■業績動向
1. 2022年3月期の業績概要
明豊ファシリティワークス<1717>の2022年3月期の業績は、売上高で前期比0.5%増の4,260百万円、売上総利益で同0.8%減の2,281百万円、営業利益で同4.9%減の865百万円、経常利益で同5.0%減の865百万円、当期純利益で同2.3%減の606百万円となり、各利益については若干ながら減益に転じ、会社計画に対してもやや未達となった。コロナ禍の影響等で民間企業を中心に顧客の投資判断が慎重となり受注粗利益※が第3四半期に低迷し、受注時期の遅れによる期中のプロジェクト進行分が減少したことが、会社計画比での未達要因並びに前期比での減益要因となった。ただ、期末受注残に関しては前期末比で34%増と積み上がっており、先行きに関しては明るいと言える。
※受注粗利益は、受注高から社内コスト以外の原価(工事費等)を差し引いたもの。
売上総利益率が前期の54.2%から53.6%に低下したが、これは主に体制強化による労務費の増加とDX支援事業における外注費の増加によるものとなっている。また、販管費は社内のIT投資増強による関連費用の増加を主因に増加した一方、人件費はおおむね横ばい水準となった。
分野別受注粗利益の構成比を見ると、鉄道・学校・その他分野が前期の22%から32%と大きく伸長したことが特徴となっている。JR東日本の品川開発プロジェクト※の継続受注や、東京大学、筑波大学、大阪大学など国立大学のCM業務を多く受注したことが要因だ。東京大学については、2020年3月期に初めて受注して以降3期連続で受注し、他の国立大学でもCMサービスの活用が広がる契機ともなっている。一方でオフィス分野が前期の20%から18%に低下しているが、これは、コロナ禍の影響で顧客の設備投資に対する判断が慎重になり、プロジェクトの開始時期を延伸するケースが出たことが影響したと見られる。また、公共分野についても26%から20%に低下した。コロナ禍対策に予算を優先的に振り向ける自治体が多く、同社が得意とする庁舎建替えプロジェクトや施設維持・改修プロジェクト等の案件が減少したことが要因だ。
※品川開発プロジェクトとは、JR高輪ゲートウェイ駅西側に合計4棟の高層ビルと1棟の文化施設を建設し、新たな街区を開発するプロジェクト(2025年開業予定)で、2020年より着工を開始、予定事業費は約5,800億円と現在進行中の建設プロジェクトで最大規模となり、同社にとっても過去最大級のプロジェクトとなる。
なお、公共分野に関しては基本的にプロポーザル方式※の案件のみ入札しており、その大半を落札している。公表された受注案件数は14件と前期の17件から若干減少したが、ここ数年でCM業務の導入メリットが認識されるようになり、需要が増加しているとの認識に変わりない。
※プロポーザル方式とは、発注者が業務の委託先を選定する際に、入札を希望する事業者に対して目的物に対する企画を提案してもらい、そのなかから優れた提案を評価項目別にポイント化し、総合点数が最も高かった事業者を選定する入札方式。
2022年3月期に受注した案件で注目されるのは、経済産業省から2021年5月に受注した「令和3年度 デジタル行政に対応した本省庁舎執務環境整備に関する調査事業」となる。これは2020年1月に受注した「令和元年度 産業経済研究委託事業」から続いているプロジェクトで、経済産業省の本庁舎における執務フロアの刷新における基本構想・基本計画の策定からプロジェクトマネジメント、働き方改革を支援する事業となっている。経済産業省でもDXの活用により組織力・個々の能力を最大限発揮するためのオフィス改革に取り組んでおり、そのなかで同社がノウハウを持つペーパーレス化推進やアクティビティの可視化(「AMS」の活用)などを支援している。経済産業省向けに関しては、2022年5月に「令和4年度 業務効率化やデジタル行政に対応した執務環境の整備に向けた調査事業」を受注している。前年度事業のフォローアップと、経済産業省別館の執務環境整備の計画策定から事業者選定支援、併せて本館で未整備となっている部分の改装を計画、実行していくことを目的としている。これらの経済産業省での取り組み実績をもとに、2022年3月期は内閣人事局での執務環境整備に関する調査業務を受注したほか、2022年5月には外務省のオフィス改革に関するコンサルティング業務を受注するなど、官庁での横展開も進みつつある。
官公庁は民間企業よりもDX化が遅れていると言われており、2021年9月に新設されたデジタル庁を司令塔とし、行政のDX化を推進していく方針となっている。このため、今後は他の省庁でも働き方改革を踏まえたオフィス再構築の動きが進むものと見られ、豊富なノウハウと実績を持つ同社が発注者支援業務を受注獲得できる可能性は高いと弊社では見ている。また、将来的に省庁の大規模移転などがあった場合には、難易度の高い大規模オフィスの竣工時同時入居プロジェクトを多く手掛けてきた同社にとって受注獲得の好機になると見られる。
また、企業のSDGsに関する関心が高まるなかで、同社にも関連した問い合わせが急速に増えてきたことから、2021年8月より脱炭素化支援コンストラクション・マネジメントサービスの専用相談窓口を新設し、温室効果ガスの削減や再生可能エネルギーの導入を検討する企業や自治体向けに、顧客の保有施設全体の脱炭素化を支援するサービスを開始している。引き合いは官民問わず旺盛で、2022年5月には千葉市から「新庁舎の脱炭素化に資する電力調達方法に係る調査及び提案業務」を受注するなど、さらなる受注拡大が期待できる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. 2022年3月期の業績概要
