明日の株式相場に向けて=「AI用半導体」過剰投資の先にある風景
週明け3日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比1052円安の3万8520円と急反落。きょうから名実ともに2月相場入りとなる。前週末の米国株市場でNYダウが330ドルあまりの下落をみせており、風向きが良いとは言えない環境下での月替わりとなったが、米株市場がクローズした時点で東京市場がここまで下がるとは誰も予期していなかったはずである。朝方に米株価指数先物に追随する形で日経225先物が取引開始前に1000円安まで売り込まれ、狼狽売り的な投げを誘発する形でスタートした。
先物を絡めたAIアルゴリズムの売りプログラム作動でリスクオフ一色に染められた格好だが、そのスイッチを入れたのはトランプ米大統領がカナダ、メキシコの輸入全製品に25%の関税を、中国には10%の追加関税を課すことを命じたという報道だ。元来、この関税強化の動きは事前に再三再四報じられてきたことで、サプライズ要素に乏しいのだが、「市場ではトランプ氏が大統領就任初日に関税発動を見送った経緯もあったことから、今回も何かしらの妥協点を期待していた部分もあった。その虚を突かれる形で売り仕掛けが入った」(中堅証券ストラテジスト)とする。
実際、関税発動となれば、相手国も黙ってはいない。事実、カナダは即刻25%の報復関税をかける方針を表明した。この関税合戦は米国株市場には間違いなく売り材料となる。インフレ再燃への警戒から長期金利の上昇が止まらなくなれば、株式益回りとの比較で株式の相対的な割高感が意識され、AIによる売り仕掛けの餌食となりやすい。
もっとも、この“トランプ関税”は盤石な売り材料ということでもない。どこかで落としどころを探す、トランプ米大統領ならではのディールとして使われている可能性があるからだ。事実、きょうはトランプ氏がカナダのトルドー首相やメキシコのシェインバウム大統領と関税を巡り意見交換すると報じられ、日経平均は途中下げ渋る場面があった。鶏が先か卵が先かではないが、関税絡みの材料は、AIアルゴリズムによる巻き戻しが入れば、それに合わせて自然と相場にポジティブ方向な報道が出るとしたもので、「株式市場にとってトランプ関税イコール総売りという単純なものではない」(前出のストラテジスト)とする。
しかし、相場の華である半導体セクター、特にAI用半導体関連株については構造的な部分でゲームチェンジが起こっており、ここから上値追いトレンドが復活するためは、何かそれを覆すような材料が出ない限り難しい。ディープシークによる低コスト・高性能の新AIモデルの優秀性はエヌビディアでさえ認めるところであり、オープンAIのデータを不正入手して作ったとしても、それは米国側が制裁や規制をかけたからといってどうなるものでもない。ディープシークの開発したモデルは、オープンソースとして既に野に放たれた後である。AI開発投資のデフレ化は、先端半導体の全否定とはならないが、確実に部分否定となり得る。そしてその部分否定の投資分だけで相当な仮需の剥落となるはずである。
繰り返しになるがAIバブルの崩壊ではない。むしろAIの進化に拍車をかける。オープンAIのサム・アルトマンCEOは、チャットGPTのAIモデルについて、無償公開を検討する考えを述べたことが伝わっており、これが実現すればディープシークの上を行くモデルの開発競争の火ぶたが切られることになりそうだ。東京市場でもAI関連株の見直しが中期タームで進む可能性がある。そのなか、足もとで強い動きを示している銘柄としてはELEMENTS<5246.T>やシステムインテグレータ<3826.T>があり、中期視野で押し目買い対象として注目したい。
あすのスケジュールでは、1月のマネタリーベースが朝方取引開始前に発表されるほか、午前中に10年物国債の入札が行われる。午後取引時間中に1月の財政資金対民間収支が開示される。海外では12月の米雇用動態調査(JOLTS)や12月の米製造業受注などに耳目が集まる。また、ジェファーソンFRB副議長が講演を行う予定で、その内容が注目される。中国株市場は休場。国内主要企業の決算発表では、三越伊勢丹ホールディングス<3099.T>、三菱重工業<7011.T>、任天堂<7974.T>、三井物産<8031.T>、三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306.T>、日本航空<9201.T>などが予定される。海外主要企業ではアルファベット<GOOGL>、アドバンスト・マイクロ・デバイシズ<AMD>、ファイザー<PFE>、メルク<MRK>などの決算発表に関心が高い。(銀)
