3. 自社製造・受託サービスのメーカー機能強化
コスモ・バイオ<3386>はグループ内にメーカー機能を持っていることも強みだ。そして、成長ドライバーとして自社製造・受託サービスのメーカー機能を強化している。仕入で充足できないニーズに対して「自ら作る、サービスを提供する」ことで、最新の製品・技術情報及びソリューションを提供する。2006年12月、初代培養細胞(プライマリーセル)の研究開発・製造・販売及び細胞を用いた受託解析を行うプライマリーセルを連結子会社化し、開発・製造機能を取り入れて試薬製造・受託試験事業に参入した。2013年7月にはプライマリーセルを吸収合併し、2017年10月には研究用試薬の自社開発・製造及び受託サービス事業の強化を目的として札幌事業所(北海道小樽市)を開設した。そして2016年12月にはカスタムペプチド合成・抗体作製サービス事業に本格参入、2019年7月には鶏卵バイオリアクター事業を開始した。自社製造・受託サービスのメーカー機能を強化するなかで、特に両事業を成長ドライバーの柱と位置付けて、両事業の規模拡大・収益化に注力している。
4. 国内外の各種関連法規・取扱基準・規制に精通
製品のなかには薬機法、毒物及び劇物取締法など関連法規や行政指導に該当するものが多く含まれている。動物由来もしくは動物由来の成分を含む場合には、輸入・輸出の際に動物検疫対象となる。また海外からの輸入品の場合には、関連法規や取扱基準・規制が日本と異なっていることが少なくない。このため製品の仕入・保管・販売に関しては、国内外の関連法規・行政指導による取扱基準・規制に精通して対応することが必要になる。エンドユーザーである研究者に対しても製品取扱に関する情報を適切に提供しなければならない。また試薬の多くは、タンパク質や核酸・細胞など生物由来の物質、いわゆる「ナマモノ」であるため、仕入から保管・納品まで厳重な温度管理が必要となる。こうした国内外の各種関連法規・取扱基準・規制に精通し、保管に関しては各種温度帯を備えた物流センターと入出荷ノウハウにより、適切な温度管理を徹底している。このように対応力においても競合優位性を持っている。
5. 収益特性・リスク要因
収益特性としては季節要因がある。大学・公的研究機関の公的研究費及び民間企業の研究開発費の支出は、国の年度末や民間企業の決算期末1月-3月に多くなり、新年度入りした4月-6月に少なくなる傾向がある。このため同社の売上高及び利益も第1四半期(1月-3月)の構成比が高く、第2四半期(4月-6月)の構成比が低い特性がある。ただし公的研究費で年度繰越や複数年予算が認められるようになり、年度末に予算消化が集中する傾向が緩やかになっているため、同社の四半期収益も徐々に平準化が進むと考えられる。
収益に影響を与えるリスク要因としては、為替変動、需要変動(公的研究費や民間企業の研究開発費などライフサイエンス研究関連費用の支出動向)、海外仕入先のM&Aや日本における販売体制の改変、業界内の競合、法規制の変更などがある。為替変動については、仕入の6~7割が輸入品のため、仕入原価が為替変動の影響を受けやすい。ドル高・円安は仕入原価上昇要因、ドル安・円高は仕入原価低下要因となる。為替変動リスクに対するヘッジ策としては、実需の一定範囲内で為替予約を行っている。なお仕入全体に占めるドル建て取引の割合は、近年はおおむね6割前後で推移している。需要変動については、エンドユーザーが大学・公的研究機関及び民間企業における研究者(売上構成比は約2分の1が大学・公的研究機関、約2分の1が製薬メーカーなどの民間企業)のため、収益は大学・公的研究機関の公的研究費及び民間企業の研究開発費の支出動向の影響を受ける。ただし基礎研究分野のため需要に大きな変動は見られず、市場規模は同社によるとおおむね1,100億円程度で推移している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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