【QAあり】エプコ、普及期を迎えた太陽光・蓄電池・EV分野へのサービス提供を強化 グループ間シナジーにより収益拡大を見込む
目次
吉原信一郎氏(以下、吉原):株式会社エプコ代表取締役CFOの吉原です。本日は、私どものIRセミナーにご参加いただきありがとうございます。
本日は、会社概要、エプコグループの成長戦略、株主還元の3つについて、なるべく要点を絞ってコンパクトにご説明し、質疑応答の時間をたくさん取りたいと思っています。
会社概要
吉原:会社概要です。社名は、「Energy Plan Company」の頭文字である「EPCO」から取っています。
本社は、東京都墨田区錦糸町にあります。現在はスタンダードに上場しており、証券コードは2311です。1990年に設立し、34年目を迎えています。
従業員数は、日本と中国の連結ベースで793名です。代表取締役グループCEOであり、創業者でもある岩崎が筆頭株主となる、オーナー系企業です。
岩崎と私の2名が代表取締役を務め、経営しています。創業者の岩崎は新規事業をどんどん作っていきたいタイプのため、新しいところを作っていく役回りです。もともと会計士である私は、CFOとして既存事業やグループ経営の管理を行っており、2名で役割を分担して経営しています。
岩崎は創業から関わり、私もエプコ上場前となる2002年から参加しているため、上場来20年以上、2人で一緒に経営している会社ということになります。
パーパスとして、「住まい・暮らし・地球環境をDX技術で支えます。」を掲げています。この後、事業紹介を通してご説明します。
エプコグループの事業拠点
吉原:エプコグループの事業拠点をご紹介します。この後、事業セグメントとしてご説明する設計サービス、メンテナンスサービス、再エネサービスの3サービスの拠点のうち、設計サービスは東京と沖縄と中国の吉林で事業展開しています。
メンテナンスサービスの拠点は沖縄と金沢、再エネサービスは東京、群馬、埼玉、中国で展開しています。
先ほど従業員数が約800人いるとお話ししましたが、実はそのうちの半分となる400名程度が、設計サービスとメンテナンスサービスの沖縄拠点にいます。その次に多いのが中国の吉林で、約170人です。
沖縄と中国の吉林に全体の70パーセント程度の従業員がいる点が特徴的な会社です。
エプコグループの事業モデル(現在)
吉原:設計サービス、メンテナンスサービス、再エネサービスの3サービスについてご説明します。
いずれも住宅の事業領域で展開しており、住宅ライフラインを支える3つのコア事業になります。住宅領域で事業展開している点も、特徴の1つです。
我々の祖業は、1990年に始めた設計サービスです。ハウスメーカーがお客さまとなり、家を建てる際、お水やお湯、排水など住宅の配管経路や電気の設計など、いわゆる設備設計を行います。我々はこの設備設計に関して1棟ずつ依頼を受け、CADソフトを使って設備設計図面を書いて納品し、それぞれお金をいただくというビジネスです。
この設計サービスは、1990年代からさまざまな大手ハウスメーカーに急速に採用いただいています。我々が1棟ずつCADソフトを用いて設計することで、工事会社の設備工事が非常に簡単になるため、ハウスメーカーから工事会社に払う工事代金がコストダウンできる点が、ハウスメーカーにとって大変大きなメリットでした。
また、施工が標準化されることで施工の品質も上がり、工事ミスなどが起こりづらい仕組みになります。これらをご評価いただいたことによって、さまざまなハウスメーカーに導入していただいたことが会社の始まりです。
増井麻里子氏(以下、増井):創業時からすでに、現在のビジネスを手掛けられていたのでしょうか? それとも、もともとはなにか別のビジネスを手掛けていらっしゃったのでしょうか?
