前週末4日の米国株式相場は続伸。ダウ平均は248.74ドル高の30218.26ドル、ナスダックは87.05ポイント高の12464.23ポイントで取引を終了した。11月雇用統計で非農業部門雇用者数が低調な結果となったものの、追加財政・金融措置への期待が根強く終日堅調推移となり、ダウ平均株価は史上最高値を更新した。米国株高を受けた今日の東京株式市場は寄り付き段階では買いが先行した。引き続き新型コロナワクチンの普及による経済活動正常化や、政府が近く決定する追加経済対策への期待感が株価支援要因となった。一方、国内外の感染状況などが引き続き懸念され、上値抑制要因となり、日経平均は寄り後は伸び悩み、その後、マイナス圏で下げ幅を広げた。
個別では、第1四半期の営業損益が14.28億円の赤字となったファーマフーズ<2929>、11月のアイウエア専門ショップの既存店売上高が前年同月比3.4%減と10月の6.1%
増から悪化したJINSHD<3046>、米社買収を発表し資金負担が懸念されたオリンパス<7733>、大飯発電所に対する大阪地裁判決が嫌気された関西電力<9503>が下げた。
一方、第1四半期営業利益が前年同期比2.5倍となったエイチーム<3662>がストップ高となり、通期予想の営業利益に対する第1四半期の進捗率が46.8%となったアイル<3854>、第1四半期営業利益が前年同期比26.1%増となった日本駐車場開発<2353>、業績好調なトヨタ系銘柄として米系証券が格上げしたトヨタ紡織<3116>、20年10月期営業利益が従来予想を上回り21年10月期は5.3%営業増益予想と発表したカナモト<9678>、自社株買いを発表したアイオーデータ<6916>、21年3月期純利益予想の上方修正と自社株買いを発表した凸版印刷<7911>が上げた。
セクターでは、金属製品、精密機器、空運業、鉄鋼、電気・ガス業などが値下がり率上位。一方、鉱業、卸売業、保険業、パルプ・紙、その他製品などが値上がり率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の67%、対して値上がり銘柄は28%となっている。
先週2日の当欄では、任天堂<7974>を例にとり、企業の変化について考えてみたが、コロナ禍が促す変化は企業にとどまらない。世界の勢力図さえ変えてしまうかもしれない。少し前になるが、11月18日に日本政府観光局から発表された10月の訪日外国人客数は推計で前年同月比98.9%減の27400人。主要国からの訪日が軒並み99%前後の減少となる中で少し目を引いたのが、前年同月比86.7%減と減少率が唯一80%台にとどまったベトナム。今年10月の来日数は6200人で、中国の4500人、韓国の2000人を上回り世界で最も多かった。ベトナム、韓国、シンガポールの3カ国は短期ビジネス往来が逸早く再開された影響もあるのだろうが、やや意外感はある。
統計発表の翌19日の日本経済新聞には「ベトナム、成長率一人勝ち」の見出しが躍った。ベトナムの7-9月期実質GDPは前年同期比2.6%増と、4-6月期に続きプラス成長となり、20年中に名目GDPでシンガポールやマレーシアを抜きそうだとしている。厚労省の統計によると昨日までのベトナムの新型コロナ感染者は1365人、死亡者は35人。
人口1億人弱の国でこの少なさは驚異だ。コロナの抑え込み成功が、順調な経済成長の要因の一つとなっているのだろう。
世界の勢力図ということになれば米中関係を抜きには語れないが、ベトナム政府傘下の通信最大手はファーウェイの5G機器を排除するもようだと伝えられている。また、日中韓首脳会談見送りが報じられた先週4日の日本経済新聞の紙面には、日米両政府がベトナムの脱炭素化支援で連携するとの記事が載った。そう言えば菅首相、就任後最初の訪問国はベトナムとインドネシアだった。年内はこの2カ国以外に訪問予定はない。
こう見てくると、コロナ禍の中で、世界の勢力図はすでに変わり始めているようにも思える。株式市場の言葉で言えば、ベトナムはバリュー株からグロース株へ分類が変わりつつあるということか。この日本はどうだろう。この件、もう少し考えてみたいが、例によって紙面の都合で次の機会に回す。
さて、後場の東京株式市場で日経平均はもみ合いとなりそうだ。このところの上げ相場に乗り遅れた投資家の買いが想定される一方、日経平均は25日移動平均から4%超の上方乖離で高値警戒感も継続しており、上値、下値とも探りにくい地合いとなっており、次第に様子見気分が広がる可能性もある。また、前場のTOPIXの下落率は0.47%
で、日銀によるETF買いの思惑は働きにくいと見られる。
(小山 眞一)
<AK>
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