「NY市場取引停止、日本株にヘッジ売りリスクも」
後場に株価が下落した要因は、ホンダ(7267)が前倒しで決算発表を行ったこと。会社側のミスにより早めに決算データをホームページにアップしてしまったため、東証と相談して、お昼頃に正式に発表した。それが業績下方修正だったものだから、ちょっとしたサプライズ売りを誘ったわけだ。結局、ホンダ株は4.65%の下落。これが投資家心理を悪化させた。
また、今晩のNY株式市場はハリケーン・サンディの影響で全面取引停止。いわゆる「売れないリスク」が意識され、これも株価の下落要因となった。
ただ、下落幅が限定的だったのは、相変わらず明日の日銀金融政策決定会合での「追加金融緩和期待」が根強いこと。資産買入基金の増額は「最低でも10兆円」と期待されており、それが相場の下支え役となっている。軸は依然として上向きであり、上昇しやすい状態を維持しているのだ。
それでも明日の午後には日銀の金融政策が発表される。市場の期待以下だった場合には、相場は容赦なく売り崩されることになるだろう。ゴールドマンなど外資系証券の一部は大量に先物買いを積み上げている。それを一気に吐き出すことも考えられ、大幅な株価下落には注意しなければならないのだ。奇しくもNY株式市場が休場となるこの一両日中、世界同時株安のリスクヘッジを日本の先物売りで行う可能性もあり、外資系証券の行動には警戒しなければならない。
そして本日、与党・民主党が逆風に晒されるなか、第181臨時国会が召集された。問責を受けた野田首相は参議院において所信表明演説をしないという“異常国会”となったが、マーケット参加者が最も注目しているのは特例公債法案の行方である。野田首相は衆院の演説で、この法案について野党の協力を求めた。
現時点で自民党など野党は「政争の具にしない」という姿勢を見せており、この法案を巡って相場が乱高下することは避けられそうだ。ただ、野党各党は協力したからには「見返り」を求めるはずであり、衆院解散のタイミングはかなり早まるだろう。それが「政界再編」というリスクを高め、株価にはマイナスに影響を及ぼすに違いない。特に自民党中心の政権になった場合には、一部の銘柄で極端にリスクが高まることになる。それは東京電力(9501)だ。
東京電力は民主党政権下で保護されてきた銘柄であり、この安全弁が外れる可能性があるのだ。もし、新政権が「破綻処理」を選択した場合、株価がゼロになることだってあり得る。JAL型の再建シナリオが選ばれることになり、株主など利害関係者がとりあえず責任をとるのである。野田首相が「解散・総選挙」を選択した場合、数々の“亡霊”が市場を彷徨うことになり、政権交代というイベントに対して、投資家は細心の注意を払うべきだろう。「新政権に期待して株買い」――そんな単純な話ではないはずだ。