吉原:創業者の岩崎は、もともと工事会社で水道工事を手掛けていました。当時は鉛筆なめなめどんぶり勘定でたくさんお金もらえたバブルの時代だったこともあり、水道工事は大変よく儲かりましたが、同時に非常に無駄があるとも感じていました。
そこで、工事を発注するハウスメーカー側に立ち、もっときちんと標準化すればコストダウンできると提案していくほうが大きなビジネスになると思い、自分で設計会社を立ち上げたことがきっかけです。
増井:まさに創業後に、バブルが崩壊したということですね。
吉原:おっしゃるとおりです。
増井:この後ご説明いただけるかと思いますが、これから新しく展開していかれるビジネスは、住宅に関連しているという点が1つの共通点となります。新たなビジネスを始めるにあたって、それ以外にも何か基準はありますか?
吉原:我々の基本的な3つのサービスは、いずれもお客さまからの要望に応え、その周辺領域で拡大してきています。
我々はもともと、設計サービスを新築住宅向けに提供することでさまざまな大手住宅会社とお付き合いできていました。一方で、住宅会社は家を建てた後も、お客さまに対するサービスとして「なにかお困り事があればお電話ください」というお問い合わせ窓口を設けています。
メンテナンスサービスでは、住宅会社が受けるお問い合わせの窓口を我々がアウトソーシングで受けます。先ほど、沖縄にたくさんの従業員がいると言ったのは、この電話を受けるスタッフが200人以上いるためです。
我々が設計サービスを手掛ける中で把握している設備設計図面や、住宅設備のスペック情報などをそのまま用いてコールセンター業務を行えば、お客さまのお問い合わせを素早く解決し、手配することもできます。
また、業務で得た情報もデータベースにどんどん蓄積できるため、医師の患者カルテのように、その人の情報がわかるようになる点が大いに評価され、ハウスメーカーからたくさんアウトソーシングしてもらえるようになったということです。
増井:ハウスメーカーは、すべて自前で行う会社ばかりではないということですね。大手も含め、ハウスメーカーには意外にたくさんのプレーヤーがいらっしゃいますよね。
吉原:おっしゃるとおりです。今までの住宅会社には、自分たちで内製化してお問い合わせ窓口を開いているケースや、他のコールセンター事業者に外注しているケースもあります。
一方で、設計サービスも手掛ける我々に一括で依頼したほうが、内製化するよりも効率的で対応が早いという点もご評価いただいているかと思います。
また、メンテナンスサービスは住宅引き渡し後のサービスです。さまざまなお問い合わせのお電話をいただいた件数に応じて、ハウスメーカーからお金をいただきます。
2010年代には再エネサービスを展開していくことになったのですが、2011年の東日本大震災をきっかけに、住宅業界では再生可能エネルギーを活用していこうと太陽光パネルや蓄電池などを設置する機運が非常に高まりました。
我々も、住宅領域で新しいサービスの提供を始めようとする際、今後は再生可能エネルギー分野が伸びていくだろうと考え、住宅会社から依頼を受け、3つ目のサービスとして始めたのが再エネ設備の設置工事です。
太陽光パネルや蓄電池、オール電化にするためのIHクッキングヒーター、エコキュートなどの設置工事を始めました。再エネサービスは、現在も大きく伸びています。
増井:そのようなところも、御社に発注したほうが手間は少なく、お客さまにとっても良いですよね。お客さまもノウハウなどが大変ですし、お任せしたほうがいいのではないかということで、ニーズがけっこうあるのでしょうか?
吉原:おっしゃるとおりです。
エプコグループの連結業績推移
吉原:エプコグループの連結業績推移についてです。2002年の上場から約20年になりますが、現在までの連結売上高と当期純利益をグラフ化しています。
直近の事業年度の売上50億円は、上場会社の規模としては小さい部類に入るかと思います。設計やコールセンターなどのフィービジネスが中心で、物にあまり絡まないため、金額自体は小さい点は我々の特徴です。
一方で、売上は着実かつ安定的に積み上がり伸びているタイプのビジネスです。20年間で1度も赤字を作ったことがない利益面も、特徴の1つです。
設計やコールセンターの仕事は、一度住宅会社からご採用いただくと解約されることが大変少なく、お客さまの契約はどんどん積み上がっていきます。このように、売上・利益が安定的に計上されるという特徴もあります。
増井:リーマン・ショックや新型コロナウイルスの際も赤字を出さなかったということで、収益構造は非常に強いと思います。契約が長く、お客さまも積み上がっていくこともあるかと思いますが、収益基盤にはそれ以外になにか特徴はあるのでしょうか?
