30日の米株式市場でダウ平均は37.57ドル高(+0.10%)と4日続伸、ナスダック総合指数は+0.54%と4日続伸。8月ADP全米雇用リポートの雇用者数の伸びが予想以上に減速したほか、4-6月期国内総生産(GDP)改定値も予想外に下方修正されたため、利上げ終了期待を背景に堅調に推移した。ただ、週末に発表される雇用統計を前に様子見ムードも強かった。米株高を受けて日経平均は27.56円高からスタート。
序盤からじわじわと上げ幅を広げ、前場中ごろには32534.85円(201.39円高)まで上昇した。一方、心理的な節目の32500円水準では売り買いが拮抗し、その後は同水準を挟んだ一進一退が続いた。中国の8月製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.7と前月(49.3)から上昇し、市場予想(49.1)も上回ったが、市場への影響は限定的だった。
個別では、レクサスの生産台数計画に関する報道を手掛かりにトヨタ自<7203>が買われ、豊田合成<7282>、トヨタ紡織<3116>のほか、SUBARU<7270>、スズキ<7269>、ホンダ<7267>なども大きく上昇。東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>、ソシオネクスト<6526>の半導体も堅調。小田急電鉄<9007>、JR西日本<9021>、東武鉄道<
9001>の陸運、ツナグGHD<6551>、コシダカHD<2157>、OLC<4661>のサービス、ハイデイ日高<7611>、F&LC<3563>、物語コーポ<3097>の小売など、内需系銘柄で上昇が目立つ。カルビー<2229>、牧野フライス<6135>、サワイGHD<4887>はレーティング格上げが好感された。いちご<2337>は自社株買いが、テラスカイ<3915>は米セールスフォースの好決算が手掛かり材料とされた。東証スタンダードでは株主優待の拡充を発表したプラザHD<7502>がストップ高買い気配のまま終えている。
一方、キーエンス<6861>、ファナック<6954>、SMC<6273>のFA関連のほか、ソフトバンクG<9984>、ディスコ<6146>、芝浦メカ<6590>、イビデン<4062>のハイテクの一角、良品計画<7453>、しまむら<8227>の小売りの一角が軟調。ほか、松井証券<8628>、丸三証券<8613>の証券・商品先物取引、INPEX<1605>、石油資源開発<1662>の鉱業、三井住友トラスト<8309>、みずほFG<8411>の銀行などが冴えない。住友ファーマ<4506>は証券会社の目標株価引き下げが嫌気されて大きく下落。工場でボイラー事故が発生した三菱製紙<3864>は大幅安となっている。
セクターでは輸送用機器、陸運、サービスが上昇率上位に並んでいる一方、証券・商品先物取引、倉庫・運輸、鉱業、銀行の4業種のみが下落している。東証プライム市場の値上がり銘柄が全体の69%、対して値下がり銘柄は26%となっている。
株式市場について明るい材料がまた一つ増えた。30日に発表された米8月ADP全米雇用リポートの民間雇用者数は17万7000人増と、市場予想の19万5000人増を下回った。前月7分は37万1000人増と、従来値の32万4000人増から上方修正されたが、市場予想に対する下振れに加えて、前月からの大幅な鈍化が確認されたことはポジティブだ。また、同調査によると、同じ職にとどまった労働者の賃金は前年同月比で5.9%増と、2021年以来の低い伸びだったという。
29日に米労働省が発表した雇用動態調査(JOLTS)の求人件数も予想を下回り、自発的な離職件数は21年2月以来の低水準だった。逼迫していた米労働市場の緩和が連日にわたってデータで実際に確認できたことは、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げサイクル終了の期待を高めることにつながり、相場の支援材料になっている。
29日に25日線および50日線の移動平均線を上回ったナスダック指数とS&P500種株価指数が30日も同線上で推移したことで、上値抵抗線の突破がダマしに終わった可能性は低下した。東証株価指数(TOPIX)は主要な移動平均線を全て上回った位置で推移しており、8月1日に付けたバブル崩壊後の高値更新を窺う水準にまで上昇してきている。
一方、日経平均は引き続き75日線が上値抵抗線として作用しており、前日の後場の失速によって戻り待ちの売り圧力が確認された32500円水準での攻防が続いている。ただ、日経平均も前日の当欄で指摘した通り、米長期金利の低下を背景としたハイテク株高が続いていることで、トレンド転換が近づいている印象を受ける。
今晩の米個人消費支出(PCE)コアデフレーター、そして明日の米雇用統計で、米インフレ鈍化と米労働市場の逼迫緩和が改めて確認されれば、米長期金利の一段の低下によるハイテク株高を背景に、日経平均の75日線突破も見られそうだ。
他方、世界経済の景気動向については依然として先行き不透明感が強い。このため、上記のポジティブシナリオが実現された場合には、景気や為替との連動性が高い外需系のハイテク株などよりは、これらの要因との連動性が小さい内需系のグロース株の方が買い安心感が強まってくると考える。
(仲村幸浩)
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