―万人が弱気で空が悲観一色に染まる時、次なるステージの黎明が訪れる―
28日の東京株式市場では日経平均が805円安と暴落、一時は1000円を超える下げで2万1000円台を一気に割り込む場面があった。きょうで5営業日続落となり、この間に日経平均は2500円を超える急落に見舞われたことになる。
上り坂と下り坂に加えて「まさか」があるとは政治の世界でよくいわれる言葉だが、株式市場でも思いもよらぬ急勾配を転げ落ちるような「まさか」の下げに遭遇することがある。 新型コロナウイルスの感染拡大は、海外投資家にとって当初はそれほど警戒されていなかったが、2月中旬を境にムードが大きく変わった。新型コロナがアジアだけにとどまらず欧米も含め世界的に広がっているという事実が判明するにつれ、企業活動への影響や消費冷え込みに対する懸念がグローバルに顕在化した。これがヘッジファンドのような短期筋にとどまらず中長期のファンド系資金の買いポジションを低める動きにつながり、それはやがて奔流となって投げ売りに発展していくことになる。
●米国株市場の誤算と世界同時株安
強靱な経済を背景に揺るぎない株価上昇トレンドを構築していた米国株市場だったが、2月12日に最高値2万9551ドルに買われた後、その一歩先に断崖が待っていたとは誰も知る由もなかった。そしてそれは世界同時株安の入り口でもあった。
ひとたび境界線を突き破ると「不合理は加速する」というのが相場に潜在するDNAだ。日経平均株価は、27日にフシとみられていた2万2000円ラインを下回ったところから合理に背を向け、堰(せき)を切ったように売りが噴出した。週末28日は大引け間際にショートカバーが入り2万1000円台に戻して引けたが、2万円トビ台まで水準を切り下げたのは2019年9月5日以来、約5ヵ月半ぶりのこと。更に個人投資家の主戦場である新興市場では、追い証回避の売りが集中し一段と厳しい状況に置かれた。東証マザーズ指数は一時700を割り込んだが、これは16年2月以来実に4年ぶりのこととなる。
●行き過ぎた振り子が戻る瞬間を捉える
しかし、行き過ぎた振り子は必ず戻る。「きょうの投げ売りで株式需給面ではかなり改善が進んだことは間違いない」(国内ネット証券マーケットアナリスト)。新型コロナウイルスの蔓延がどのくらい企業業績に影響を与えるか、その数値的なデメリットは現時点では推し測れず、長い目でみて日経平均2万1000円割れやマザーズ指数700割れが天与の買い場であるとは言えないが、ここは目先バーゲンハンティングのタイミングが訪れている可能性が高い。ちなみに東証1部の売買代金は、MSCI組み入れ比率変更に伴う上乗せがあったとはいえ4兆円を上回り、問答無用の投げ売りを誘発した跡がうかがえる。相場は売りが出切れば反転するのが常だ。
今回の特集では好実態かつテーマ性を内包した銘柄で、リバウンド期待に富む逆張り候補20銘柄を選出した。ただし、追証の投げが一巡したとしても当面は戻り売り圧力が拭い切れないのも事実。基本的に短期スタンスを念頭に置いて機動的に対応したい。
●リバウンドに期待膨らむ20銘柄リスト
◆シンクレイヤ <1724> [JQ]…CATV事業者向けネットワーク構築を主力業務とし、4K・8K放送対応で光ファイバー投資需要を取り込んでいる。1000円大台を大きく割り込みPERに割安感強い。新型コロナの影響一巡で中国生産拠点も回復に向かう。
◆高田工業所 <1966> [東証2]…総合プラントの中堅で、鉄鋼や化学のほかエレクトロニクス分野にも強い。セラミック基板、ガラス基板など難切材の高速切断を可能とする超音波カッティング装置や化合物半導体向けのウエット処理装置などに引き合い旺盛。通信分野でも5Gへの展開も戦略的に推進。
◆YE DIGITAL <2354> [東証2]…FAシステム構築やメカトロ機器向けソフト及び組み込みソフト開発などIoTソリューション事業を展開、安川電グループにおけるIT技術開発の中核企業として注目。20年2月期営業利益5億5000万円(前期比20%増)は増額含み。
◆インフォマート <2492> …食材のeコマース事業を手掛ける。外食向け受発注自動化サービスは、東京五輪開催後のインバウンド需要増勢を見込み、ホテル向けなどで中期的に追い風強い。メーカー向けでも需要開拓中。
◆テックファームホールディングス <3625> [JQG]…モバイル端末向けなど主力にソフトの受託開発を展開。また、自動車のアフターマーケットでも実力を持つ。5Gの商用化を追い風にデジタルトランスフォーメーション(DX)関連案件で成長余地。