吉原:設計やコールセンターのサービスは、競合他社があまり多くありません。ニッチな競争力があるという点も特徴です。
例えば、設備設計において、地域には小規模な設計会社がたくさんありますが、中国や沖縄に合計約400人のスタッフを抱え、東京も合わせると数百人単位の規模で設計を手掛けている会社は、我々のほかにありません。
何千棟、何万棟を手掛ける大手住宅会社に対しては、それだけの規模を受けられる点が1つの強みになります。
コールセンターでは、我々との相見積もり上、トランス・コスモス社やベルシステム社のようなコールセンター大手事業者もライバルにはなりますが、住宅のコールセンターに特化している点が我々の強みです。
住宅のコールセンターには、お湯が出ない、近隣がうるさい、屋根に穴が開いた、相続の相談など、さまざまな電話がかかってきます。我々は、住宅会社と「この内容がかかってくれば、こちらに手配する」といったルールを決め、速やかに解決します。そこまでやっているコールセンター事業者は、あまりありません。
増井:では、人件費など固定費もあるものの、そのような住宅特化型である点が参入障壁になっているのでしょうか?
吉原:おっしゃるとおりです。
増井:そこまでを自分たちで揃えようという会社も、なかなかありませんよね。
吉原:そうですね。そのようなところが、結果としてそのお客さまに契約を長期で継続いただけている裏返しになっているかと思います。
事業ポートフォリオの見直し
吉原:エプコグループの経営戦略についてご説明します。
スライドでは、事業ポートフォリオの見直しをお示ししています。我々が手掛けているセグメントサービス3つのうち、今まで伸びてきたのは、住宅会社向けの設計サービスとメンテナンスサービスの2つです。
これからはここで培ったノウハウを活用し、3本目の再エネサービスに注力して成長していくというのが基本的なストーリーです。
我々は自分たちでサービスを作って育てていくべく、住宅会社向けの2サービスは、どちらかと言えばエプコと100パーセント子会社で事業を運営していました。
しかし、再エネサービスの特徴は、エプコ単独で展開しているとスピードが追いつかないため、さまざまな大手企業と合弁会社を作ったり、M&Aで会社を買収したりするなど、資本提携を活用しながら事業を展開していこうとしている点です。
現在、太陽光や蓄電池などの再生可能エネルギー分野は大きく成長しており、日本市場と海外市場で展開しています。
エプコグループにおける成長事業
吉原:再エネサービスとは、そもそもどのようなサービスなのかについてご説明します。再エネサービスの「再エネ」とは、「再エネ設備」を指します。
我々が注力している太陽光パネル、蓄電池、電気自動車の充電器の3つの設備が、現在は市場で大きな普及期を迎えているため、これらの設備に対するさまざまなサービスを行うのが、再エネサービスです。
中でも、それらの設備を設置するにあたって再エネ設備そのものを作ったり、設置するための設計をしたり、工事をしたり、つけた後のお問い合わせのメンテナンスを受け付けたりなど、さまざまなサービスがあります。その中で、我々は、日本市場でも海外市場でも、いろいろな会社と組んでサービスを展開しています。
現在、日本市場向けの設計サービス、工事サービス、メンテナンスサービスが特に大きく伸びているため、これらについてご説明します。
再エネサービス(日本市場)の市場環境
吉原:先ほど、再エネサービスの中で、我々は3つのアイテムに注目しているとお話ししましたが、それが太陽光発電設備、蓄電池、EV充電器です。この3つに共通しているのは、日本政府が2030年に向けて高い設置目標を掲げていることです。
