―大量28銘柄が次々に登場、全体相場低迷なら上値抑制も投資妙味は大きい―
3月のIPOシーズンが始まった。例年3月は、12月と並びIPO銘柄が最も多い月だが、今年は28銘柄が登場する。中小型株が多く、業態に新鮮味がある銘柄が多いIPO企業は、株価の急騰が話題となることが少なくない。ただ、足もとでは 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で2月に株式市場が急落。市場関係者からは「今後の状況次第で3月IPO銘柄の値動きに影響が出てくることは考えられる」との見方もあり、風向きの変化には注意が必要だ。
●単月では近年最高水準の上場ラッシュ、地味め企業多いとの声も
3月のIPO銘柄は、2日に東証1部への上場を果たしたカーブスホールディングス <7085> を含め28社。19年3月に比べ12社多く、単月の上場企業数としては近年では最高水準となる。このため、今月は同じ日に3社が同時上場することも多く、文字通りの上場ラッシュとなる。具体的な内訳は、東証1部への直接上場が2社、上場市場が東証1部または2部が1社、東証2部が5社、ジャスダックが3社、東証マザーズが16社、名証セントレックス1社となっている。
上場が予定されている28社の事業内容をみると、保育所や葬儀会社、人材派遣会社、フィットネスククラブ、サイバーセキュリティ関連など多彩。東証1部への上場が予定されているフォーラムエンジニアリング <7088> などを除けば、資金吸収額は10~20億円前後の小粒な企業が多いことは、株式需給の面ではプラス要因となる。もっとも、IPOで人気を集めることが多いITベンチャー系などは限られており、「3月IPOは全体的には地味な印象」(アナリスト)との声も出ている。
●2月株価急落の影響を注視、リスク回避続けば上値抑制も
また、3月IPOで注意すべきは、新型コロナウイルスの影響による波乱相場のなかでの登場となることだ。2月は東証マザーズ指数が約15%下落するなど、リスク回避姿勢が強まるなか中小型株は厳しい状況が続いた。中小型株アナリストからは「新型コロナウイルスの影響で説明会が中止となる企業も多い。市場にリスク回避姿勢が残るようなら、ストップ高銘柄が続出したこれまでのようなIPO人気は期待できないかもしれない」と慎重に見る声も出ている。
このため3月IPOは全般相場の影響を強く受ける可能性がある。とはいえ、全般相場の一段の下落がなければ、波乱相場のなかIPO銘柄に対する投資妙味は中長期スタンスで膨らみそうだ。
●カーブスHDの反発に期待、フォーラムは試金石に
3月IPOの先頭を切って登場した2日のカーブスHDの初値は670円と公開価格を11%下回った。同社はコシダカホールディングス <2157> から独立した「スピンオフ」銘柄だが、新型コロナウイルスの感染拡大は、フィットネス事業を手掛ける同社の逆風になったようだ。同社はこの日、8日から15日までの全店休業を発表している。ただ、「業態的には着実な成長が見込める」(アナリスト)との見方は多く、3日はストップ高と急反発した。
続いて4日にはKids Smile Holdings <7084> [東証M]が東証マザーズに上場する。同社は認可保育所を運営している。資金吸収額は20億円程度だが、新型コロナの騒動で保育所が関心を集めるなか、同社の株価動向が注目されている。6日には東証2部に製造請負・派遣事業を手掛けるウイルテック <7087> [東証2]と東証マザーズに葬儀施行のきずなホールディングス <7086> [東証M]が登場するが、両銘柄ともに業態はやや地味だ。
9日には東証1部にフォーラムEが上場する。同社はエンジニアリングの派遣、紹介を手掛ける。資金吸収額は130億円程度、時価総額は350億円前後の水準。国内外の投資家が参加したが、公開価格は仮条件の下限で決まった。同社の株価推移は今後のIPOをみるうえでの試金石となりそうだ。
●フォースタ、ゼネテック、アディッシュ、サイバーSなど注目
10日以降では、やはりIT系企業などに対する注目度が高い。10日にはビザスク <4490> [東証M]が東証マザーズに上場する。同社はビジネス分野に特化したナレッジシェアリングプラットフォームの運営を行っている。
13日にはフォースタートアップス <7089> [東証M]が東証マザーズに上場する。同社はスタートアップ企業を対象とした人材支援サービスを行っている。19日にジャスダックに上場するゼネテック <4492> [JQ]は組み込みソフトを手掛けており、資金吸収額は8億円前後と小さい。
26日に東証マザーズに上場するアディッシュ <7093> [東証M]はソーシャルアプリ向けサポートを展開。同じく26日には東証マザーズに上場するサイバーセキュリティクラウド <4493> [東証M]はAI技術を活用したサイバーセキュリティサービスを行っている。同社の資金吸収額は3億円前後と小さい。更に、17日にマザーズに上場する空間企画デザインを手掛けるドラフト <5070> [東証M]や30日に同じくマザーズに上場する著作権管理サービスのNexTone <7094> [東証M]は、「業態的に新鮮味がある」(アナリスト)と評価する声が出ている。
●フィットネス関連のFFJ、赤字バイオ企業のペルセウスなどに関心も
この他に市場の話題を集めている企業では、26日に東証1部または2部に上場するウイングアーク1st <4432> [東証]は、昨年3月に上場を延期しており、今回は1年を経ての再挑戦となる。また、18日にマザーズに上場するFast Fitness Japan <7092> [東証M]は24時間フィットネスの「エニタイムフィットネス」を展開し知名度も高い。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大でフィットネス事業に逆風が吹くなか、その株価動向が注目されている。24日にマザーズに新規上場するペルセウスプロテオミクス <4882> [東証M]は赤字のバイオ企業であり、バイオベンチャー銘柄への厳しい視線が続くなか、同社への市場の評価が関心を集めている。
◆3月上場予定のIPO企業◆
上場日 コード・市場 銘柄名 主幹事
3月2日 7085・東1 カーブスホールディングス 三菱
4日 7084・東マ Kids Smile Holdings いちよし
6日 7087・東2 ウイルテック SMBC日興
6日 7086・東マ きずなホールディングス 野村
9日 7088・東1 フォーラムエンジニアリング 野村
10日 4490・東マ ビザスク みずほ
11日 4491・JQ コンピューターマネージメント SMBC日興
13日 7090・東マ リグア SMBC日興
13日 7089・東マ フォースタートアップス 野村
13日 6231・東2 木村工機 みずほ
16日 7687・東マ ミクリード みずほ
17日 7688・JQ ミアヘルサ みずほ
17日 7091・東マ リビングプラットフォーム 野村
17日 5070・東マ ドラフト SMBC日興
18日 7092・東マ Fast Fitness Japan 野村
19日 9326・東マ 関通 みずほ
19日 5368・東2 日本インシュレーション 大和
19日 4492・JQ ゼネテック みずほ
24日 5690・東2 リバーホールディングス 野村
24日 4882・東マ ペルセウスプロテオミクス みずほ
25日 5071・東マ ヴィス 大和
26日 7093・東マ アディッシュ SBI
26日 4493・東マ サイバーセキュリティクラウド SBI
26日 4432・未定 ウイングアーク1st 野村
30日 7094・東マ NexTone SMBC日興
30日 4494・東2 バリオセキュア 野村
30日 1444・名セ ニッソウ 岡三
31日 7095・東マ Macbee Planet SBI
株探ニュース
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