1. 2022年7月期第2四半期の業績概要
2022年7月期第2四半期におけるわが国経済は、実質GDPの前期比が2021年7〜9月は-3.6%(年率換算)、同年10〜12月は4.6%(同)と後半に持ち直す傾向だった。日経平均株価は3万円台を回復する場面もあったが、2.9万円前後でもみ合う展開が続いた。コロナ禍は長期化し、景気動向の先行きには引き続き注視する必要がある。
この間、同社の属する不動産業界においては、個人の住宅取得需要や投資家のレジデンス投資など、住居系の取引は活発に行われた。一方でコロナ禍の長期化は、オフィスや宿泊系施設の取引が難航するなど継続して影響を及ぼしている。また地価の動向も読みにくい状況にあり、今後の見通しには留意が必要な状況が続いている。
このような事業環境の下、同社では「中期経営計画(2022年7月期~2024年7月期)」に基づき、経営基盤の強化、企業価値の向上及び不動産テック企業としての地位の確立を目指し、事業を推進した。業績に大きな影響を及ぼしたのは、インバウンド需要向け大型物件の売買契約を2022年2月16日に契約締結し、当第2四半期に先行して棚卸資産の評価減2,836百万円を計上したことによるものである。その結果、当第2四半期の業績は、売上高4,092百万円(前年同期比65.7%減)、営業損失2,949百万円(前年同期は996百万円の利益)、経常損失3,347百万円(前年同期は510百万円の利益)、四半期純損失3,872百万円(前年同期は290百万円の利益)となった。大きな損失となったが、インバウンド需要向け不動産の市況回復は不透明なため、リスクを明確にして再出発できたことは、前進と評価できるだろう。
売上高に関しては、主力商品「LEGALAND」の販売(契約)等を積み重ねるも、売上計上(引き渡し)の過半が下期売上となったこともあり、前年同期比で大幅減収となった。売上総損失が2,042百万円(前年同期比4,585百万円減)と大幅減益となったのは、大規模物件の棚卸資産評価減が主要因である。販管費は906百万円(前年同期比639百万円減)と抑制に成功した。これは、報酬制度の変更などによる人件費の減少が寄与した。結果として、経常損失で3,347百万円(前年同期比3,857百万円減)となった。なお、経常損失と四半期純損失の乖離が大きい要因としては、現時点で将来の課税所得を見積もることができないため保守的に繰延税金資産の全額を取崩し、法人税等調整額として521百万円を計上したためである。
セグメント別に見ると、不動産ソリューション事業では、売上高3,507百万円(前年同期比67.4%減)、セグメント損失2,666百万円(前年同期はセグメント利益1,466百万円)となった。販売面においては同社の主力商品である「LEGALAND」の販売は堅調に推移した。不動産賃貸事業では、売上高582百万円(同14.0%減)、セグメント利益115百万円(同23.1%減)となった。引き続き安定的な稼働率を維持しているが、長期的な収益と引き合いの状況を考慮して手元流動性を高めるために販売用不動産物件を売却し物件数が減少したことなどにより、前期比で減収減益となった。同事業の利益率も19.8%と、3セグメントの中では高い利益率を維持している。その他事業では、売上高3百万円(同99.3%減)、セグメント損失3百万円(前年同期はセグメント利益39百万円)となった。介護事業の譲渡が大きく影響し、減収減益となった。
有利子負債は前期比約18億円減少。資本注入及び利益蓄積による財務健全化を目指す
2. 財務状況と経営指標
資産合計は30,012百万円となり、前期末比3,551百万円減少した。そのうち、流動資産は26,385百万円と同951百万円減少したが、これは主として現金及び預金の681百万円減少、販売用及び仕掛販売用不動産の194百万円減少などによる。固定資産は3,627百万円と同2,600百万円減少したが、これは主として、保有目的変更等に伴う建物の1,287百万円減、土地の772百万円減、税効果会計における一時差異の取崩しに伴う繰延税金資産の520百万円減少などによる。
負債合計は29,131百万円となり、前期末比222百万円と微増となった。そのうち、流動負債は21,595百万円と同4,174百万円増加したが、これは主として1年内返済予定の長期借入金の2,913百万円増、売却に伴う返済等による短期借入金の866百万円減による。固定負債は7,535百万円となり、同3,952百万円減少した。これは主として1年内返済予定の長期借入金への振替や売却に伴う返済等により、長期借入金が3,890百万円減少したことによる。この結果、短期借入金・長期借入金等を合算した有利子負債は、1,857百万円減少した。
純資産合計は881百万円となり、前期末比3,774百万円減少した。これは主として、四半期純損失3,872百万円の計上などによる。また自己資本比率は、有利子負債の減少に伴い前期末に13.9%まで上昇したが、大型インバウンド物件の損切を断行したために2.9%に低下した。同社では自己資本比率15%を目標にしており、短期的には資本の注入を行い、中期的には中期経営計画に沿って利益を蓄積し、財務健全化を目指す。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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