太陽光発電や蓄電池は、すでに設置が進んでいるアイテムです。2020年度の実績として、すでに太陽光発電では1,730億円の設置工事市場があり、蓄電池では1,200億円の市場があります。
現在、シンクタンクでは2030年には約2倍から3倍の市場に増えると予測されています。国土交通省が2030年度には6割の新築戸建てに太陽光を設置することや、蓄電池でも2019年までの累積導入量の10倍を設置使用という目標を掲げています。
そのため、それに対してさまざまな国と地方自治体が補助金を出したり、東京都ではすでに太陽光の設置義務化するという条例を作っていたりと、現在は市場が大きく伸びています。
これは、EV充電器も同様です。電気自動車の充電器は、直近2023年では日本全国に3万口ほどしかありませんが、これを2030年には10倍となる30万口に増やそうと、ここにも補助金がついて設置工事市場が盛り上がっています。そのため、我々はここをターゲットにしようと進めています。
エプコグループ利益成長イメージ
吉原:エプコグループの利益成長イメージをスライドのグラフに表しています。横軸が時期、縦軸が経常利益ですが、2020年から2022年は、実は既存事業である住宅会社向けサービスの利益が減っていました。
青色の部分が減っているとおり、直近の日本の住宅着工は減少トレンドが続いています。これは、材料費や人件費なども上がっている中で住宅価格がどんどん上がり、特に戸建て住宅の着工が減っているためです。
我々の新築設計サービスは、お客さまが建てなくなれば、設計の依頼もダイレクトに減るため、難しい時期にありました。このようなこともあって、再エネ設備関連のサービスは住宅会社へのサービスではなく、どちらかと言うとエネルギー系企業へのサービスになります。
太陽光パネルを作っている会社や設置する会社などに向けた設計やメンテナンス、工事のサービスをやっていこうという部分が、現在は伸び始めています。
そのため、再エネサービスを日本市場および海外市場に注力して伸ばしていくことに加え、設計サービスやメンテナンスサービスでもデジタル技術を活用し、新たなサービスにバリューアップしようとしています。それらも関連すれば、中長期で成長が目指せるというのが我々の成長ストーリーです。
増井:再エネ市場にはさまざまな企業が取り組んでおり、成長戦略にされているところが多いです。御社にはどのような強みがあり、現在は他社と提携しているものの、将来的には独自でも行っていくのかなどについて、教えていただけますか?
吉原:再エネサービスに関して、現在、我々が最初に伸ばそうとしているのは工事の部分です。この後ご紹介しますが、TEPCOホームテックという会社を東京電力との合弁会社として作っています。
ご指摘のとおり、太陽光パネルや蓄電池を設置する工事会社というと、地域の工事業者や住宅会社系のリフォーム会社など、さまざまなライバルがいます。
そして、太陽光パネルなどの設置工事は、高齢者に無理やり売ってしまった、設置後にきちんと売電が出ない、設置があまくて屋根から落ちて近隣との問題になったなど、比較的トラブルが多い業界です。
そのような意味で、業者の安心感が求められる中、我々が現在も業績を伸ばしているのは、我々は東京電力ブランドの工事会社であり、お客さまにとっても安心感があることです。さらに、東京電力グループの会社であるため、工事の品質基準が厳しい点からもお客さまに選ばれることで、工事の仕事が増えてきています。
先ほど、設置時の設計やメンテナンスのお仕事を行っていると説明しましたが、エプコは長年住宅会社向けに行っているため、ノウハウがあります。例えば太陽光パネル設置するための設計のお仕事や、補助金申請するためのお仕事などの関連領域も取り込み、エプコのノウハウを活用しながら伸ばしています。
増井:TEPCOホームテックの中に御社のノウハウを入れているというかたちですか?
