で前場の取引を終えている。
6日の米株式市場でNYダウは続伸し、102ドル高となった。売りが先行して下げ幅を460ドル近くに広げる場面もあったが、共和党上院トップのマコネル院内総務が連邦政府の債務上限を12月まで一時的に拡大する案を示し、この問題を巡る警戒感が和らいだ。また、ロシアのプーチン大統領が天然ガスの供給増加を示唆したことで天然ガスや原油等のエネルギー価格が低下し、これに伴い長期金利の上昇が一服したことも安心感につながった。本日の日経平均はこうした流れを引き継いで137円高からスタート。前日までの8日続落で2700円あまり下落していたことから自律反発に期待した買いも入り、寄り付き後の日経平均は上げ幅を広げる展開となった。動向が注目される香港株も大幅反発し、日経平均は前引けにかけて一時28015.11円(486.24円高)まで上昇した。
個別では、郵船<9101>、川崎船<9107>、商船三井<9104>といった海運株やレーザーテック<6920>の上昇が目立つ。ソフトバンクG<9984>、任天堂<7974>、東エレク<8035>、ファーストリテ<9983>も堅調だ。ウエルシアHD<3141>は上期決算が減益となったが、市場予想を上回ったことで急反発。また、前日ストップ高比例配分のカワタ<6292>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。一方、武田薬<4502>は経口オレキシン作動薬の試験中断がネガティブ視されて4%の下落。イオン<8267>は決算を受けた売りが出て、業績下方修正のイオンファン<4343>は大幅続落している。また、原油相場の反落でINPEX<1605>は8%超の下落。それに三井松島<1518>や石油資源<1662>といった関連銘柄が東証1部下落率上位に顔を出している。
セクターでは、海運業、情報・通信業、機械などが上昇率上位。一方、鉱業、石油・石炭製品、電気・ガス業などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の64%、対して値下がり銘柄は31%となっている。
本日の日経平均は9日ぶりに大幅反発し、28000円台を回復する場面があった。日経平均の8日続落は2009年7月以来12年ぶりで、この間の下げ幅は2700円あまりに達していた。水準としても8月末から始まった政局相場の上昇分を帳消しにしており、さすがに自律反発が意識された面はあるだろう。また、個別・セクター別の騰落状況を見ると、プーチン氏の発言を受けたエネルギー価格の上昇一服が株式相場全体にかなり好影響を与えているように見える。軟調相場で投資資金を集めていたINPEXなどは急反落を強いられているが、インフレ懸念が和らぐとともに米10年物国債利回りの上昇は一服し、値がさグロース(成長)株が反発。海運株の値上がりを見ると、中国の電力不足への懸念も和らいでいるように思われる。ここまでの東証1部売買代金は1兆5000億円あまり。
新興市場でもマザーズ指数が+2.98%と4日ぶり大幅反発。BASE<4477>が8%の上昇、メルカリ<4385>が3%の上昇などとなっており、やはり米長期金利の上昇一服とともに主力IT株が堅調だ。もっとも、本日マザーズ市場に新規上場したワンキャリア<4377>は公開価格を2割ほど上回る初値を付けたものの、9月後半のIPO(新規株式公開)
銘柄と比べると元気のない印象が拭えない。マザーズ銘柄のみならず、ネット証券で人気が続く海運株などが直近急落し、個人投資家のセンチメントや資金余力が悪化した可能性はあるだろう。実際、QUICK社の算出する信用評価損益率は1日申し込み時点で-9.44%と前の週(-7.68%)から悪化している。ワンキャリアは採用DX(デジタルトランスフォーメーション)・プラットフォーム企業として業績を大きく伸ばしており、今後の値動きに期待したい。
さて、不安材料を抱え動向が注目される米株や香港株。米株はNYダウなどの主要株価指数の底割れを懸念する向きが多かっただけに、前日の460ドル近い下落からのプラス転換は安心感につながっただろう。しかし、強気・弱気が入り交じるなかでボラティリティ(株価の変動率)が高まっているとの指摘があり、これはNYダウなどの日足チャートを見ても一目瞭然だ。「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は6日時点で21.00(前日比-0.30)と、節目の20を上回る状態が継続。「相場は脆弱」との指摘が多く、まだまだ不安定な動きが続くとみておいた方がいいだろう。
連邦政府の債務上限問題を巡っては、マコネル氏の提案に当初こそ民主党から反発の声が出ていたが、結局受け入れの方向で進んでいるようだ。目先の債務不履行(デフォルト)リスクは後退するが、年末にかけての与野党の攻防が一段と激しさを増すとの見方もある。また、いったん下落した原油価格についても、先行き1バレル=100ドル超に達する可能性があるとの市場関係者の声が聞かれる。今週末8日には9月雇用統計の発表が控えており、米株相場を揺るがす懸案・イベントがなお山積みだ。
日本株については、衆院選通過後に経済対策への期待などから再上昇するシナリオを描く市場関係者が多いようだ。しかし、こうした向きが直近の株価下落は「政局相場の反動」などと捉えているのに筆者は違和感がある。海外の主要株価指数とのパフォーマンスを比較すると、海外投資家に「日本株固有の買い要因を失った」と受け止められている可能性は高いだろう。海外情勢に振らされる展開が当面続くとみておきたい。
(小林大純)
<AK>
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