1. 会社沿革
サーバーワークス<4434>は2000年2月に現代表取締役社長である大石良(おおいしりょう)氏が創業した会社で、2004年にWeb(PC、モバイル端末)経由で、大学受験生に対して入試の合否情報を提供するシステムを開発、サービス提供を開始したのが始まりとなる。同サービスは200校近くの大学に導入されたが、需要は合否発表の2月に集中するため、ピーク時には200台のサーバーが必要となる反面、ピークを過ぎるとサーバーは非稼働となるため、投資効率に課題のあるビジネスモデルであった。
こうした課題を解決すべく模索していたところ、2007年にAmazon(アマゾン・ドット・コム
同社の認知度を高めるきっかけとなったのは、2011年3月の東日本大震災発生後に手掛けた日本赤十字社向けの復旧支援案件だ。大震災発生後に日本赤十字社のホームページにアクセスが殺到し、サーバーがダウンする事態が発生したが、同社がボランティア支援活動の一環として30分でAWS上に日本赤十字社のWebサイトを復旧させ、その後48時間で義援金システムも開発した。同事例はメディアで大きく取り上げられ、クラウドサービスの認知度も大きく向上した。その後も、AWSの導入支援実績を積み重ねたことで、2014年にはAWSパートナーのうち最上位格付けとなるAWS Partner Network (APN)プレミアコンサルティングパートナー※として認定された(2014年より継続して認定)。
※国内のプレミアムコンサルティングパートナーは、認定取得順に、アイレット(株)、NRI(野村総合研究所<4307>)、サーバーワークス、クラスメソッド(株)、TIS<3626>、NTTデータ<9613>、NEC<6701>、伊藤忠テクノソリューションズ<4739>、SCSK<9719>の9社となり、その下にアドバンスドコンサルティングパートナー、セレクトコンサルティングパートナーなどがある。認定要件は、「知識」(AWS認定資格保有者数)、「経験」(ローンチ件数、見込み月次収益等)、「お客様の成功」(公開可能な事例数、顧客満足度回答数)で、それぞれ一定基準を満たす必要がある。
資本面では2013年にテラスカイ<3915>、2018年にNTTデータ、NTTコミュニケーションズ(株)とそれぞれ資本業務提携を行い、2019年3月には東証マザーズ市場に株式上場を果している。
同社は経営ビジョンとして、「クラウドで、世界を、もっと、はたらきやすく」を掲げている。クラウドサービスを世の中に普及させていくことで、より多くの企業が競争力を増し、そこで働く社員にとっても「はたらきやすい環境になった」と喜ばれる社会を実現していくことを目指している。
パブリッククラウドサービス市場は年率20%超の高成長が続く見通し
2. 市場環境
(1) パブリッククラウドサービスとは
パブリッククラウドサービスとは、ソフトウェアやデータベース、サーバー、ストレージ等の機能をインターネット経由で企業や個人等に提供するサービスを指す。また、パブリッククラウドサービスは利用形態によって「Infrastructure as a Service (IaaS)」「Platform as a Service (PaaS)」「Software as a Service (SaaS)」等に分類され、同社が手掛けるAWSは「IaaS」「PaaS」に分類される。また、自社専用にデータセンターやサーバーなどを保有してシステムを運用する形態は「オンプレミス」と呼ばれている。なお、今後は初期投資負担や運用コストが低いパブリッククラウドにシフトしていくものと予想されている。
(2) 市場見通し
MM総研の調査によれば、2018年度の国内クラウドサービス市場は前年度比18%増の1兆9,422億円となり、このうち、パブリッククラウド市場については同34.1%増の6,165億円となった。低コストかつ柔軟な運用が可能なこと、セキュリティ面での強化が進んだこと等で、基幹・業務系システムをオンプレミスからクラウドに移行する動きが活発化してきたことが背景にあり、なかでもAWSやMicrosoft Azureといった大手企業の寡占化が進んでいる状況にある。スケールメリットを生かしたコスト競争力に加えて、技術力やセキュリティ面で他のサービス事業者との格差が広がっていることが要因だ。世界シェアで見ても、Amazonが約35%とトップを独走している状況にある(2番手のMicrosoft
国内のパブリッククラウドサービスの見通しについては、企業のクラウド導入率が5割にも達していないことから、引き続き高成長が続くと見られており、2023年度には1兆6,490億円に達すると予測されている。5年間の平均成長率では21.7%となり、AWS導入支援の専業でプレミアコンサルティングパートナーである同社も同等以上の成長が期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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