3. 中期成長イメージ
東京オリンピック・パラリンピックを背景にした受注環境の変化や米中貿易摩擦など世界情勢への懸念に、コロナという新たな脅威が加わった。しかも、人口動態の変化から中長期的に建設需要の減少を想定せざるを得ず、基礎工事業界において競争激化と淘汰が進むと予測されている。一方で、鉄道関連や2025年大阪・関西万博、各都市が名乗りを上げるIR(統合リゾート)、東京の都心再開発、高速道路や鉄道などインフラの大掛かりなリニューアルなど案件はたくさんある。頻発する自然災害に関しては、復興需要のみならず防災需要も増えそうだ。こうした案件を着実に取り込むためには、中期経営計画での成果をバネに、施工品質の向上・高付加価値化、事業領域の拡大へ向かって積極経営を継続する必要がありそうだ。
なかでもICT技術を利用した施工品質の向上と高付加価値化は、競争激化による工事粗利率の低下を回避する上で不可欠と思われる。また、M&Aや提携を駆使して、新規分野や新規顧客、環境を睨んだ新工法などへとドメインを広げることで、基礎工事のシェアを維持・拡大したい。もちろん海外での事業展開も加速したい。そうしたことを一足飛びに実現することは難しいが、管理システムのブラッシュアップ・新規開発は徐々に進行、北陸新幹線の実績は横展開が始まりつつあり、杭抜工事やコンクリート杭施工へと事業領域が拡大、成果を着実に成長に結び付けている。さらに場所打ち杭工事や海上施工など、同社が手を付けていない事業領域を持つ企業をM&Aできれば、成長の余地は一層広がると思われる。積極経営によって、いち早くコロナの影響から脱し、当初想定していた成長軌道に回帰していくことを期待したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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