(2) アプリケーション・サービス事業
アプリケーション・サービス事業では、特定市場や特定業界向けにシステム開発、アプリケーション・パッケージ、テスト・ソリューション、クラウドサービス等の事業を展開している。対象分野としては医療、CRM、ソフトウェア品質保証、ビジネスソリューションサービス(旧インターネットサービス)、の4領域となる。2019年3月期の売上構成比は、各分野ともに25%前後で拮抗している。
a) 医療分野
医療分野では、NOBORIが展開する医療情報クラウドサービス「NOBORI」や、「NOBORI」をプラットフォーム化し他社サービスも含めて複数のサービスを利用できるようにした「NOBORI PAL」のほか、医知悟で展開する遠隔読影のためのインフラ提供サービス「医知悟」がある。
「NOBORI」は医療施設向けに提供するクラウド型PACSである。同社は1998年にDICOM規格に対応した医用画像システムを開発しPACS市場に参入したが、医療情報の病院施設外の保存が認められるようになった機会を捉え、クラウド型PACSのサービスを2012年10月より開始した。同社のクラウドサービスは初期導入コストが不要なほか、データはクラウド上で安全に管理されるため、病院側でデータバックアップ等のメンテナンス業務を行う必要がなくなるといったメリットがある。また、患者本人の同意と医療施設間の公開設定があれば、他施設の患者の画像、レポートをシームレスに参照することができるほか、2018年4月から「医知悟」のサービスとも連携を開始しており、専用通信装置を設置しなくても施設外の画像診断を行うことが可能となっている。
既存のオンプレミス(サーバを院内に設置する方式)ユーザーからの切り替えや、競合他社システムを利用する中規模・大規模病院からのリプレイスのほか、従来は初期コストが高く導入に慎重だった小規模医療施設の新規開拓などが着実に進んでおり、2019年3月末時点で契約施設数は約950施設まで拡大している。保存している医療画像等の検査件数は1.4億件超に上り、患者数では延べ2,612万人分となる(複数の病院で画像診断を受ける患者はダブルカウントされている)。月額利用料は最低5万円からとなっているが、料金は導入後5年間に蓄積される画像データの予想量に基づく従量課金制となるため、大学病院等のヘビーユーザーではその数十倍となるケースもある。2012年のサービス開始から7年が経過したが解約はまだ発生しておらず、顧客からも高い評価を受けている。
国内のオンプレミス型のPACS市場では富士フイルムメディカル(株)やキヤノンメディカルシステムズ(株)、GEヘルスケア・ジャパン(株)など大手医療機器メーカーが強いが、クラウドサービス型では同社が約8割とトップシェアとなっている。医療分野のクラウドサービスでは個人情報保護の観点からセキュリティ対策が重要となるほか、外部保存しているファイルサイズが非常に大きい医用画像をストレスなく院内で参照することが求められため、ミッションクリティカルなシステムを構築する高い技術力が必要となる。同社はネットワーク及びセキュリティ分野において豊富な実績とこうした技術力を持ち合わせていることが強みになっていると考えられる。「NOBORI」の損益については、2017年3月期に黒字化して以降、契約施設数の増加に伴って順調に成長している。
また、「NOBORI PAL」は2016年4月より開始したサービスで、「NOBORI」のプラットフォーム上で他の医療関連サービスを提供している。自社開発した検査予約サービス「TONARI」、緊急時外部画像参照サービス「TSUNAGU」のほか、アドバンスト・メディア<3773>の医療向け音声入力サービス「AmiVoice CLx®」、フランスIntrasense SAの3D医用画像解析ワークステーション「myrian®」、東陽テクニカ<8151>の胸部X線骨組織透過/経時差分クラウドサービス「ClearRead XR-PAL」の提供を行っている。また、2019年4月には(株)A-Lineと資本業務提携を行うことを発表し、A-Lineが開発、提供するクラウド型の被ばく線量管理ソリューション「MINCADI」※を新たなメニューとして追加している。今後も医療関連のクラウドサービスを同プラットフォーム上で提供していくことで、プラットフォームの付加価値向上に取り組んでいく方針となっている。
