明日の株式相場に向けて=円高をテーマに買える中小型材料株
きょう(23日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比4円安の3万9594円と5日続落。全体相場はようやく下げ止まった感はあるが、欧米株高を引き継いだ割には強気になり切れない疑心暗鬼の値運びで、結局わずかながらマイナス圏で着地した。
前日は欧州時間からリスクオンの流れに変わっている。ドイツ、フランス、イタリアなど主要株価指数がいずれも1%を超える上昇で、欧州の強調地合いを横目に取引を開始した米国株市場も半導体関連などハイテクを中心に広範囲に買い戻しが利いた。そのなか、半導体銘柄で構成されるフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)は4%高と派手なリバウンドを演じた。特に生成AIの象徴株に位置付けられるエヌビディア<NVDA>や半導体製造装置最大手のアプライド・マテリアルズ<AMAT>の上げ足が顕著であり、これを受けてきょうの東京市場でも、売買代金上位の半導体関連株が買い戻しラッシュとなることが期待された。しかし、いざフタを開けてみると、寄り付きこそ一斉にカイ気配スタートと気を吐いたが、その後は値を消す銘柄が相次ぐなど精彩を欠いた。半導体セクターは“スコーピオン”の毒に当たったレーザーテック<6920.T>の崩れ足が強烈だ。しかし、それ以外の主力銘柄についても押し目買いから戻り売りにコンセンサスが変わりつつある。前日に個人投資家が信用枠を目いっぱい活用して買い向かったディスコ<6146.T>が朝高後に漸次水準を切り下げたのも、短期で利益を回収しておきたい投資家心理を投影する格好となった。
日銀への利上げ催促ともとれる自民党幹部の発言などが重荷となったという見方もあるが、それは為替が1ドル=156円台前半まで円高に振れた理由にこじつけられた感もある。現実問題、7月30~31日の日銀金融政策決定会合で追加利上げが実施されるケースは限りなく低いと思われる。ただ、9月20日前後に自民党総裁選が入る可能性が取り沙汰されるなか、9月19~20日の日銀金融政策決定会合で日銀が動きにくいという思惑が伏線となり、7月前倒しという思惑が独り歩きを始めた印象を受ける。
もっとも、不安定な地合いでも個別株の物色意欲が失われているわけではない。きょうはプライム市場の約7割の銘柄が上昇した。そのなか、足もとの円高をプラス方向に解釈できる銘柄に投資資金が誘導されている。円高メリットで象徴的に買われやすい銘柄としてはニトリホールディングス<9843.T>が挙げられるが、時価総額2兆円を超える大型株ゆえ、値動きはそれほど軽くない。短期志向の個人投資家にすれば、足の軽い中小型の円高メリット株で値幅が取れれば、それに越したことはないというのが本音であろう。
独立系の食品専門商社であるラクト・ジャパン<3139.T>は乳原料などの輸入に際して為替が円高方向に振れることで収益採算が高まる。24年11月期業績予想は最終利益段階で前期比47%増の30億円と大幅増益を見込んでいる。時価予想PERも10倍弱と割安感が強い。7月16日にマドを開けての大幅高で3200円の年初来高値をつけたが、その後は陰線が続き今のところ上値が重い。しかし、3000円を割り込んだ時価水準は、増額修正期待を背景に買い場と判断される。
また、材料株素地に飛んでいる銘柄として三菱製紙<3864.T>が面白い存在といえる。紙パ業界は円高メリット業種として有名である。そのなか、同社は王子HD系で印刷用紙や情報用紙などコート紙主体の製紙会社で、水処理膜などの機能材料でも実力を発揮する。PER4倍前後、PBR0.3倍台という投資指標面からは割安圏放置が際立つ。25年3月期営業利益は前期比約5割増の80億を計画。年間配当は10円を計画するが増配の可能性も指摘されている。このほか、時価総額7000億円の中型株では、靴専門店として業界最大手に位置するエービーシー・マート<2670.T>も、好業績の輸入関連企業に分類され、足もとで進む円高は追い風となる。買いの好機と見ておきたい。
あすのスケジュールでは、6月の全国スーパー売上高など。また、債券市場では40年物国債の入札が予定される。海外では7月の仏購買担当者景気指数(PMI)速報値、7月の独PMI速報値、7月のユーロ圏PMI速報値、7月の英PMI速報値が発表されるほか、カナダ中銀による政策金利も公表。米国では6月の米新築住宅販売件数、S&Pグローバル調査による7月のPMI速報値など。また、米債券市場では5年物国債の入札も行われる。このほか、ボウマンFRB理事による講演も行われる見通し。(銀)