◆ファインデックス <3649> …医療用汎用ファイルシステムのトップ企業。電子カルテ関連の新規案件獲得やリプレイスが好調。病院業界では大規模病院のシステム投資意欲が復活し、中小医療機関もIT化に取り組む動きが顕在化。20年12月期会社側業績見通しは保守的で大幅に上乗せされる可能性あり。
◆ブロードリーフ <3673> …自動車整備業向けを軸に部品管理ソフトを提供するが、新規顧客の獲得で足もとの業績は堅調な伸びを示している。にもかかわらず時価は2年半ぶりの安値圏にあり、株価のディスカウントが進んだことで配当利回りも3%近い水準に。
◆ウェルス・マネジメント <3772> [東証2]…不動産投資に経営の重心を置き、REIT組成に尽力する。パナソニックホームズ(大阪府府中市)と上場REIT組成に向けた基本合意書を締結している。20年3月期業績急回復に続き21年3月期も2ケタ成長トレンド継続へ。
◆プロパティデータバンク <4389> [東証M]…クラウドを活用した不動産管理ソフトを手掛け、REIT向けで高い実績を誇る。大型案件の寄与で利益2ケタ成長トレンド。19年4-12月期営業利益は前年同期比11%増と好調で進捗率を考慮して通期3億1100万円(前期比3%増)は上振れの公算も。
◆ビーイング <4734> [JQ]…建設業界向けにソフトを提供しており、主力商品の土木積算システム「ガイア10」の新版に引き合い旺盛で中期成長トレンドに変化なし。建設技能労働者の人材不足が問題視される建設業界では生産性の向上が喫緊の課題であり、同社はその一翼を担う。
◆オリコン <4800> [JQ]…顧客満足度(CS)調査事業とニュースサイト運営を主要事業とし、いずれも好調。CS調査は企業の需要高水準でニュースサイトは動画コンテンツの牽引で広告収入が伸びている。光通信 <9435> が大株主に入っており株式需給面での思惑も。
◆イボキン <5699> [JQ]…工場などの解体・産廃処理を手掛け、M&A戦略により業容を拡大、解体事業の展開力は全国区に広がっている。20年12月期は産廃処理や資源再生案件が高水準で利益押し上げる。営業利益段階で33%増益の4億400万円を計画。
◆ライドオンエクスプレスホールディングス <6082> …すしの宅配を行っており「銀のさら」は有名。新型コロナウイルスの感染拡大で外食を避けて出前のニーズが増加するとの思惑も浮上。株価は昨年12月27日の高値から800円近いディスカウントが利いており値ごろ感も。
◆ネットマーケティング <6175> …アフィリエイト広告を展開するが、エステや人材関連、金融向けなどが好調で業績を牽引している。また、恋愛マッチングサービスも手掛け、有料会員数が漸増傾向にある。新型肺炎の影響も“恋は盲目”で収益面へのデメリットは限定的。
◆Orchestra Holdings <6533> …デジタルマーケティング事業を主力にシステム開発なども行う。マーケティング分野では運用型ネット広告で優位性を発揮する。20年12月期は前期比14%増の6億円を見込むが保守的で上方修正が視野に。
◆日総工産 <6569> …製造業向け人材派遣会社で自動車や電子部品業界向けを主軸に全国展開している。構造的な技術者不足が続くなか、派遣労働者のスキルアップに重点を置く経営戦略でニーズを的確にとらえ、これが受注単価上昇にも反映されている。21年3月期は業績の急回復が有望。
◆santec <6777> [JQ]…光モニターなど通信用部品の製造販売を手掛ける。5Gの世界的な商用化を背景に国内外で5G基地局整備が進展、同社は光モニターで商品競争力が高く、この恩恵を享受している。大幅増収増益基調が続き、株価も急騰力に富み信用買い残の整理進捗で切り返しへ。
◆エヌエフ回路設計ブロック <6864> [JQ]…アナログ回路技術を強みに電子計測器を開発、電源システム分野では蓄電システムなどにも展開している。また、量子コンピューターの研究開発で使用されるとみられる微小信号測定器を手掛けることで同関連株としての側面も。
◆リーダー電子 <6867> [JQ]…電子計測器専門のファブレスメーカーで、放送機器やAV機器向けに強い。放送業界の4K関連設備の需要拡大を捉え映像信号モニターなどが好調。20年3月期は営業6割増益見通しでPERも割安。25年3月期にビデオ関連機器市場での世界シェア60%超目指す。
◆アジア航測 <9233> [東証2]…測量土木の大手で空間情報の計測のほか、GIS(地理情報システム)などの情報システムにも強みを持つ。3次元レーザー計測を武器にドローンを活用したビジネス分野に積極的に踏み込んでおり、ドローン関連の最右翼として注目度高い。
株探ニュース
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