前週末15日の米国株式相場は続落。ダウ平均は177.26ドル安の30814.26ドル、ナスダックは114.14ポイント安の12998.50ポイントで取引を終了した。銀行決算や3カ月連続で減少した12月の小売売上高に失望した売りに寄り付き後、大きく下落した。追加経済対策の議会での承認が困難になるとの懸念に加え、新型コロナウイルスによる死者数の増加も売り材料となり終日軟調に推移した。
米国株安を受けた今日の東京株式市場は売りが先行した。新型コロナ新規感染者数が高止まりし、海外で東京五輪開催中止の可能性が報じられるなど、経済低迷の長期化が懸念され、また、20日に米国で予定されているバイデン次期大統領の就任式を巡る混乱を警戒する向きもあり、株価の重しとなった。一方、金融経済政策が景気下支え要因となるとの見方などから株価の先高観は強いものの、前場は概ね売り優勢の展開だった。なお、前場の取引時間中に20年10-12月期GDPなど中国の主要経済統計が発表されたが、東京市場への影響は限定的だった。
個別では、20年11月期営業利益が増益予想から一転3.4%減となり21年11月期は3.0%営業増益予想としたジャステック<9717>、20年11月期営業利益が前期比46.0%減で21年11月期は前期比24.6%減予想と発表したマルカ<7594>、20年12月期連結営業利益が前期比93.2%減で今期予想を未定としたブロンコB<3091>、海外で東京五輪の開催中止の可能性が報じられたことを受けた電通グループ<4324>が下げた。
一方、20年12月期業績見込みを上方修正したビーイングHD<9145>、厚労省が新型コロナワクチン保管用の超低温冷凍庫を1万台確保するとの報道が手掛かり材料となったツインバード<6897>、21年3月期業績予想を上方修正した日進工具<6157>、カドカワ<9468>との業務提携を発表したLink−U<4446>、小型人工衛星の販売を始めると報じられキヤノン電子<7739>、子会社が新規上場を申請したと発表したステラケミファ<4109>、21年1月期配当予想を引き上げたイムラ封筒<3955>、20年12月の月次売上高が前年同月比21.2%増と3カ月連続で前年同月を上回ったスクロール<8005>が上げた。
セクターでは、鉱業、海運業、石油石炭製品、保険業、ガラス土石製品などが値下がり率上位。一方、電気・ガス業、精密機器、空運業が値上がりした。東証1部の値下がり銘柄は全体の54%、対して値上がり銘柄は39%となっている。
昨年末からの株高に目を奪われ、連日、世間で朝から晩まで伝えられる新型コロナの感染拡大は株式市場ではあまり話題にならなくなった。ただ、外国人投資家が日本株を評価するポイントのひとつは、欧米諸国に比べて日本での新型コロナ感染者数が少ないことだと言われてきたことを考えると、新型コロナの感染状況は無視できないだろう。株価が好調な今のうちに、新型コロナについていくつかのシナリオを考えておく。
ここにきて警戒感が高まっているのが新型コロナの変異種だ。昨年末に英国で変異種が確認され、その後、南アフリカやブラジルでも別の変異種が見つかり、日本でも感染者が確認されている。ようやく接種が始まったワクチンがこれらの変異種に効くかどうか、結論は出ていないようだ。しかし、今後、ワクチンが効かない変異種が現れる可能性もゼロではないとの解説もある。変異種に効果のあるワクチンは数週間もあれば開発可能だとする指摘もあるが、コロナ感染が爆発的に増加するには数週間もあれば十分であることは、これまでの経緯を見れば明らかだ。
考えたくもないが、変異種にワクチンが効かないということになれば、「コロナ禍第2幕」が始まるということだろう。昨年はコロナショックが市場を揺らし、2月から3月にかけて株価が急落し、この間の日経平均の下落幅は7000円を超えた。万一、「コロナ禍第2幕」となれば、昨年のコロナショック同様に市場はショック状態となり、再びの株価急落となる可能性は否定できない。ただ、「コロナ禍第2幕」が昨年と異なりそうなのは、この後だ。紙面の都合で、これに続くシナリオは次の機会に回す。
さて、後場の東京株式市場で日経平均はもみ合いとなりそうだ。相場の先高観は強い一方、25日移動平均線との乖離率が4%近くと依然大きいことなどから高値警戒感も継続し、目先、上昇一服を歓迎する向きもある。また、今晩はキング牧師誕生日の祝日で米国市場が休場となるため、後場の東京市場は様子見ムードが広がる可能性もありそうだ。
(小山 眞一)
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