出所:MINKABU PRESS
前日は欧州時間からリスクオンの流れに変わっている。ドイツ、フランス、イタリアなど主要株価指数がいずれも1%を超える上昇で、欧州の強調地合いを横目に取引を開始した米国株市場も半導体関連などハイテクを中心に広範囲に買い戻しが利いた。そのなか、半導体銘柄で構成されるフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)は4%高と派手なリバウンドを演じた。特に生成AIの象徴株に位置付けられるエヌビディア<NVDA>や半導体製造装置最大手のアプライド・マテリアルズ<AMAT>の上げ足が顕著であり、これを受けてきょうの東京市場でも、売買代金上位の半導体関連株が買い戻しラッシュとなることが期待された。しかし、いざフタを開けてみると、寄り付きこそ一斉にカイ気配スタートと気を吐いたが、その後は値を消す銘柄が相次ぐなど精彩を欠いた。半導体セクターは“スコーピオン”の毒に当たったレーザーテック<6920.T>の崩れ足が強烈だ。しかし、それ以外の主力銘柄についても押し目買いから戻り売りにコンセンサスが変わりつつある。前日に個人投資家が信用枠を目いっぱい活用して買い向かったディスコ<6146.T>が朝高後に漸次水準を切り下げたのも、短期で利益を回収しておきたい投資家心理を投影する格好となった。
日銀への利上げ催促ともとれる自民党幹部の発言などが重荷となったという見方もあるが、それは為替が1ドル=156円台前半まで円高に振れた理由にこじつけられた感もある。現実問題、7月30~31日の日銀金融政策決定会合で追加利上げが実施されるケースは限りなく低いと思われる。ただ、9月20日前後に自民党総裁選が入る可能性が取り沙汰されるなか、9月19~20日の日銀金融政策決定会合で日銀が動きにくいという思惑が伏線となり、7月前倒しという思惑が独り歩きを始めた印象を受ける。
もっとも、不安定な地合いでも個別株の物色意欲が失われているわけではない。きょうはプライム市場の約7割の銘柄が上昇した。そのなか、足もとの円高をプラス方向に解釈できる銘柄に投資資金が誘導されている。円高メリットで象徴的に買われやすい銘柄としてはニトリホールディングス<9843.T>が挙げられるが、時価総額2兆円を超える大型株ゆえ、値動きはそれほど軽くない。短期志向の個人投資家にすれば、足の軽い中小型の円高メリット株で値幅が取れれば、それに越したことはないというのが本音であろう。
独立系の食品専門商社であるラクト・ジャパン<3139.T>は乳原料などの輸入に際して為替が円高方向に振れることで収益採算が高まる。24年11月期業績予想は最終利益段階で前期比47%増の30億円と大幅増益を見込んでいる。時価予想PERも10倍弱と割安感が強い。7月16日にマドを開けての大幅高で3200円の年初来高値をつけたが、その後は陰線が続き今のところ上値が重い。しかし、3000円を割り込んだ時価水準は、増額修正期待を背景に買い場と判断される。
また、材料株素地に飛んでいる銘柄として三菱製紙<3864.T>が面白い存在といえる。紙パ業界は円高メリット業種として有名である。そのなか、同社は王子HD系で印刷用紙や情報用紙などコート紙主体の製紙会社で、水処理膜などの機能材料でも実力を発揮する。PER4倍前後、PBR0.3倍台という投資指標面からは割安圏放置が際立つ。25年3月期営業利益は前期比約5割増の80億を計画。年間配当は10円を計画するが増配の可能性も指摘されている。このほか、時価総額7000億円の中型株では、靴専門店として業界最大手に位置するエービーシー・マート<2670.T>も、好業績の輸入関連企業に分類され、足もとで進む円高は追い風となる。買いの好機と見ておきたい。
あすのスケジュールでは、6月の全国スーパー売上高など。また、債券市場では40年物国債の入札が予定される。海外では7月の仏購買担当者景気指数(PMI)速報値、7月の独PMI速報値、7月のユーロ圏PMI速報値、7月の英PMI速報値が発表されるほか、カナダ中銀による政策金利も公表。米国では6月の米新築住宅販売件数、S&Pグローバル調査による7月のPMI速報値など。また、米債券市場では5年物国債の入札も行われる。このほか、ボウマンFRB理事による講演も行われる見通し。(銀)
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