1. 沿革
木徳神糧<2700>の主力事業は米穀類の仕入れ、精米、販売であるが、社歴は古く、その起源は1882年(明治15年)に遡る。その後は食品事業や飼料事業などにも業容を拡大し、2001年7月に株式をJASDAQ市場に上場した。
2. 事業内容
同社の事業は、米穀事業、飼料事業、鶏卵事業、食品事業に分かれる。2018年12月期のセグメント別売上高の割合は米穀事業が86.2%と大部分を占めており、続いて飼料事業が5.8%、鶏卵事業が4.5%、食品事業が3.5%となっている。
(1) 米穀事業
同事業は主に玄米を仕入れて加工(精米)し、販売を行っているが、一部は中小精米業者向けに玄米のままで販売される。2018年12月期の取扱数量は、国内精米41.5%、外国産米(MA米含む)37.4%、国内玄米21.2%となっている。
国産米穀の主な仕入先は、JA全農(全国農業協同組合連合会)が50%近くを占めるが、それ以外の仕入先は地域の単独農協や海外などである。仕入価格と数量はJA全農との相対で決められるが、数量を確保するために提示された価格をある程度受け入れざるを得ない面もあり、この部分で競争原理は働いていなかった。しかし平成26年(2014年)産米からは、同社のような流通業者の希望価格を募った上で販売する「入札方式」も採用されるようになっており、同社にとってプラス要因となっている。また2017年10月にはJA全農との業務提携を発表し、2018年4月には保有する自己株式30万株を譲渡して資本提携も行っている。
仕入れた玄米を全国計18ヶ所の工場(自社工場7ヶ所、委託工場11ヶ所)で精米し、各ユーザーに販売している。主な販売先は、大手GMS(総合スーパー)が10%、スーパーマーケットが15%、外食チェーンが6~7%、一般米屋などが約2%となっている。また上記のように玄米のまま販売されるものが25~30%ほどある。企業グループ別では、セブン-イレブン、イトーヨーカドー、デニーズなどのセブン&アイ・ホールディングス<3382>向けが約25~30%を占める。特にセブン-イレブン向けでは、セブン-イレブンが年間に調達する米穀(推定19万~20万トン)のうち約半数以上(玄米含む)を供給する最大手の米穀供給業者である。それ以外では、吉野家ホールディングス<9861>などの外食チェーンや各地の生協も同社の主要顧客であり、上位5社向けの売上高比率は30~35%となっている。
同社の業界内の地位は第2位。最大手は事業多角化を進める(株)神明で、2018年3月期のグループ連結売上高は246,000百万円。専業卸としてはJAグループの広域米穀卸である全農パールライス(株)を始め、(株)むらせ、(株)新潟ケンベイ、(株)ミツハシなどが続いているが、全農パールライス以外の売上規模はいずれも30,000百万円~50,000百万円程度と見られ、同社と神明、全農パールライスが業界内では3強と言っても過言ではない。米市場全体に対する同社のシェアは、主食出荷及び加工用ベースで約4~5%、全国出荷団体取扱ベースで約12~13%となっている。そのほか大和産業(株)、伊丹産業(株)、ヤマタネ<9305>なども、米穀事業を営んでいる。
(2) 飼料事業
現在でこそ売上比率は低くなっているが、終戦直後は同社の主力事業の1つであった。現在の中心事業は、精米工程から出る米糠を主原料として配合飼料向けの材料を供給することである。部門としては営業利益を計上しており、黒字事業である。急成長を見込みにくい分野ではあるが、販路を拡大することで売上高や利益を伸ばしていくことは可能であるとみられる。
(3) 鶏卵事業
鶏卵を仕入れて大手量販店などに販売しているが、養鶏は手掛けていない。セブン&アイグループとの取引は鶏卵部門がきっかけで始まった。鶏卵に日付を刻印したのは同社が最初とのことである。鶏卵価格の動向によって利益率が変動する。なお鶏卵事業は子会社のキトクフーズ(株)が行っている。
(4) 食品事業
米加工製品、和菓子材料の米粉などを扱っている。いずれも「米」に関連した加工食品であるが競争が激しい分野であり、採算は低下している。しかしそのような環境でも同社では、付加価値の高いたんぱく質調整米の製造販売を積極的に行い、事業全体の採算向上に努めている。特に同社の独自製品である「真粒米(まつぶまい)」は、食事制限を受ける腎臓病患者などから高い評価を得ており、後述するように今後は海外展開も図っていく計画だ。また以前から赤字を計上していた鶏肉事業を行っていた子会社の内外食品(株)の株式を2016年8月に売却し、鶏肉事業から撤退している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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