―情報発信力を生かした観光客誘致で驚きの好実績も、自治体とのタイアップ拡大―
今や一般社会での市民権を得た感のあるYouTuber(ユーチューバー)やVTuber(Vチューバー)だが、世代によっては、「ネット炎上」での話題で、世間をお騒がせする人たちというネガティブな印象を持っている人もまだ多いかもしれない。しかし、彼らの持つ影響力はそういったネガティブなイメージを持つ多くの人の想像を大きく超えてきている。魅力発信の担い手としてその力を遺憾なく発揮し、社会に大きく貢献している。Vチューバーに関連する最新動向を探った。
●ライブ配信アプリの登場で「Vライバー」の呼称も
Vチューバーは、主に3Dコンピューターグラフィックス(CG)で作成されたバーチャル(架空)のキャラクターを演じるユーチューバーのことを指す。近年は「REALITY」や「IRIAM」といったライブ配信アプリが登場したことで、「Vライバー」といった呼称を目にすることも増えた。ただ、本質的にはユーチューバーと同様で、姿はCGで作られたキャラクターだが、その裏側にはリアルな人間が存在し、モーションキャプチャーと呼ばれる現実の人物や物体の動きをデジタル化する技術を用いて演者の動作をそのまま映像に反映させ、キャラクターを動かしている。
それまであまり馴染みがなかった投資家に、本格的に彼らの存在を認知させたのは、2022年6月に、Vチューバーグループ「にじさんじ」の運営を手掛けるANYCOLOR <5032> [東証P]が新規上場したことだろう。その後、23年3月にはVチューバープロダクション運営のカバー <5253> [東証G]がIPOを行った。しかし、話題を集めたVチューバーも株式市場の材料としては、ここ最近はやや影が薄くなっていた感も否めない。
●地域の魅力発信役として存在感、「バーチャル観光大使」にも
ただし、Vチューバーは巧みな話術や企画力、愛嬌を通じて多くの視聴者を楽しませているだけでなく、地域の魅力発信役としても大きく活躍していることは認識しておきたい。埼玉県は、21年12月に「埼玉バーチャル観光大使」として「春日部つくし」氏を任命した。その影響力の大きさから毎年度任期の延長をしているから驚きだ。東京都も23年に16人を新たに観光大使に任命したが、その中に「がうる・ぐら」氏、「さくらみこ」氏、「森カリオペ」氏の3人のVチューバーが含まれている。
また、ユーチューバーの事例にはなるが、さまざまなチャレンジ、実験、いたずら動画で大人気のチャンネル登録者数790万人を誇る「すしらーめん《りく》」氏は、廃校となった学校を購入し、クラウドファンディングで修繕費用を募った。その結果、23年12月28日から24年3月3日という短期間で支援者数は1万5000人を超え、支援総額も1億円超と驚異の結果をたたき出した。そうした強い影響力を持つ彼らに今や企業だけでなく、自治体が期待するのも無理からぬ話だろう。
●「志摩スペイン村」のイベント大成功でも話題集める
もう一つ直近の事例を紹介すると、三重県志摩市のテーマパーク「志摩スペイン村」の人気が高まっていることをご存じだろうか。同パークでは、23年2~4月にVチューバー「周央サンゴ」氏とコラボイベントを実施し、イベント期間を含む2か月間の来園者数が前年同期の2倍近くになる大成功を収めた。この反響を受け、周央サンゴ氏、そして同氏と親交が深いVチューバー「壱百満天原サロメ」氏とのコラボイベントを今年2月から開催中だ。このように、Vチューバーは、リアルとバーチャルの橋渡し役として、活躍の幅を広げ続けているのだ。その影響力は、観光地の人流を一変させるほどだ。以下では、Vチューバー事業を運営している企業やプロダクションなどに出資している企業を中心に取り上げた。
●ゲオHD、アカツキ、エムアップ、エイベックスなど注目
ANYCOLOR~Vチューバー/バーチャルライバープロジェクト「にじさんじプロジェクト」をはじめ、英語を用いて活動するVチューバープロジェクト「NIJISANJI EN」、中国Vチューバーグループ「VirtuaReal」を運営する。Vチューバーのユニット展開や、にじさんじの大規模施策が成長を牽引することで、第4四半期(2~4月)は売上高・利益とも今期四半期で最大となる見通し。
カバー~Vチューバー事務所「ホロライブプロダクション」を運営。また、メディアミックスとして所属タレントのグッズやデジタルコンテンツなどを企画し、ECサイトやイベント会場での販売や企業とのコラボレーションなどを展開している。なお、前述の「東京観光大使」に任命されたVチューバーの3氏はホロライブの所属だ。新たにデビューした女性Vチューバーユニットの順調な立ち上がりなどにより、「YouTube」の総チャンネル登録数は堅調に推移し、足もと第3四半期(23年10~12月)の売上高成長率は前年同期比38.7%増に。
アカツキ <3932> [東証P]~Akatsuki Venturesを設立し、22年4月1日から50億円規模の新ファンド「Dawn Capital(ドーン キャピタル)」の運用を開始。バーチャルeスポーツプロジェクト「ぶいすぽっ!」を運営するバーチャルエンターテイメントの親会社Brave group(東京都港区)に出資した。また、Brave groupへは同社のほか、大阪ガス <9532> [東証P]、クレディセゾン <8253> [東証P]のコーポレートベンチャーキャピタルであるセゾン・ベンチャーズ、セプテーニ・ホールディングス <4293> [東証S]なども出資している。
ゲオホールディングス <2681> [東証P]~傘下のviviONはBrave groupとIP事業領域において業務提携。Brave groupの子会社であるクリエイトリングが手掛けていたVチューバーグループ「あおぎり高校」が23年4月にviviONへ移籍している。
エムアップホールディングス <3661> [東証P]~ファンクラブ・ファンサイトを運営。グループでコンテンツ事業を展開するCreative Plusでは、22年6月からレベルアップするVチューバーグループ「そちらの世界は〇〇ですか?」(通称そちまる)を運営している。
エイベックス <7860> [東証P]~21年8月にバーチャルエンターテインメント事業を専業とする「バーチャル・エイベックス」を設立。Vチューバーフェスやライブなどを運営する。23年10月にはエイベックス所属タレントである「後藤真希」氏が、デビュー25周年に向けた新プロジェクトとしてVチューバーデビューした。
ソニーグループ <6758> [東証P]~21年7月にソニー・ミュージックエンタテインメントが、Vチューバーを発掘・サポートする新プロジェクト「VEE」を始動。配信や動画制作だけでなく、音楽、声優、創作など、各バーチャルタレントが自分の夢を実現させるための活動を展開している。22年5月には1万8000人の応募の中から第1弾バーチャルタレント5人が決定、その後もデビューや移籍で所属タレントを増やしている。
株探ニュース
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