*14:32JST サイジニア Research Memo(2):EC事業者にデジタルマーケティングサービスを提供
■会社概要
1. 会社概要
サイジニア<6031>は、ブランドやリテーラー※1といったEC事業者に対し、デジタルマーケティングサービスを提供している。AIやビッグデータに関する技術ノウハウと開発力、EC全般に対応する一気通貫したサービス提供などに長けており、顧客に有力小売企業が多いことや、小売にとって喫緊の課題であるOMO※2への支援ができることが強みだ。既存事業の収益改善やZETAの経営統合※3を機に実質的に成長期入りしており、売上総利益率の重視を徹底することで株主価値の最大化を目指す。なお、ポストクッキーやリテールメディアテックといった業界の最先端課題にも対応している。
※1 ブランドは自社商品(ブランド)を中心に扱っている小売、リテーラーは他社商品も扱う小売またはマーケットプレイスを指す。前者の例はメーカーのDtoC(メーカー直販)やアパレル、SPA型小売、後者は品揃え型/編集型小売やECモールなど。
※2 OMO(Online Merges with Offline):オンライン(EC)とオフライン(実店舗)を融合しユーザー中心の顧客体験を実現する店頭接客DX(Digital Transformation)。
※3 2021年7月1日を効力発生日として、同社を株式交換完全親会社、ZETAを株式交換完全子会社とする株式交換を行った(連結は2022年6月期第2四半期から)。経営統合により、今後も高い成長が続くと見込まれる両社の事業領域で、経営資源と技術開発力の相互活用、顧客基盤の拡大、機動的な事業戦略を策定する経営体制の確立を進めることで、業績の向上を図る。
フロー型のネット広告サービスとストック型のCX改善サービスを展開
2. 市場環境と統合シナジー
同社の事業領域は、DSP※1やターゲティング広告などのネット広告サービスと、サイト内検索やOMOなどのCX※2改善サービスで、関連する国内インターネット広告市場とデジタルマーケティング市場はいずれも成長を続けている。EC事業者向けに一気通貫したデジタルマーケティングサービスを提供できることから、成長するEC市場の恩恵を受けやすいポジションにいる。また、EC強化を狙う大手企業を対象とする「ZETA CXシリーズ」は、EC市場の成長を上回るスピードで需要が拡大している。
※1 DSP(Demand-Side Platform):広告主側のプラットフォームで、広告主の費用対効果を高めるサービス。
※2 CX(Customer Experience):顧客体験。商品やサービスを顧客視点で評価すること。
同社とZETAはリコメンドを祖業とするが、同社はデクワスを買収してネット広告へ、ZETAはECサイト内検索エンジンへと事業を拡大した。統合に際し、同社は研究開発やM&Aなどホールディングス事業、デクワスはフロー型収益のネット広告事業、ZETAは店頭接客DX(旧 OMO推進サービス)やECサイト内検索などストック型収益のCX改善サービス事業へと、組織体制をバランスよく効率的に改編した。高採算のストック型収益であるCX改善サービスを強化することで全社の売上総利益率向上を目指す方針に沿ったもので、統合シナジーの強化と利便性の向上を通じてさらなる成長を目指している。
祖業が同じであることから、同社とZETAの統合はシナジーを創出しやすい環境にある。(1) フロー型とストック型の両サービスを展開することで収益のバランスを図る、(2) リテールメディアテックを主導するポジションを獲得する、(3) 両社の優秀なエンジニアを成長力のあるCX改善サービスに充てる、といったシナジーを享受している。
成長力の高いCX改善サービスで新サービスを続々投入
3. 事業内容
(1) ネット広告サービス
ネット広告サービスは主に「KANADE DSP」と「deqwas.AD」で、主要顧客は商品点数の多いECサイトや物件点数の多い不動産ポータルを運営している企業である。「KANADE DSP」は、多数のアドネットワークへ配信できる国内最大級のDSPサービスである。独自のユーザー行動履歴解析技術により、優良な見込みユーザーの行動プロセスや誘導したいユーザーの行動シナリオに合わせてパーソナライズされた広告配信を行い、潜在ユーザーを顧客の運営するWebサイトへ送客することで、顧客のブランド認知や優良ユーザーの確保を支援している。「deqwas.AD」は、独自のAI技術により膨大な潜在ユーザーから優良ユーザーを推定し、新規ユーザーを効率的にターゲティングする広告サービスである。
(2) CX改善サービス
CX改善サービスは、大量の商品を在庫・販売する小売などECサイト事業者に対して「ZETA CXシリーズ」や「deqwas.RECO」などのコンバージョン改善ソリューション、店頭接客DXであるローカル検索最適化「デクワス・マイビジネス」、デジタル情報管理の先端プラットフォームである「Yext」のテクノロジーなどを提供している。
