23日の米株式市場でNYダウは続伸し、131ドル高となった。トランプ大統領が米中貿易協議における第1弾合意の継続を再確認する投稿を入れ、米中関係を巡り安心感が広がった。クドロー国家経済会議(NEC)委員長が経済再封鎖の可能性を否定したことや、ムニューシン財務長官が追加支援策について7月にも可決される見通しと述べたことも好感された。ハイテク株の高いナスダック総合指数は連日で過去最高値を更新。
為替相場が1ドル=106円台半ばと円高方向に振れていたため、本日の日経平均は8円安からスタートしたが、前場中ごろには一転22663.29円(114.24円高)まで上昇する場面があった。ただ、一段の上値追いの動きは鈍く、前引けにかけて伸び悩んだ。
個別では、ファーストリテ<9983>、トヨタ自<7203>、ソニー<6758>などがしっかり。日本通信<9424>やガンホー<3765>が商いを伴って急伸し、売買代金上位にランクインしている。ガンホーは第1四半期決算がポジティブに受け止められ、日本通信はマイナンバーを巡る報道を受けて思惑買いが入ったようだ。しまむら<8227>など6月既存店売上が急回復した小売株の一角も高い。また、日本通信やガンホーとともに東海ソフト<4430>などが東証1部上昇率上位に顔を出した。一方、売買代金トップのソフトバンクG<9984>は2%近い下落。前日に「東京ディズニーランド・シー」再開を発表し買われたOLC<4661>だが、本日は一転2%超下落している。任天堂<7974>や東エレク<8035>は小安い。また、安永<7271>などが東証1部下落率上位に顔を出した。
セクターでは、精密機器、輸送用機器、ゴム製品などが上昇率上位。半面、海運業、石油・石炭製品、電気・ガス業などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の33%、対して値下がり銘柄は63%となっている。
本日の日経平均は国内外での経済活動再開や政府による支援策が好感される一方、為替の円高進行が上値を抑え、伸び悩む展開となっている。為替動向については前日の当欄で述べたとおり、米連邦準備理事会(FRB)のバランスシートの推移から短期ドル資金のひっ迫が緩和しつつあることが窺えるため、今後も動向に注意する必要があるだろう。とはいえ、経済活動の再開に伴って欧米を中心に経済指標が市場予想を上回る回復を見せており、目先的に投資家心理が大きく悪化することも想定しづらい。
さらに下値を支える要因としては各国中銀の緩和マネー、上値の抑制要因としては新型コロナウイルスの感染再拡大懸念などが挙げられる。ここに来て当面のもち合い相場を予想する市場関係者が増えてきたが、従前からの当欄の見立てどおりと言える。
売買代金上位を見ると、前日当欄で取り上げたトヨタ自が円高環境ながら続伸。やはりここまでの株高で負けている機関投資家はシクリカルバリュー株(景気敏感系の割安株)を中心とした出遅れ株への関心を高めていると考えられる。また、6月既存店売上が急回復したしまむらなどの小売株も新たにリバーサル(株価の反転上昇)期待が高まっているようだ。このように機関投資家は業況を睨みながら出遅れ株を選別物色する動きを強めるだろう。業種別騰落率を見ても、景気敏感セクターは強弱分かれる格好となっている。なお、米株式市場の動向を見ても分かるとおり、コロナ後の
「ニューノーマル(新常態)」と低金利継続を睨み、ハイテクを中心としたグロース株(成長株)優位が続くとの見方は変わらない。
一方、マザーズにロコガイド<4497>、フィーチャ<4052>、コパ<7689>の3社が新規上場。新興株の活況が続くなか、しかも4月6日の松屋R&D<7317>以来2カ月以上ぶりのIPO(新規株式公開)とあって、個人投資家の関心を一手に集めているようだ。ロコガイドは前引け時点で気配値3400円に211万1100株の買い注文が入っている。金額ベースでおよそ72億円もの買い注文だ。昨年、有力ベンチャーのIPOとして注目されたSansan<4443>の初値買い資金がおよそ80億円、フリー<4478>が86億円であり、これら匹敵する規模となる。再開されたIPOへの期待の高さが窺えるものの、ややバブルの感があるのは気掛かりか。
これに伴い、大型株・中小型株とも個人投資家が売買主体の銘柄は利益確定売りに押されるものが目立つ。ここまでの東証1部売買代金も1兆円に届かず、やや低調だ。
ただ、IPO銘柄の人気が刺激する形でマザーズ指数は反発。IPO銘柄が好調な出足となり、個人投資家による中小型株の循環物色が続くか注視したい。
(小林大純)
<AK>
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