「買い先行も、上方には目指すべき窓がない」
日経平均は昨日大引けにかけて失速した。「日銀金融緩和が不十分」との見方からである。市場は「あわよくば20兆円の緩和」を期待していただけに、「11兆円」では不満があったようだ。
日経平均の日足チャートでは、上影陰線が出現。上値の重さが明確になっており、“低いところ”である下方の窓を埋めた。
「窓理論」では下方の窓埋め(法則2)による買いサインが出ているが、恐らく軸はすでに下向きに傾いているのだろう。この買いサインがダマシとなる公算が大きく、引き続き下値を模索する動きになるに違いない。短期的には下方の4つの窓を連鎖的に埋める可能性が高く、最大で4段目の窓下限(8448.54円)までの下落がありそうだ。
そして市場の注目ポイントは、日銀決定会合から米雇用統計へと移りつつある。10月の非農業部門雇用者数は12.5万人増となる見込みであり、この数値を巡って色々な思惑が錯綜しそうだ。
その一つは大統領選を巡る思惑だ。前回9月の雇用統計では失業率が7.8%に低下し、一部のロムニー支持者が「オバマ再選を狙った意図的な操作」とイチャモンをつけた。これが事実かどうかは確認のしようがないが、ロムニーサイドには「2ヵ月連続で不正が行われるのではないか」という根強い警戒感がある。ハリケーンの影響で発表が遅れる可能性があった雇用統計も、どうやら予定通り発表される見通し。「良い数値を公表できるから、強引に日程通りに発表するに違いない」と見ることもでき、その辺が思惑視される可能性があるのだ。
また、米雇用統計の結果は、FRBの政策にも影響を与える。なぜならば、FRBが先日QE3(量的金融緩和第3弾)を決定したのも、雇用の回復が目標となっているからである。もちろんこんなものは「建前」であるのだが、雇用統計をみてQE3の継続が判断されるとの見方がもっぱらだ。良い雇用統計はQE3中止を示唆することになり、その辺も思惑視される可能性が高いのだ。「良い雇用統計=株高」と一筋縄にいかないところに、この難しさがある。
だが、このような経済指標の良し悪しは、石原前都知事ではないが「枝葉末節」の話だ。そもそも経済統計なんていうものを信じること自体が間違いであり、そこには数々の罠が仕掛けられている。それは中国を見れば明らかであり、当局が十分に操作可能なのだ。だから、バックミラーである経済統計ばかり見ていると、正面衝突を起こしかねない。結果的に将来の見通しを誤ることになってしまうのだ。大切なのは、「なぜこの指標がこの数値で発表されるのか」という観点。常に第三者の立場で指標を捉える必要があり、決して経済指標を鵜呑みにしてはいけないのだ。経済指標をうまく利用して儲けることが重要ということである。