※医療被ばく線量の管理は2018年度の診療報酬改定の際に、一部の施設を対象とした設置基準として保険収載されたほか、2020年4月よりX線CT診断装置、循環器用X線透視診断装置、PET/CT装置、SPECT/CT装置及び診療用放射性同位元素を対象に、線量の記録及び最適化を目指した管理が義務化されることが決まっており、「MINCADI」はこれらに対応していることから、医療施設での利用増加が期待される。
「医知悟」は遠隔画像診断(読影)を行う放射線科医等の専門医と、画像診断を必要とする医療施設等とをつなぐ情報インフラを提供するサービスとなる。「iCOMBOX」と呼ばれる専用通信装置を送り手側、受け手側の双方に設置し、「iCOMSERVER(センターサーバ)」を介して送受信するプラットフォームである。2019年3月末現在で650拠点以上の施設に導入され、利用専門医数は1,400名以上(実質的に稼働している放射線科医の約3分の1が利用)、月間の依頼検査数は約20万件と市場シェアの約34%を占めている。主な導入施設は、医療施設のほか大手健康診断事業者、衛生検査所、各種病院等となる。
b) CRM分野
CRM分野では自社開発製品である「Fastシリーズ」を中心に、企業の顧客サービス向上を支援するコンタクトセンターCRMシステムをオンプレミス及びクラウドサービスで提供している。電話、メール、SNS等による「顧客との接触履歴」と「顧客の声」を一元管理し、コンタクトセンター運営を効率化するCRMシステム「FastHelp」のほか、インターネットによる自己解決型の顧客サービス・システム「FastAnswer」(FAQシステム)等を提供している。CRMシステム市場では、国内トップクラスの導入実績となっている。また、クラウド型ではセールスフォース・ドットコム
主要パートナーは、(株)ベルシステム24(ベルシステム24ホールディングス<6183>子会社)のほか、NTTデータ<9613>や伊藤忠テクノソリューションズ<4739>など大手システム・インテグレーターとなり、各企業のコンタクト(テレマーケティング)センターや顧客サポートセンターで導入されている。また、医薬品業界で「FastHelp」の導入実績が高いことも特徴となっている。製薬企業では、日本製薬工業会(製薬協)において提唱されている「くすり相談窓口」を一般的に設置しているが、国内の5割以上の製薬企業で同社のCRMシステムが導入されている。
c) ソフトウェア品質保証分野
ソフトウェア品質保証分野では、ソフトウェアの品質向上や開発工程の生産性向上を目標に、開発過程での全ライフサイクルを支援するベスト・オブ・ブリード※の開発支援ツール(テストツールなど)及びコンサルティングサービスを提供している。取扱製品の中では、ソフトウェアテストツールであるParasoft製品が組込み系ソフトウェアの開発分野で高い市場シェアを持っている。
※同一メーカーのシリーズ製品を使うのではなく、メーカーが異なっても最良と思われる製品を選択し、その組み合わせで利用すること。
対象となるのは、デジタル家電や情報通信機器、自動車、医療機器、ロボットなどソフトウェアが組み込まれる機器のほか、金融システムのようなミッション・クリティカルなソフトウェア等も含まれる。市場別の売上高については、自動運転技術やEV(電気自動車)関連技術の開発需要が旺盛な自動車業界向けが最も大きくなっている。
d) ビジネスソリューション分野(旧インターネットサービス分野)
ビジネスソリューション分野では、Web、オープンソース、最新のビジネスインテリジェンス技術等を活用したビッグデータ解析システムの開発(学術研究文献データ分析システムの開発等)のほか、EC事業者向けの業務支援サービス、金融機関向けの統合リスク管理システム等を提供している。また、連結子会社のカサレアルではインターネットサービスに関連するシステム開発や、技術者向けの研修教育サービスを行っている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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