吉原:そのとおりです。TEPCOホームテックは、基本的には工事の請負会社のため、工事自体が売上利益の主体となります。
その工事に関連して設計やメンテナンスのお仕事が生まれるのですが、それはTEPCOホームテックからエプコに委託してもらうため、エプコの売上利益になります。
増井:では、その窓口をTEPCOホームテックが担うのですね。
吉原:そのとおりです。そこがお客さんのインターフェースとなります。
2024年12月期第3四半期連結業績ハイライト
吉原:ここまでは中長期の成長ストーリーを説明してきましたが、ここからは足元の損益について簡単にご紹介したいと思います。我々は12月決算のため、11月に2024年12月期第3四半期の決算発表を行っています。
第3四半期でお伝えしたい点は、大きく2つあります。1つは、全社売上高は前年同期比12.9パーセント増となった中、再エネサービス、メンテナンスサービス、設計サービス、いずれのサービスも増収を確保しています。先ほどご説明した再エネ設備関連サービスは、いずれも伸びている状況です。
もう1つは、一方で特に再エネサービスに注力すると伸びると言っているものの、3,800万円の赤字になっている点です。今回、全社では前年同期比14.0パーセント減の減益になっています。
しかし、ここは将来の成長に向けて先行投資しているため、一時的にこのようになっています。こちらについては、この後ご説明します。
事業ポートフォリオの変遷(住宅→エネルギー)
吉原:中長期の経営戦略の中で事業ポートフォリオを見直すことをお話ししましたが、売上の数字にもきちんと表れていることを、こちらのスライドでお示ししています。このグラフは、2020年から2024年の第3四半期の売上高を、時系列で並べたものです。
青色の部分が、いわゆる住宅会社向けに既存の設備設計やコールセンターを提供した売上です。ここでは、住宅着工がほぼ横ばいから少し減っている状況ですが、我々はこうなることがわかっていました。人口は減少し、住宅価格が上がるため、住宅着工の減少は我々がコントロールできることではありません。
そこで、我々はピンクの部分を伸ばしていこうと、太陽光や蓄電池、EV充電池関連など、エネルギー系企業の会社に対する売上を増やしていきました。こちらが伸びているため、全社できちんと売上が伸ばせているという状況です。
各セグメントにおいて、工事の仕事も、それに付随する設計やメンテナンスの仕事も伸びていることが、いずれも売上を伸ばせている要因となります。
2024/12 Q3 再エネサービスTEPCOホームテック①
吉原:先ほどご質問いただいた、工事の実施およびお客さまの窓口を担う重要な会社である、TEPCOホームテックにおける今期9ヶ月間の、第3四半期の実績についてご紹介したいと思います。
TEPCOホームテックという会社は、先ほどお伝えしたとおり東京電力との合弁会社です。東京電力が親会社で51パーセント出資しており、我々は49パーセント出資のため、会計上はいわゆる持分法適用会社という位置付けになります。
その結果、我々の連結売上や営業利益には数字が入らず、持分法投資損益という営業外損益に49パーセント分の利益が計上されます。そのため、TEPCOホームテックの売上高自体は連結には載らないものの、スライドで表示しているのは、TEPCOホームテックの単体の売上高です。
この9ヶ月間で、去年と比べて20.1パーセント伸びています。新築の物件中心に着実に伸びていますが、2023年は1億6,700万円だった利益は3,700万円に減っています。
この減益が全社で減益になった理由ですが、スライドにも「経営基盤整備の投資」と書いてあるとおり、先行投資を行ったことが要因になります。
再エネサービス TEPCOホームテック 経営基盤整備の投資
吉原:何をしたのかと言うと、実は、TEPCOホームテックは過去2年間、急激に売上が伸びています。ここ2年間は、脱炭素社会の実現のために太陽光や蓄電池の設置工事が非常に伸びており、売上もかなり伸びていました。
