7日の米株式市場でダウ平均は407.51ドル高(+1.16%)と4日ぶり反発、ナスダック総合指数は+0.61%と5日ぶり反発。ニューヨーク連銀総裁がインフレ動向次第では来年の利下げが正当化される可能性に言及し、投資家心理が改善した。米国株の反発や為替の円安を追い風に日経平均は176.05円高からスタート。序盤は買いが先行し、午前10時過ぎには一時32539.88円(285.32円高)まで上昇した。しかし、心理的な節目の回復が目先の達成感につながり、その後は失速。時間外取引の米株価指数先物の軟化や香港ハンセン指数の下落が重しとなり、一時下落に転じる場面もあったが、前引けかけては下げ渋った。
個別では、川崎汽船<9107>、郵船<9101>、商船三井<9104>の海運、コマツ<6301>、クボタ<6326>の建機など景気敏感株の上昇が目立つ。三菱重<7011>は国内証券のレーティング格上げが好感されて大幅に上昇、本日決算を控える川崎重<7012>も大幅高。レーザーテック<6920>は4-6月期受注の上振れが好感されて買い優勢。決算関連では、業績予想を上方修正したティラド<7236>、イトーキ<7972>、フジテック<6406>、第1四半期が好スタートとなったSANKYO<6417>、コムシスHD<1721>、丸一鋼管<
5463>、昭和産業<2004>が急伸。
一方、アドバンテスト<6857>、ソシオネクスト<6526>、ルネサス<6723>、ディスコ<6146>の半導体株が軒並み下落。イビデン<4062>、新光電工<6967>、芝浦<6590>
など半導体関連の一角も大幅安。上半期が下振れ着地となったスペース<9622>のほか、業績上方修正がなかったことが失望されたLIFULL<2120>、好決算ながらも出尽くし感が先行したUアローズ<7606>、第1四半期の低進捗が嫌気された日本製紙<3863>、カチタス<8919>、ARM<8769>などが急落した。
セクターでは電気・ガス、海運、食料品が上昇率上位に並んだ一方、保険、精密機器、石油・石炭が下落率上位に並んだ。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の56%、対して値下がり銘柄は41%となっている。
本日の日経平均は寄り付きから買いが先行し、午前10時過ぎには一時32500円を超えた。週明け7日の米ダウ平均が1%超の上昇率で4日ぶりに反発し、下落が続いていた米ナスダック総合指数も5日ぶりに反発したことで、久々の米株高が投資家心理を改善させたようだ。しかし、心理的な節目を回復したところで戻り一服感が台頭し、その後は高値から300円ほども上げ幅を縮め、下落に転じる場面もあった。
前日の東京市場が朝安後に急速に切り返したのは、先週、株式市場の下落につながった日米長期金利の上昇が一服したことが大きい。先週末4日に発表された米7月雇用統計は非農業部門雇用者数が市場予想を小幅に下回ったとはいえ、平均時給の伸びは前年同月比および前月比でともに市場予想を上回った。しかし、それまでの金利上昇ペースが速かったことに伴う目先の材料出尽くし感に加え、雇用者数や週平均労働時間の減少に着目した景気減速の兆候から、米10年債利回りは3日の4.18%
から4日には4.04%へと大きく低下した。週明けの日本の10年物国債利回りもこうした流れを引き継ぎ、先週末は0.65%を超えていたが、週明け7日は0.62%まで低下した。
しかし、7日の米10年債利回りは4.09%と先週末4日の4.04%から再び上昇している。日本の10年物国債利回りも本日8日は0.635%と早くも反発している。先週、米長期金利を上昇させた主な要因は米財務省による中長期債の発行規模引き上げと考えられる。今週は米国債の四半期入札が行われる。8日に3年債、9日に10年債、10日には30年債が予定されている。
また、今週は10日に米7月消費者物価指数(CPI)、11日には米7月卸売物価指数
(PPI)、米8月ミシガン大学消費者信頼感調査の期待インフレ率が発表される。米CPIは前年同月比+3.3%と6月(+3.0%)から加速する見込みで、13カ月ぶりに伸びが前の月から拡大する予想だ。サウジアラビアの減産期間の延長や米経済のソフトランディング(軟着陸)期待を背景に、原油市況が需給の両面から上昇基調にあるなか、米7月PPIは総合および食品・エネルギーを除いたコア指数ともに前月比+0.2%と前回6月分(+0.1%)から加速する見込み。米ガソリン価格も上昇基調にあるため、期待インフレ率の上昇も予想される。
前日、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が、インフレが減速すれば来年には利下げが正当化される可能性があるなどと指摘したことが足元の株式市場の支援材料になっているようだ。しかし、上述したように、米金利の先高観が残るなか、米四半期入札の結果や米CPI・PPIの結果は注視する必要がある。
一方、日本では本日午前に発表された毎月勤労統計調査(速報)によると、実質賃金は前年同月比-1.6%と、前月(-0.9%)から減少率が拡大し、市場予想(-0.9%)よりも大幅な減少率となった。また、現金給与総額は同+2.3%と18カ月連続で増加したものの、伸び率は市場予想(+3.0%)を下回った。これが日銀の金融緩和を長期化させる思惑を強めることになれば、国内長期金利の上昇圧力が和らぎ、日本独自の株安要因も弱まりそうだ。
ただ、ドル円は現在(本稿執筆時点、8日11時前後)1ドル=143円30銭台と先週末4日から2円近く円安・ドル高が進んでいる。植田日銀総裁は7月の金融政策決定会合におけるイールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)の柔軟化にあたって、為替市場の変動率などにも配慮していることを示していた。足元のドル円の変動率は大きい上に、また、輸入インフレ再燃につながり得る円安は、物価目標の上振れを警戒する日銀としては許容しがたい。日銀の追加政策修正への思惑はくすぶり、国内長期金利の上昇圧力も簡単には和らがないだろう。
日米長期金利の上昇圧力がくすぶるなか、ハイテク・グロース(成長)株の上値は重い展開が予想される。一方、市況関連などのバリュー(割安)株が相対的に優位な展開が当面続きそうだ。
(仲村幸浩)
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