明豊ファシリティワークス<1717>の2022年3月期の業績は、売上高で前期比0.5%増の4,260百万円、売上総利益で同0.8%減の2,281百万円、営業利益で同4.9%減の865百万円、経常利益で同5.0%減の865百万円、当期純利益で同2.3%減の606百万円となり、各利益については若干ながら減益に転じ、会社計画に対してもやや未達となった。コロナ禍の影響等で民間企業を中心に顧客の投資判断が慎重となり受注粗利益※が第3四半期に低迷し、受注時期の遅れによる期中のプロジェクト進行分が減少したことが、会社計画比での未達要因並びに前期比での減益要因となった。ただ、期末受注残に関しては前期末比で34%増と積み上がっており、先行きに関しては明るいと言える。
※受注粗利益は、受注高から社内コスト以外の原価(工事費等)を差し引いたもの。
売上総利益率が前期の54.2%から53.6%に低下したが、これは主に体制強化による労務費の増加とDX支援事業における外注費の増加によるものとなっている。また、販管費は社内のIT投資増強による関連費用の増加を主因に増加した一方、人件費はおおむね横ばい水準となった。
分野別受注粗利益の構成比を見ると、鉄道・学校・その他分野が前期の22%から32%と大きく伸長したことが特徴となっている。JR東日本の品川開発プロジェクト※の継続受注や、東京大学、筑波大学、大阪大学など国立大学のCM業務を多く受注したことが要因だ。東京大学については、2020年3月期に初めて受注して以降3期連続で受注し、他の国立大学でもCMサービスの活用が広がる契機ともなっている。一方でオフィス分野が前期の20%から18%に低下しているが、これは、コロナ禍の影響で顧客の設備投資に対する判断が慎重になり、プロジェクトの開始時期を延伸するケースが出たことが影響したと見られる。また、公共分野についても26%から20%に低下した。コロナ禍対策に予算を優先的に振り向ける自治体が多く、同社が得意とする庁舎建替えプロジェクトや施設維持・改修プロジェクト等の案件が減少したことが要因だ。
※品川開発プロジェクトとは、JR高輪ゲートウェイ駅西側に合計4棟の高層ビルと1棟の文化施設を建設し、新たな街区を開発するプロジェクト(2025年開業予定)で、2020年より着工を開始、予定事業費は約5,800億円と現在進行中の建設プロジェクトで最大規模となり、同社にとっても過去最大級のプロジェクトとなる。
なお、公共分野に関しては基本的にプロポーザル方式※の案件のみ入札しており、その大半を落札している。公表された受注案件数は14件と前期の17件から若干減少したが、ここ数年でCM業務の導入メリットが認識されるようになり、需要が増加しているとの認識に変わりない。
※プロポーザル方式とは、発注者が業務の委託先を選定する際に、入札を希望する事業者に対して目的物に対する企画を提案してもらい、そのなかから優れた提案を評価項目別にポイント化し、総合点数が最も高かった事業者を選定する入札方式。
2022年3月期に受注した案件で注目されるのは、経済産業省から2021年5月に受注した「令和3年度 デジタル行政に対応した本省庁舎執務環境整備に関する調査事業」となる。これは2020年1月に受注した「令和元年度 産業経済研究委託事業」から続いているプロジェクトで、経済産業省の本庁舎における執務フロアの刷新における基本構想・基本計画の策定からプロジェクトマネジメント、働き方改革を支援する事業となっている。経済産業省でもDXの活用により組織力・個々の能力を最大限発揮するためのオフィス改革に取り組んでおり、そのなかで同社がノウハウを持つペーパーレス化推進やアクティビティの可視化(「AMS」の活用)などを支援している。経済産業省向けに関しては、2022年5月に「令和4年度 業務効率化やデジタル行政に対応した執務環境の整備に向けた調査事業」を受注している。前年度事業のフォローアップと、経済産業省別館の執務環境整備の計画策定から事業者選定支援、併せて本館で未整備となっている部分の改装を計画、実行していくことを目的としている。これらの経済産業省での取り組み実績をもとに、2022年3月期は内閣人事局での執務環境整備に関する調査業務を受注したほか、2022年5月には外務省のオフィス改革に関するコンサルティング業務を受注するなど、官庁での横展開も進みつつある。
官公庁は民間企業よりもDX化が遅れていると言われており、2021年9月に新設されたデジタル庁を司令塔とし、行政のDX化を推進していく方針となっている。このため、今後は他の省庁でも働き方改革を踏まえたオフィス再構築の動きが進むものと見られ、豊富なノウハウと実績を持つ同社が発注者支援業務を受注獲得できる可能性は高いと弊社では見ている。また、将来的に省庁の大規模移転などがあった場合には、難易度の高い大規模オフィスの竣工時同時入居プロジェクトを多く手掛けてきた同社にとって受注獲得の好機になると見られる。
また、企業のSDGsに関する関心が高まるなかで、同社にも関連した問い合わせが急速に増えてきたことから、2021年8月より脱炭素化支援コンストラクション・マネジメントサービスの専用相談窓口を新設し、温室効果ガスの削減や再生可能エネルギーの導入を検討する企業や自治体向けに、顧客の保有施設全体の脱炭素化を支援するサービスを開始している。引き合いは官民問わず旺盛で、2022年5月には千葉市から「新庁舎の脱炭素化に資する電力調達方法に係る調査及び提案業務」を受注するなど、さらなる受注拡大が期待できる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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