このうち「ZETA CXシリーズ」は、キーワード入力時の表記揺れの吸収やサジェスト機能・もしかして検索・絞り込み・ファセットカウント・並べ替えなど、多彩な検索機能を備えたハイエンド型EC商品検索エンジン「ZETA SEARCH」を中心に、機械学習による協調フィルタリング・ルールベースフィルタリング・相関など複数のマッチングロジックを組み合わせてパーソナライズする「ZETA RECOMMEND」、総合点・品質・コストパフォーマンスなど複数項目の点数評価やフリーコメントなど多角的な評価軸を持ちカスタマーレビュー機能を容易に実装できる「ZETA VOICE」(投稿数は600万件を突破)などを組み合わせることで効果を上げている。特長は、ECサイト内で必要な商品検索機能・レコメンド機能をすべて備えているうえ、ユーザー視点を意識した設計になっている点である。また、アパレル・家電・ショッピングモールなど各サイトに合わせた自由度の高い設計や柔軟なデータ連携が可能で、効果測定やA/Bテストを通じた新機能の提案や改善チューニングなど継続的なサポートも提供している。顧客には戦略的マーケティング支援をし、ユーザーには優れた購買体験を提供できるため、小売を中心に有力企業が積極的に導入している。
同社は、ポストクッキーやリテールメディアテックを見据えた新サービスを積極的に開発することで、サービス領域を拡大している。2022年7月には「ZETA HASHTAG」(2023年1月に特許取得)をリリースし、好評を得ている。「ZETA VOICE」などで収集した商品説明やクチコミを解析してキーワードを抽出し、商品詳細ページのハッシュタグを自動生成するサービスで、サイト内での回遊性を高めるほか、クッキー規制への対策としても有効である。同月にリリースしたECサイト内検索連動広告「deqwas.LISTING」は、ユーザーの検索条件に最適化した広告を掲載するなど、広告成果とサイトコンバージョンの最適化を両立することで、ECサイトをリテールメディアとして収益化できる。12月には、ECサイトでの商品購入までの導線を自動最適化する「ZETA Tracking」をリリースした。ユーザーにとって関心が高い商品ページとの出会いを創出し、カートイン率やコンバージョン率の向上を図る。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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1. 会社概要
サイジニア<6031>は、ブランドやリテーラー※1といったEC事業者に対し、デジタルマーケティングサービスを提供している。AIやビッグデータに関する技術ノウハウと開発力、EC全般に対応する一気通貫したサービス提供などに長けており、顧客に有力小売企業が多いことや、小売にとって喫緊の課題であるOMO※2への支援ができることが強みだ。既存事業の収益改善やZETAの経営統合※3を機に実質的に成長期入りしており、売上総利益率の重視を徹底することで株主価値の最大化を目指す。なお、ポストクッキーやリテールメディアテックといった業界の最先端課題にも対応している。
※1 ブランドは自社商品(ブランド)を中心に扱っている小売、リテーラーは他社商品も扱う小売またはマーケットプレイスを指す。前者の例はメーカーのDtoC(メーカー直販)やアパレル、SPA型小売、後者は品揃え型/編集型小売やECモールなど。
※2 OMO(Online Merges with Offline):オンライン(EC)とオフライン(実店舗)を融合しユーザー中心の顧客体験を実現する店頭接客DX(Digital Transformation)。
※3 2021年7月1日を効力発生日として、同社を株式交換完全親会社、ZETAを株式交換完全子会社とする株式交換を行った(連結は2022年6月期第2四半期から)。経営統合により、今後も高い成長が続くと見込まれる両社の事業領域で、経営資源と技術開発力の相互活用、顧客基盤の拡大、機動的な事業戦略を策定する経営体制の確立を進めることで、業績の向上を図る。
フロー型のネット広告サービスとストック型のCX改善サービスを展開
2. 市場環境と統合シナジー
同社の事業領域は、DSP※1やターゲティング広告などのネット広告サービスと、サイト内検索やOMOなどのCX※2改善サービスで、関連する国内インターネット広告市場とデジタルマーケティング市場はいずれも成長を続けている。EC事業者向けに一気通貫したデジタルマーケティングサービスを提供できることから、成長するEC市場の恩恵を受けやすいポジションにいる。また、EC強化を狙う大手企業を対象とする「ZETA CXシリーズ」は、EC市場の成長を上回るスピードで需要が拡大している。
※1 DSP(Demand-Side Platform):広告主側のプラットフォームで、広告主の費用対効果を高めるサービス。