出所:MINKABU PRESS
先物を絡めたAIアルゴリズムの売りプログラム作動でリスクオフ一色に染められた格好だが、そのスイッチを入れたのはトランプ米大統領がカナダ、メキシコの輸入全製品に25%の関税を、中国には10%の追加関税を課すことを命じたという報道だ。元来、この関税強化の動きは事前に再三再四報じられてきたことで、サプライズ要素に乏しいのだが、「市場ではトランプ氏が大統領就任初日に関税発動を見送った経緯もあったことから、今回も何かしらの妥協点を期待していた部分もあった。その虚を突かれる形で売り仕掛けが入った」(中堅証券ストラテジスト)とする。
実際、関税発動となれば、相手国も黙ってはいない。事実、カナダは即刻25%の報復関税をかける方針を表明した。この関税合戦は米国株市場には間違いなく売り材料となる。インフレ再燃への警戒から長期金利の上昇が止まらなくなれば、株式益回りとの比較で株式の相対的な割高感が意識され、AIによる売り仕掛けの餌食となりやすい。
もっとも、この“トランプ関税”は盤石な売り材料ということでもない。どこかで落としどころを探す、トランプ米大統領ならではのディールとして使われている可能性があるからだ。事実、きょうはトランプ氏がカナダのトルドー首相やメキシコのシェインバウム大統領と関税を巡り意見交換すると報じられ、日経平均は途中下げ渋る場面があった。鶏が先か卵が先かではないが、関税絡みの材料は、AIアルゴリズムによる巻き戻しが入れば、それに合わせて自然と相場にポジティブ方向な報道が出るとしたもので、「株式市場にとってトランプ関税イコール総売りという単純なものではない」(前出のストラテジスト)とする。
しかし、相場の華である半導体セクター、特にAI用半導体関連株については構造的な部分でゲームチェンジが起こっており、ここから上値追いトレンドが復活するためは、何かそれを覆すような材料が出ない限り難しい。ディープシークによる低コスト・高性能の新AIモデルの優秀性はエヌビディアでさえ認めるところであり、オープンAIのデータを不正入手して作ったとしても、それは米国側が制裁や規制をかけたからといってどうなるものでもない。ディープシークの開発したモデルは、オープンソースとして既に野に放たれた後である。AI開発投資のデフレ化は、先端半導体の全否定とはならないが、確実に部分否定となり得る。そしてその部分否定の投資分だけで相当な仮需の剥落となるはずである。
繰り返しになるがAIバブルの崩壊ではない。むしろAIの進化に拍車をかける。オープンAIのサム・アルトマンCEOは、チャットGPTのAIモデルについて、無償公開を検討する考えを述べたことが伝わっており、これが実現すればディープシークの上を行くモデルの開発競争の火ぶたが切られることになりそうだ。東京市場でもAI関連株の見直しが中期タームで進む可能性がある。そのなか、足もとで強い動きを示している銘柄としてはELEMENTS<5246.T>やシステムインテグレータ<3826.T>があり、中期視野で押し目買い対象として注目したい。
あすのスケジュールでは、1月のマネタリーベースが朝方取引開始前に発表されるほか、午前中に10年物国債の入札が行われる。午後取引時間中に1月の財政資金対民間収支が開示される。海外では12月の米雇用動態調査(JOLTS)や12月の米製造業受注などに耳目が集まる。また、ジェファーソンFRB副議長が講演を行う予定で、その内容が注目される。中国株市場は休場。国内主要企業の決算発表では、三越伊勢丹ホールディングス<3099.T>、三菱重工業<7011.T>、任天堂<7974.T>、三井物産<8031.T>、三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306.T>、日本航空<9201.T>などが予定される。海外主要企業ではアルファベット<GOOGL>、アドバンスト・マイクロ・デバイシズ<AMD>、ファイザー<PFE>、メルク<MRK>などの決算発表に関心が高い。(銀)
出所:MINKABU PRESS
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