2. 事業領域
空調機は家庭用と業務用に分けられ、建物の規模や運用によって最適な機器が選択される。家庭用はいわゆるルームエアコンであり、TVCMでよく見かける民生用電機メーカー大手の製品が多い。業務用は、さらに個別空調とセントラル空調に分けられる。個別空調は、空調を必要とする部屋・エリアごとに室外機と室内機を設置する方式で、熱媒体に代替フロンなどを使用するが、設計・施工が容易で機械室を小さくすることができる。主に延床面積20,000平方メートル以下の中小規模の建物で採用され、空調機のシステムはパッケージエアコン、ビル用マルチエアコンなど汎用品で構成される。セントラル空調は、建物を一体として捉え、熱源機器を集中設置することでまとめて熱を作り(一次側空調システム)、冷温水(水)を熱媒体として各フロアへ送り、その熱にAHUやFCUがファンで発生させた風を当てて室内の温度・湿度を調整し(二次側空調システム)、空調全体の管理・コントロールを集中して行う(計装システム)仕組みになっており、延床面積20,000平方メートル以上の大規模な建物で使用される。こうした大規模な建物では、フロアごと場所ごとに求められる要件が異なるため、最適なシステムを構築するには個々の仕様・要望に応えることができるカスタマイズされた設計・製造技術が不可欠である。
同社は、セントラル空調の中でも二次側空調システムを主要な事業領域としている。セントラル空調の主なメリットは、個別空調で使われる代替フロンにはできない精密な温度・湿度制御が可能なこと、上質な空気質を生成できること、設置や設計の自由度が高いこと、機械室に集中して空調機を設置できることによる効率性と高いメンテナンス性などが挙げられる。加えて、熱を搬送する媒体に、温室効果が非常に高い代替フロンではなく自然冷媒である水を使用しているため、地球温暖化を防止する「環境にやさしい」システムであることもメリットと言える。代替フロンはオゾン層を破壊しないものの、CO2の100倍から10,000倍以上の大きな温室効果があり、気候変動対応の観点から世界中でノンフロンや温室効果がより低い物質への切り替えが課題となっている。
こういった強みを背景に、同社は中期経営計画のなかで自社の付加価値を、(1)高い環境価値、(2)(空調を通じた)建物価値の向上、(3)信頼性の高い稼働、(4)充実したサービス、の4つと定義しており、これらの益々の向上に力を注いでいる。
なお同社は、中小規模の建物で採用される個別空調領域にも積極的に事業を拡張している。個別空調では、セントラル空調に比べて簡易なシステムや汎用品が使用されるが、外調機については個々に細かな仕様を要求されることが多くなってきたため、セントラル空調の分野で蓄積してきた同社のノウハウを生かす素地があるからである。また、熱源機器を集中しても効率化されない規模の建物では、今後も個別空調方式が採用される見通しであることも理由である。同社はそこで、ダイキン工業<6367>と業務資本提携してヒートポンプAHUの製造販売に参入し、現在では個別空調市場を取り込むための戦略商品として積極的に展開している。ただし、地球環境に負荷がかかる傾向にある個別空調の領域においても、同社は、地球温暖化係数の低い熱媒体への転換や代替フロン使用量の削減につながる、地球環境にやさしいシステムの設計を進めている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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