工事の元請会社として工事をする中で、管理している従業員や実際に工事を行う提携先の工事店、地域に散在している工事店の方々の稼働率が非常に上がっています。
大変忙しい状況のためにさまざまなトラブルが出るなど、社内の業務フローを整備しなくてはならないタイミングだったため、我々は、2024年は投資をして社内体制を整えることにしました。
そのため、スライド右側に記載のとおり、2023年は61名だった営業や技術人員を、1.5倍となる93名に増やしたり、施工研修施設を作って太陽光パネルや蓄電池の設置工事の品質を一定に保つための教育投資を増やしたりしました。
このような諸々の投資を継続費用でも一時費用でも使っているため、今期は減益とさせてくださいというのが、1年の計画になります。
ただし、継続費用や一時費用をこれだけかけるということは、当然ながら来年以降は売上が伸びると思っており、そのために現在はコストをかけています。
東京都の太陽光パネル設置義務化 ①背景
吉原:何が伸びるのかという点における1つのトピックとして、東京都の太陽光パネル設置義務化についてご紹介します。こちらは、東京都が打ち出している太陽光パネル設置義務化という施策です。
東京都も脱炭素社会を実現しようという際、どのようにCO2の排出量を減らすかというと、太陽光パネルを設置している建物の割合はまだ低いため、住宅に設置することでCO2の排出量を圧縮するポテンシャルが非常にあると考え、導入された制度です。
東京都の太陽光パネル設置義務化 ②市場規模
吉原:太陽光のパネル設置義務化というのは、個人に対して義務化されるのではなく、住宅を作る事業者に義務が設定されます。それも、一定の年間供給延床面積2万平米以上の、大手の住宅会社が作る住宅には義務化が適用になるというルールになっています。
都内であれば約50社に限られますが、現時点で住宅会社が建てた住宅の実績である年間4万6,000件のうち、半分程度はそれら50社が作っているため、約2万棟が設置対象となります。
それらに対し、スライド右のグラフのとおり、東京都が太陽光発電設備の導入量を掲げています。この東京都が掲げる目標どおり設置すると、太陽光パネルの設置工事市場は年間約280億円生まれることになります。
TEPCOホームテックの今期の年間売上見通しが90億円程度ですが、年間90億円の会社に対して280億円の市場が生まれるということは、我々にとっても非常に影響度が大きな話になります。
そのため、現在はここに対する営業活動に注力しており、この仕事が伸びることもある程度見えているため、2024年は先行して人を入れ、投資を行っているという状況です。
増井:TEPCOホームテックが工事を行い、かつメンテナンスなどの窓口も担当することになっているため、そこが住宅メーカーに営業をして受注するというかたちになりますか?
吉原:そうですね。そこが非常に大事な質問です。実際にパネルを設置するのは個人なので、基本的に、TEPCOホームテックの工事自体は家を建てる個人のお客さまとの契約です。
なぜ住宅事業者の話が出てくるかと言うと、リフォームの場合は個人から直接申し込みを受けて契約しますが、新築を建てる場合は必ずハウスメーカーがいらっしゃいます。
基本的に、太陽光パネルはオプション扱いの設備のため、住宅会社と個人との間で「付けますか? 付けませんか?」というやりとりがあるものです。
最近では、大手ハウスメーカーが標準商品の1つとして「TEPCOホームテックの『エネカリ』を設置しませんか?」と提案してくれているため、そのような意味では、我々のビジネスモデルは送客してもらうかたちとなっています。
先ほど、新築が伸びているとお伝えしたのは、このような住宅会社ルートで契約につながっているためです。
増井:つまり、かなり多くの大手メーカーとお付き合いがあるということですか?
