されることから、テレワークによる社外からの社内ネットワーク接続に対して、セキュリティ確保は緊急を要する課題となっていることからも、今後の同社製品の販売拡大が期待される。
※1 ドコモのLTE/3Gネットワークに接続可能なUSB通信端末で、PC/タブレット用途にてバッテリレスで利用シーンを選ばずに利用できる。2020年6月より全国のドコモショップ及びドコモオンラインショップで販売中。
※2 公立及び国立は定額で上限4.5万円の補助、私立は補助割合1/2で上限4.5万円の補助。
b) NCXX FARMでは、自社試験圃場での栽培実績をもとに、自社独自の特許農法(多段式ポット)とICTシステムの提供に加えて、農業法人等の顧客の要望に沿った多種多様な農法・システム・農業関連製品の提供を行う農業総合コンサルティングサービスを開始している。今回は、新たな農法として、「水耕栽培装置DIY組み立てベースキット アマテラス」※を含む7社の製品の取り扱いを開始した。「6次産業化事業」とあわせ、「フランチャイズ事業」を推進することで、今後の農業経営の効率化に期待できる取り組みであると言えよう。
※自分で組み立てる水耕栽培キット。採寸・切断・溶接など、全て加工された部材を一式現場に送付し、自分で組み立てる。出来上がった装置は、プロが施工使用するものと同じ仕様で汎用性が高い。本格的な家庭菜園や趣味、自給自足用の水耕装置としても利用可能。
(2) インターネット旅行事業
同社は2020年4月、ウェブトラベルが同社の業務提携先であるクシムと業務提携を行うことについて発表した。
今回の業務提携の目的は、クシムと協働し、トラベルコンシェルジュ養成プログラムを開発することである。このプログラムによって、例えば、旅行代理店、ホテル、航空会社等の勤務を経験した優秀な人材に対して、結婚や家庭環境など様々なライフスタイルの変化によって退職したとしても、集合研修への参加といった制約を受けることなく、自宅に居ながらそのスキルが発揮される場、すなわちトラベルコンシェルジュとして活躍する機会を提供することが可能となる。
コロナ禍の影響で旅行客が大幅減少し、トラベルコンシェルジュも仕事が減っているが、その間にかかる学習機会を提供することで、ビジネススキルやITスキルを向上させ、働き方の選択肢を増やすことが可能となる。
(3) ブランドリテールプラットフォーム事業
ネクスは、チチカカと、2020年3月13日からチチカカ東京ドームシティ ラクーア店にて、ネクスが開発を進めている「NCXX AI BOX」の実証実験を開始した。
この取り組みでは、チチカカ店舗に「NCXX AI BOX」を設置し、店舗及び店舗前を通過する人の行動データを分析することで、入店者が店頭のどこを見て入店をしたのか、どこを見て入店をしなかったのか、また、どのディスプレイを見て商品を買ったのかなどを分析し、店舗のレイアウトやディスプレイ、商品配置、店員の動きなどに活用していくVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)を実施していく予定である。
コロナ禍の影響でショッピングセンターなどの来店客が減少している中で、ブランドリテールプラットフォーム事業としては、オンライン事業への注力と合わせ、店舗事業での販売向上策を模索する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 山田秀樹)
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