8日の米株式市場でダウ平均は183.56ドル高(+0.54%)と続伸。中国政府がコロナ規制を緩和する兆しを見せたことが好感された。また、週次失業保険申請件数の増加に伴う労働市場の逼迫緩和の兆候も来年の利上げ観測の後退に繋がり相場をさらに押し上げた。ナスダック総合指数は+1.12%と5日ぶり反発。米国株高を受けて日経平均は59.53円高からスタート。12月先物・オプション取引に係る特別清算指数算出(メジャーSQ)に絡んだ売買が交錯する中、寄り付きから上げ幅を広げる流れとなった。その後も徐々に上値を伸ばす展開となり、前引け直前に27952.80円(378.37円高)と本日の高値を付けた。なお、SQ値は概算で27576.37円。
個別では、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>の半導体関連、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、キーエンス<6861>、ファナック<6954>、TDK<6762>、村田製<6981>、ローム<6963>などのハイテク株が総じて高い。住友鉱<5713>、信越化<4063>、三井物産<8031>、三菱重<7011>など景気敏感株も堅調。コナミG<9766>、カプコン<9697>、コーエーテクモ<3635>などゲーム関連の上昇も目立つ。業績・配当予想を上方修正したRSテクノ<3445>、NTT<9432>との連携に関するリリースが材料視されたイマジカG<6879>、決算があく抜け感につながったBガレジ<3180>、レーティング格上げが確認されたフジクラ<5803>、証券会社が目標株価を引き上げた東北電力<9506>などは大幅に上昇。NRI<4307>との資本業務提携を発表したキューブシステム<2335>も大きく上昇した。
一方、軟調な原油市況を受けてINPEX<1605>、石油資源開発<1662>が下落。地合いが良い中にもかかわらず、メルカリ<4385>、NRIは逆行安。市場予想は上回ったものの減益決算や内容が嫌気された積水ハウス<1928>は売り優勢。トミタ電機<6898>、アイモバイル<6535>も決算で売られた。ラウンドワン<4680>は既存店売上高動向の鈍化が引き続き重荷になったもよう。
セクターでは電気・ガス、電気機器、精密機器を筆頭に全般買い優勢。一方、鉱業、石油・石炭製品、水産・農林の3業種が下落した。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の78%、対して値下がり銘柄は17%となっている。
日経平均は大幅反発し、再び75日移動平均線上に復帰。前日は27500円を割り込む場面もあったが、本日は心理的な節目の28000円を窺う位置にまで戻してきている。SQ値も大きく上回る水準で前場を終えている。直近の売られ過ぎ感から前日の米株式市場でハイテク・グロース株が買い戻されたことが、東京市場にも好影響を及ぼしているようだ。ただ、イベント前のポジション調整的な域を出ていないといえ、今後の動向は今晩からの海外市場睨みとなろう。
今晩は米11月卸売物価指数(PPI)のほか、12月ミシガン大学消費者信頼感指数が発表される。食品・エネルギーを除くコア指数は前月比で+0.2%と10月(+0.0%)から加速する見込みだが、前年比では+5.9%と10月(+6.7%)から大きく減速する見込みとなっている。予想通りとなれば、インフレ減速・利上げペース減速への期待が高まり、相場の支援要因となろう。
12月ミシガン大学消費者信頼感指数での1年先期待インフレ率は4.9%と11月(4.9%)から横ばい、5−10年先長期期待インフレ率も3.0%と11月(3.0%)から横ばいが予想されている。期待インフレ率は、消費者心理への影響が大きいガソリン価格に左右されやすいとされるが、軟調な原油市況を背景にガソリン価格も低水準におさまっているため、期待インフレ率が予想よりも低下すれば、長期金利のさらなる低下を通じて相場を下支えしそうだ。
一方で、前日の当欄での主張の繰り返しになるが、年内最後のビッグイベントとなる13−14日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)ではまだリスクが残る。政策金利見通し(ドットチャート)が公表される予定だが、現在のフェデラルファンド(FF)金利先物市場はターミナルレート(政策金利の最終到達点)として5%を下回る水準までしか織り込んでいないうえに、来年半ば以降の利下げ転換まで予想している。しかし、5%を大きく上回るターミナルレートが示される可能性は十分にある。また、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は記者会見で、これまで明らかにしているように利上げの累積効果を見極めるために利上げペースの減速が適切との見解は繰り返し主張するだろうが、インフレ沈静化のために利上げ停止は時期尚早との主張も同時に再表明する可能性がある。
利下げ転換まで織り込んでいる市場はやや先走り過ぎている印象が否めない。また、今後、米国経済の景気後退が不可避とされ、予想一株当たり利益(EPS)の低下が予想されている中、足元のS&P500種株価指数を構成する企業から成る予想株価収益率
(PER)はヒストリカルで見て割安感に乏しく、むしろ割高感すらある。日本株についてはバリュエーションの割高感はないが、3月期本決算企業の上半期決算を終え、輸出企業の想定ドル円レートの平均値が1ドル=138円とされる中、今後の円高リスクも想定すると、割安感だけでは投資妙味に乏しいだろう。
これも日々、当コンテンツ内で繰り返している主張になるが、金利や景気、為替などの動向に不透明感が強い中、これらファクターに左右されやすい企業の投資妙味は乏しいと考えられる。強いて言えば、景気後退懸念で長期金利の上昇圧力が抑えられる中、金利動向に左右されやすいグロース株のうち、内需系セクターの銘柄には投資妙味があるといえる。
その他では、やはり不透明感の強い外部ファクターの影響がもっとも小さいと思われるリオープン関連が望ましいだろう。中国でのコロナ規制がさらに緩和されない限り、インバウンド需要の本格回復は見込みにくいが、中国を除いたインバウンド需要は非常に速いペースで回復している。また、全国旅行支援の延長が決まっている中、国内の旅行需要の旺盛さも続くことが予想される。ホテルや旅行予約サイト、鉄道などの関連株には物色余地がまだあると考えたい。
(仲村幸浩)
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