吉原:そのとおりです。
再エネサービス TEPCOホームテック 損益回復
吉原:先ほど、今期はTEPCOホームテックで投資しているため減益であるとお話ししましたが、この投資には、一時的に発生しているものも多く含まれます。今年は、4月から7月の一時費用が特に多くありました。
一方で、一時費用の発生も収束してきているため、8月、9月の足元の利益は回復基調にあります。2025年度の業績を考える上では、先行投資の時期が終わり、2024年と2025年を比較すると、TEPCOホームテックはかなりの増益を見込める状況となっています。
通期業績予想に対する進捗状況
吉原:通期業績予想に対する進捗状況です。通期業績に対し、売上と営業利益はほぼ計画どおりで、営業利益はさらに超過している状況です。経常利益の進捗は若干未達、当期純利益は現状17パーセントの進捗ですが、我々は第4四半期で挽回できると考えています。
その要素は2つあります。1つは、経常利益に影響する点における、再エネサービスの海外市場です。中国で一緒に展開しているLESSO社という合弁会社があり、第4四半期の利益は計画超過を見込んでおり、足元の10月、11月もしっかりと数字ができています。
また、期初計画にも入れていますが、我々は政策保有株式を定期的に売却しています。次回は第4四半期で売却する予定であり、これら2つの要素で挽回を図る見通しです。
株主還元 ①配当方針
吉原:我々の株主還元について、配当の方針をご説明します。上場以来、配当を出し続けていますが、グラフにあるとおり減配は一度もなく、横ばいまたは増加を続けている点が特徴です。
基本的には配当性向50パーセント、純資産配当率(DOE)8パーセントという2つの指標を目安とし、安定的に出すことを重視しています。
配当性向で見ると200パーセントとなった年もありますが、そこからいきなり下がってしまうのではなく、安定性を重視して配当を行っています。
株主還元 ②抽選式株主優待制度の概要
吉原:特徴的な優待制度として、抽選式株主優待を行っています。毎年6月末と12月末の年2回、抽選で株主さま約5名ずつに、100万円相当の太陽光発電システム、もしくは蓄電池が当たるというものです。
株主還元 ③抽選式株主優待制度 抽選結果
吉原:抽選式株主優待は2022年に始まり、これまで5回実施しました。最初の頃はまだこの制度があまり認知されておらず、応募率も低かったのですが、回数を重ねていく内に応募者が増えてきました。
この制度が認知されたことで、株主数もどんどん増えていきました。2022年は4,000人程度でしたが、現在は7,000人ほどまで分母も増え、応募率が上がったため、応募者数も増えました。当初の当選者は3名でしたが、途中からは5名、現在は累計20名を超える方が当選されています。
100株7万円ほどから応募でき、「100万円のものが当たりました」という方も大勢いらっしゃいます。おもしろい制度ですので、興味のある方はぜひご参加いただければと思います。
質疑応答:抽選式株主優待当選者の使用者数について
増井:「抽選式株主優待は非常にユニークですが、これまで当選者の何パーセントが実際に使用されたのでしょうか?」というご質問です。
吉原:8割から9割の方が利用されています。使用されなかった1割の方については、どこに設置するかを選べる制度ではあるものの、そこまで深く考えず申し込んで「当たってしまった」といったケースです。
屋根の形状がよくなかったり、思ったように発電できない位置だったり、もしくはもともと設置できないエリアだったというケースも、少なからずあります。
荒井:設置する方角も関係しますか?
吉原:おっしゃるとおりです。そのようなケースに該当してしまうとお断りすることとなってしまいますが、基本的には大半のみなさまが設置されています。
質疑応答:優待を受けられる保有株式数を100株以上とした理由について
増井: 100株からというと、かなり思い切られた数字に感じます。そもそも100株からにされた理由はあるのでしょうか?
吉原:この制度を始めたきっかけとしては、再エネサービスに注力することになった際、「再生可能エネルギー銘柄の中で、我々の存在を多くの方にも知ってもらいたい」と考えたことから、「何かインパクトのある施策を実行しよう」と思い立ち、抽選式株主優待を始めました。
金額の小さな規模で実施している会社はありますが、100万円相当の機器が無料で当たるというのは、上場会社の優待では他にありません。
法律的には問題なかったため実施することにしたのですが、テレビ東京の『WBS』をはじめ、さまざまなテレビ番組でご紹介いただいたため、結果的には良い企画だったのではとないかと思います。
質疑応答:マンション居住者の太陽光機器の抽選について
荒井沙織氏(以下、荒井):「マンション居住者の方を対象とした太陽光機器の抽選は検討されていないのですか?」というご質問です。
