―TOB・売却の動き続々、「めちゃコミック」運営企業の買収など観測報道も相次ぐ―
企業による 親子上場解消を含むグループ再編の動きが活発化している。ガバナンス意識の高まりや資本効率向上の観点から、親会社に対して上場グループ会社を完全子会社化して体制強化を図るか、あるいは持ち分を売却してその売却益を株主還元や成長投資に充てるかを求められるようになったためだ。近年のアクティビスト(物言う株主)の台頭がこの流れを後押ししており、京成電鉄 <9009> [東証P]によるオリエンタルランド <4661> [東証P]株の一部売却などが話題を呼んでいる。グループ再編の動きは中長期で要マークとなる。
●東証が情報開示要請、持ち分法適用会社にも
信越化学工業 <4063> [東証P]は先月25日、4割強の株式を保有する三益半導体工業 <8155> [東証P]を完全子会社化すると発表した。移り変わりの激しい半導体業界のなかで強固な協力体制を構築し、機動的な経営判断を行えるようにする狙いがある。同日にはソフトバンク <9434> [東証P]も子会社SBテクノロジー <4726> [東証P]の非公開化を発表。SBテクの少数株主との「利益相反」を解消し協業効果を高めたい考えだ。直近13日にはプリント基板設計用ソフトの図研 <6947> [東証P]が子会社図研エルミック <4770> [東証S]の完全子会社化を明らかにした。
売却のケースではパソナグループ <2168> [東証P]による子会社ベネフィット・ワン <2412> [東証P]の切り離しが記憶に新しい。ベネ・ワンの買い手にエムスリー <2413> [東証P]と第一生命ホールディングス <8750> [東証P]が名乗りを上げ、TOB合戦となった。最終的に第一生命HDが戦いを制し、ベネ・ワンは今月20日付で上場廃止となる予定だ。アクティビスト絡みでは直近、豊田自動織機 <6201> [東証P]とその子会社アイチコーポレーション <6345> [東証P]に対し、英投資会社アセット・バリュー・インベスターズが親子上場解消を要求していることが伝わっている。
東京証券取引所による市場改革を背景に株主重視の考えが広まるなか、海外投資家を中心に親子上場への視線は年々厳しさを増している。子会社の大株主である親会社によってそれ以外の一般株主が不利益を被る「利益相反」の懸念がある親子上場は、海外では株主代表訴訟のリスクもあり避けられる。東証は昨年12月に親子関係に加え、持ち分法適用関係にある企業すべてに対し情報開示を充実するよう求める文書を発表した。親会社と子会社を含む上場グループ会社の双方に少数株主保護やグループ経営に関する考え方を問う。同文書によると親会社を持つ上場会社は約310社、その他の関係会社を持つ上場会社は約630社あるという(昨年11月時点)。
●信越化に上場子会社アリ
完全子会社化、売却どちらのケースでも買収に伴うプレミアム(上乗せ幅)への期待から親会社―上場グループ会社とも株価が動意づく場面はよく見られる。関連銘柄からは今後も目が離せない。
エレクトロニクス分野では半導体関連で信越化―信越ポリマー <7970> [東証P]が親子関係にあるほか、東京エレクトロン <8035> [東証P]―東京エレクトロン デバイス <2760> [東証P]、アルバック <6728> [東証P]―真空技術応用メーカーの昭和真空 <6384> [東証S]が持ち分法適用関係にある。電子部品大手のアルプスアルパイン <6770> [東証P]は今月9日、傘下のアルプス物流 <9055> [東証P]をロジスティード(旧日立物流)に売却することを明らかにしている。
自動車メーカーではトヨタ自動車 <7203> [東証P]が数多くのグループ会社を保有しており、日産自動車 <7201> [東証P]は傘下に三菱自動車工業 <7211> [東証P]や日産車体 <7222> [東証S]を持つ。部品子会社に昨年TOBを実施(その後海外企業に売却)したホンダ <7267> [東証P]はユタカ技研 <7229> [東証S]やジーテクト <5970> [東証P]、武蔵精密工業 <7220> [東証P]などまだ多くの上場グループ会社を有する。
●上場グループ会社多く持つセクターに注目