※2 CX(Customer Experience):顧客体験。商品やサービスを顧客視点で評価すること。
同社とZETAはリコメンドを祖業とするが、同社はデクワスを買収してネット広告へ、ZETAはECサイト内検索エンジンへと事業を拡大した。統合に際し、同社は研究開発やM&Aなどホールディングス事業、デクワスはフロー型収益のネット広告事業、ZETAは店頭接客DX(旧 OMO推進サービス)やECサイト内検索などストック型収益のCX改善サービス事業へと、組織体制をバランスよく効率的に改編した。高採算のストック型収益であるCX改善サービスを強化することで全社の売上総利益率向上を目指す方針に沿ったもので、統合シナジーの強化と利便性の向上を通じてさらなる成長を目指している。
祖業が同じであることから、同社とZETAの統合はシナジーを創出しやすい環境にある。(1) フロー型とストック型の両サービスを展開することで収益のバランスを図る、(2) リテールメディアテックを主導するポジションを獲得する、(3) 両社の優秀なエンジニアを成長力のあるCX改善サービスに充てる、といったシナジーを享受している。
成長力の高いCX改善サービスで新サービスを続々投入
3. 事業内容
(1) ネット広告サービス
ネット広告サービスは主に「KANADE DSP」と「deqwas.AD」で、主要顧客は商品点数の多いECサイトや物件点数の多い不動産ポータルを運営している企業である。「KANADE DSP」は、多数のアドネットワークへ配信できる国内最大級のDSPサービスである。独自のユーザー行動履歴解析技術により、優良な見込みユーザーの行動プロセスや誘導したいユーザーの行動シナリオに合わせてパーソナライズされた広告配信を行い、潜在ユーザーを顧客の運営するWebサイトへ送客することで、顧客のブランド認知や優良ユーザーの確保を支援している。「deqwas.AD」は、独自のAI技術により膨大な潜在ユーザーから優良ユーザーを推定し、新規ユーザーを効率的にターゲティングする広告サービスである。
(2) CX改善サービス
CX改善サービスは、大量の商品を在庫・販売する小売などECサイト事業者に対して「ZETA CXシリーズ」や「deqwas.RECO」などのコンバージョン改善ソリューション、店頭接客DXであるローカル検索最適化「デクワス・マイビジネス」、デジタル情報管理の先端プラットフォームである「Yext」のテクノロジーなどを提供している。
このうち「ZETA CXシリーズ」は、キーワード入力時の表記揺れの吸収やサジェスト機能・もしかして検索・絞り込み・ファセットカウント・並べ替えなど、多彩な検索機能を備えたハイエンド型EC商品検索エンジン「ZETA SEARCH」を中心に、機械学習による協調フィルタリング・ルールベースフィルタリング・相関など複数のマッチングロジックを組み合わせてパーソナライズする「ZETA RECOMMEND」、総合点・品質・コストパフォーマンスなど複数項目の点数評価やフリーコメントなど多角的な評価軸を持ちカスタマーレビュー機能を容易に実装できる「ZETA VOICE」(投稿数は600万件を突破)などを組み合わせることで効果を上げている。特長は、ECサイト内で必要な商品検索機能・レコメンド機能をすべて備えているうえ、ユーザー視点を意識した設計になっている点である。また、アパレル・家電・ショッピングモールなど各サイトに合わせた自由度の高い設計や柔軟なデータ連携が可能で、効果測定やA/Bテストを通じた新機能の提案や改善チューニングなど継続的なサポートも提供している。顧客には戦略的マーケティング支援をし、ユーザーには優れた購買体験を提供できるため、小売を中心に有力企業が積極的に導入している。
同社は、ポストクッキーやリテールメディアテックを見据えた新サービスを積極的に開発することで、サービス領域を拡大している。2022年7月には「ZETA HASHTAG」(2023年1月に特許取得)をリリースし、好評を得ている。「ZETA VOICE」などで収集した商品説明やクチコミを解析してキーワードを抽出し、商品詳細ページのハッシュタグを自動生成するサービスで、サイト内での回遊性を高めるほか、クッキー規制への対策としても有効である。同月にリリースしたECサイト内検索連動広告「deqwas.LISTING」は、ユーザーの検索条件に最適化した広告を掲載するなど、広告成果とサイトコンバージョンの最適化を両立することで、ECサイトをリテールメディアとして収益化できる。12月には、ECサイトでの商品購入までの導線を自動最適化する「ZETA Tracking」をリリースした。ユーザーにとって関心が高い商品ページとの出会いを創出し、カートイン率やコンバージョン率の向上を図る。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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