吉原:実は、そのような声は数多く届いています。マンションの場合は難しいとされる中で、我々は対応策の1つとして「蓄電池でもOKです」としました。蓄電池はマンションでも設置できるため、最近では蓄電池を選ぶ方が増えています。
太陽光とマンションの組み合わせは、なかなか難しいところではありますが、ベランダなどへの部分的な設置はできないこともないため、引き続き検討していこうと考えています。
質疑応答:太陽光以外の再生可能エネルギーについて
荒井:「再生可能エネルギーとして、太陽光以外のエネルギーを扱う展望はありますか?」というご質問です。
吉原:我々のビジネスは家庭向けのため、屋根に付けるという意味では、太陽光が主軸となります。その他にもさまざまなものがありますが、例えば、風力発電はインフラとして大変な規模になります。
家庭向けということでは、我々としては太陽光、蓄電池、もしくは住宅のEV充電器などをメインに展開していこうと考えています。
質疑応答:中国に拠点を置いているメリットやチャイナリスクについて
荒井:「中国に拠点を置いているメリットを教えてください。チャイナリスクはないのでしょうか?」というご質問です。
吉原:設計業務の約7割は中国で行っており、それ自体は2000年代前半から行っています。我々と中国との関わりは長く、そもそもはコスト競争力のためという理由でした。
自社でCADソフトをシステム開発・カスタマイズしているため、CADソフトを使った設計業務は、特に資格・スキルのない一般の方でも図面を描くことができます。
当初は中国人スタッフの人件費が安かったため、まずは深センに進出し、その後は吉林に進出して設計業務を移管していきました。日本の他の地域の設計事務所に任せるよりも安く、大量に案件をさばくことができる点も、我々の競争力の1つでした。
荒井:2000年代前半と比べると、当時と今とでは環境が変わってきているかと思います。その変化について、特に大きなものをメリット、デメリットを交えて教えていただけますか?
吉原:スタート当初と比べると、スタッフの習熟度や経験値が高まりました。設計レベルは上がっているものの、中国経済が成長してきたために毎年約6パーセントも人件費が上がっており、昔と比べるとどうしても条件は悪くなっています。
また、円安が進行しているのも影響しています。先ほど「ポートフォリオを見直しします」「住宅向けの利益が減りました」とお伝えしたのは、2020年代から設計コストが上がる一方で、住宅着工が減るというダブルパンチが背景にあります。
荒井:国内に設計の拠点を増やしていく、もしくは人員を増やしていくというお考えはないのでしょうか?
吉原:それよりも、世の中は「DXだ」ということで、我々もシステムを使った省力化投資を実施しています。
設計業務では、住宅会社から依頼を受けてCADソフトで作図した後、上位者が問題ないかを検図しています。そのような諸々の業務をシステムで自動化し、なるべく人の手を介さず設計できる仕組み作りへの投資に注力しています。
質疑応答:太陽光発電設備のリサイクル体制について
荒井:「太陽光発電設備について質問です。耐用年数に達した機器は回収し、リサイクルできる体制になっていますか?」というご質問です。
吉原:現在、提供している「エネカリ」という仕組みは、売り切りというよりは利用のビジネスです。10年から15年間利用でき、月々5,000円から1万円の利用料を払っていただくタイプのビジネスです。
したがって、10年から15年経てば製品の所有権が先方に移るため、その後のメンテナンスは基本的に各個人で行っていただくことになります。
ただ、「太陽光パネルを付けた後のメンテナンスや廃棄はどうなるのか?」というテーマが社会問題になっていることも事実です。我々は2017年に作ったため、廃棄や回収時期はまだ迎えていませんが、今後その時期が訪れた際、適切に対応する体制を準備しているところです。
質疑応答:これまでに手掛けている太陽光パネルの設置戸数について
荒井:「太陽光パネルについて、御社が手掛けられている戸数はどれくらいですか?」というご質問です。
吉原: TEPCOホームテックで手掛けている戸数は、年間で5,000棟いくかいかないかという程度です。
荒井:かなり多い数字ですよね?
吉原:そのとおりです。太陽光パネルを設置する工事自体は、地域に散在するさまざまな工事業者が担いますが、その中では大きな存在だと思います。
吉原氏からのご挨拶
吉原:我々エプコは、脱炭素社会の実現に向け、再エネサービスに注力していこうということで、現在、まさに利益拡大の転換期にあります。
それを踏まえて、安定配当をしっかりと続けていきます。また、おもしろい優待制度もありますので、興味のある方はぜひ投資していただければと思います。
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