1. 販売会社3社を統合し日産東京販売(株)を設立
日産東京販売ホールディングス<8291>は、日産自動車(株)<7201>系の自動車販売会社などを傘下に持つ持株会社で、日産ブランドとルノーブランドの新車の販売や中古車の買取・販売、自動車整備などを行っている。販売エリアは東京都の人口の9割近くをカバー、東京で最大級の自動車ディーラーとなっており、中古車や整備では日産ブランドに依存しないオリジナルの事業も展開している。このように自動車関連事業が主軸で、2021年3月期第2四半期売上高構成比は96%、営業利益構成比は90%と大半を占める。ほかに、上場子会社の東京日産コンピュータシステム(株)<3316>では、ソリューションプロバイダー事業を中心とした情報システム関連事業を手掛けている。なお、2021年7月に傘下の日産自動車の販売会社3社を統合し、日産東京販売(株)を設立した。
2. 「ベストプラクティス」と「技術の日産」が強み
カーライフのワンストップサービスを特徴とする同社の強みは、ワンストップサービスのサイクルをスムーズに回す「集約化」と「ベストプラクティス」にある。販売会社の統合により「集約化」は強みから当たり前のものになるが、今後もシナジーやスケールメリットが期待される。「ベストプラクティス」は営業現場などのノウハウや情報を共有・横展開することで、営業や販促のヒット率上昇や販売単価の向上につなげている。東京という高コストなエリアに立地しながらも、相対的に高い営業利益率を上げることができる理由にもなっている。「技術の日産」は、単に伝統的スローガンというだけでなく、先行的にEV(電気自動車)や自動運転支援技術を開発してきたメーカーである日産自動車の技術力に裏打ちされており、続々投入される先端的な新型車を商品として扱えることが同社の強みになっている。
3. 半導体不足による車両供給不足は平均単価上昇でカバー
2022年3月期第2四半期の業績は、売上高68,827百万円(前年同期比9.3%増)、営業利益1,476百万円(同488.1%増)となった。新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)からの顧客の購入マインド回復もあって受注は順調に回復を続けているが、半導体不足による車両供給不足で納期が遅れているため、第2四半期3カ月を中心に販売(納車)台数が伸び悩んだ。しかし、受注が積み上がっていること、統合や「ベストプラクティス」による営業力の強化を背景に新型車「オーラ」など上級タイプの受注が好調で、車種ミックスにより平均単価が上昇していることから、ある程度カバーできたと考えられる。利益面では、車種ミックスの改善に加えて整備事業や中古車販売が堅調に推移したことから売上総利益率が向上、統合効果などにより販管費の効率的使用が進んで販管費率も改善した。
4. 外部環境悪化も基本的な成長戦略に変更なし
2022年3月期の業績見通しに関して同社は、売上高145,000百万円(前期比3.2%増)、営業利益4,000百万円(同16.1%増)を見込んでいる。ワクチン接種が普及したとはいえ景気の先行きが依然不透明な上、世界的な半導体不足の車両供給への影響も懸念され、事業環境は厳しくなっている。一方、日産自動車の進める「NISSAN INTELLIGENT MOBILITY」のもと、EVやe-POWER搭載車などの新型車が続々投入されており、中でも2021年6月予約開始の日産自動車初のクロスオーバーEV「アリア」は、「技術の日産」の象徴として非常に期待値が高い。中期経営計画は、コロナ禍や車両供給不足など外部環境の悪化で進捗がやや遅れているようだが、基本的な成長戦略を変更する必要はなさそうだ。
■Key Points
・販社を統合し日産東京販売を設立。「ベストプラクティス」と「技術の日産」が強み
・「100年に一度の大変革期」に、コロナ禍や車両供給不足などにより外部環境悪化
・続々投入する先端技術を使った新型車が好評で収益下支え。特に「アリア」は期待大
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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