製造業を広く見渡すと、まだまだ関連銘柄は見つけられる。電気設備工事を手掛ける北弘電社を今年完全子会社化した三菱電機 <6503> [東証P]も、弘電社 <1948> [東証S]をはじめとするグループ会社群を抱える。また、ソニーグループ <6758> [東証P]―SMN <6185> [東証S]、キヤノン <7751> [東証P]―キヤノンマーケティングジャパン <8060> [東証P]・キヤノン電子 <7739> [東証P]、三菱重工業 <7011> [東証P]―三菱ロジスネクスト <7105> [東証S]が親子関係にある。富士通 <6702> [東証P]―新光電気工業 <6967> [東証P]は売却により資本関係を解消する見通しにあり、同じく富士通グループのFDK <6955> [東証S]と富士通ゼネラル <6755> [東証P]も売却が検討されているようだ。
化学メーカーでは帝人 <3401> [東証P]に注目。マンガアプリ「めちゃコミック」を運営するITサービス子会社インフォコム <4348> [東証P]を巡り、ソニーGなど複数の陣営が買収を検討していると直近伝わっている。このほか、住友化学 <4005> [東証P]―住友ファーマ <4506> [東証P]・広栄化学 <4367> [東証S]・田岡化学工業 <4113> [東証S]、東レ <3402> [東証P]―蝶理 <8014> [東証P]・水道機工 <6403> [東証S]、三菱ガス化学 <4182> [東証P]―JSP <7942> [東証P]、エア・ウォーター <4088> [東証P]―川本産業 <3604> [東証S]といった親子上場企業をチェックしておこう。
上場グループ会社を多く持つ鉄鋼セクターもマークしたい。親子関係にあるものでは日本製鉄 <5401> [東証P]―日鉄ソリューションズ <2327> [東証P]・大阪製鐵 <5449> [東証S]・山陽特殊製鋼 <5481> [東証P]、JFEホールディングス <5411> [東証P]―JFEシステムズ <4832> [東証S]、神戸製鋼所 <5406> [東証P]―日本高周波鋼業 <5476> [東証S]、大同特殊鋼 <5471> [東証P]―日本精線 <5659> [東証P]があり思惑が膨らむ。
●商社系で直近TOB案件
製造業以外では商社株も多くのグループ企業を抱えるセクターの一つだ。子会社ローソン <2651> [東証P]を非公開化する方針の三菱商事 <8058> [東証P]には、日東富士製粉 <2003> [東証S]や三菱食品 <7451> [東証S]といった上場グループ会社がまだ存在している。住友商事 <8053> [東証P]―SCSK <9719> [東証P]、伊藤忠商事 <8001> [東証P]―伊藤忠エネクス <8133> [東証P]・伊藤忠食品 <2692> [東証P]・タキロンシーアイ <4215> [東証P]、豊田通商 <8015> [東証P]―エレマテック <2715> [東証P]などもある。今月10日には伊藤忠グループの飲料受託生産大手ジャパンフーズ <2599> [東証S]に対し、丸紅 <8002> [東証P]がTOBで完全子会社化することを発表した。
情報通信セクターからは日本電信電話 <9432> [東証P]、ソフトバンクグループ <9984> [東証P]、GMOインターネットグループ <9449> [東証P]が上場グループ企業を多数持つ企業として知られる。このなかソフトバンクGは前述のSBテク非公開化のほか、グループ傘下のLINEヤフー <4689> [東証P]を巡って韓国ネイバーと資本関係見直しに向けた動きが出ている。食品セクターからは日清食品ホールディングス <2897> [東証P]―湖池屋 <2226> [東証S]、ハウス食品グループ本社 <2810> [東証P]―壱番屋 <7630> [東証P]、キユーピー <2809> [東証P]―アヲハタ <2830> [東証S]、山崎製パン <2212> [東証P]―不二家 <2211> [東証P]などを押さえておきたい。
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