日経平均は3日続伸、米株高背景に29000円台後半回復、物色はインフレ色強まる

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最新投稿日時:2021/05/10 12:21 - 「日経平均は3日続伸、米株高背景に29000円台後半回復、物色はインフレ色強まる」(フィスコ)

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日経平均は3日続伸、米株高背景に29000円台後半回復、物色はインフレ色強まる

配信元:フィスコ
投稿:2021/05/10 12:21
 日経平均は3日続伸。245.87円高の29603.69円(出来高概算5億6464万株)で前場の取引を終えている。

 前週末の米国株式市場でNYダウは史上最高値を更新。4月の雇用統計では市場予想に反して、雇用者数の伸びが予想を大幅に下回ったため回復期待が後退し、寄り付き後、下落。ただ、連邦準備制度理事会(FRB)が早期に金融緩和を縮小するとの警戒感が後退し、上昇に転じると、引けにかけては、金融緩和の長期化を期待した買いが一段と上げ幅を拡大した。この米株高の流れを受けて週明けの日経平均は19円高で始まると、そのまま上げ幅を一気に拡大し、前場中頃には高値では29685.41円と前営業日比300円超高と上値を伸ばした。前引けにかけてやや失速したが、本日の高値圏で前場を終えている。

 個別では、本決算を発表し、今期業績見通しがポジティブ視されたところで、日本製鉄<5401>やJFEHD<5411>冶金工<5480>リコー<7752>メンバーズ<2130>などが大きく買われた。また、第1四半期が大幅増益で業績上方修正も発表したローランド<7944>はストップ高買い気配のまま終えている。そのほか、マルカと株式移転による経営統合を行うことを発表したフルサト工業<8087>もストップ高まで買われた。一方、対照的に業績リリースで失望感を誘ったDeNA<2432>特殊陶<5334>などは大きく売られている。

 売買代金上位では、任天堂<7974>ソフトバンクグループ<9984>、ソニーグループ<
6758>、日本製鉄、トヨタ<7203>、マネックスG<8698>、JFEHD、エムスリー<2413>などが大きく上昇。一方、ファーストリテ<9983>レーザーテック<6920>日本郵船<9101>三菱商事<8058>、SUMCO<3436>などが軟調となっている。

 セクターでは、鉄鋼、石油・石炭製品、鉱業、非鉄金属、その他製品などが上昇率上位となった。一方、小売業、電気・ガス業、海運業、空運業、金属製品などが下落率上位となっている。東証1部の値上がり銘柄は全体の68%、値下がり銘柄は27%となっている。

 日経平均は4月19日以来となる29000円台後半にまで水準を戻している。日足の一目均衡表では雲上限を明確に上放れてきた。ただ、まだ三角保ち合いの域を脱しておらず、短期的にはどちらに振れてもおかしくない状況が続く。

 今週は主力企業の1-3月期決算がピークを迎える。週初から200近い決算が予定され、数は日を追うにつれて増える。週末には1000近い企業が決算を予定しており、今週だけで2200以上のもの数になる。そのため、今週も決算を受けた個別株物色の動きが強まり、指数の方向感は出にくいだろう。

 思い返せば、2月期決算の安川電機<6506>を皮切りに、3月期決算では日本電産<6594>、エムスリーなど、株価がネガティブに反応する決算が序盤は多く、市場には陰鬱としたムードが漂っていた。しかし、その後、ファナック<6954>東京エレクトロン<8035>などのように好反応ものも増えてきた。米国でも市場予想を上回る決算が想定以上に多く、NYダウは連日の最高値更新だ。対して、日本は、新型コロナウイルスのワクチン接種の遅れなどもあり、出遅れ感が強まっているが、決算がピークを迎える今週の出だしに、日経平均が大きく上昇し29000円台後半にまで回復したことはセンチメントを改善させてくれる。今週のヤマ場において、良好な決算と株価反応の企業が増えてくれば、市場心理の向上とともに日経平均が再び3万円台を捉えてくる展開も想定されよう。

 さて、本日の物色動向をみていると、景気敏感株、とりわけ資源関連株(鉄鋼、石油、鉱業、非鉄金属など)の強さが際立っている。グローバルな景気回復というシナリオもさることながら、やはり、改めて話題になってきている世界的なインフレ加速への懸念が背景にあると思われる。前週末に発表された4月の米雇用統計では非農業部門雇用者数が市場予想を大きく下回ったことで、「物価」と「雇用」の双方を政策目標とする米連邦準備制度理事会(FRB)が早期に金融緩和を縮小する懸念が後退し、このところ1.5%台で安定している米国10年物国債利回りの急反発懸念が後退した。

 ただ、一方で期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレークイーブンインフレ率
(BEI)は対照的に上昇を続けており、BEIは前週末には2.49%まで上昇、さながら青天井の様相を呈している。米国で既に決算を発表済みの企業でも説明会において「インフレ」に言及する企業が例年に比してかなり多いという。また、市場でも、景気循環株・バリュー(割安)株などインフレに対応できる銘柄にシフトすべきとの声を上げる専門家が最近はとりわけ多い印象だ。商品市況も鉄鋼から、アルミ、亜鉛から、トウモロコシなどの食料品まで需給が逼迫している状態長く続いている。

 米雇用統計も、市場予想を下回ったとはいえ、コロナ禍での打撃が大きかったレジャーや飲食などのサービス分野はむしろ人手不足で、減少したのは旺盛な需要に供給が追いついていない製造業分野だ。また、失業給付などが就業意欲を低下させているとの指摘もあり、企業は賃金を引き上げても雇用が足りないと嘆いているという。一部の専門家は、今後企業は大幅な賃金引き上げを求められるだろうとも指摘している。

 つまり、この先、雇用統計が改めて強い結果を示す可能性は十分にあり得るし、大幅な賃金引き上げに伴い、いまは商品市況に限定されているインフレも、今後は広範に強まる可能性がある。そうなれば、改めて「インフレ加速・長期金利上昇」という動きが警戒され、FRBによる早期金融引き締めなども再度不安視されてきそうだ。今週は米消費者物価指数(CPI)の発表も控えている。決算シーズンの最中で見逃されがちだが、注目だろう。

 資源関連株のチャートをみると、既に大きく値上がりしているものが多い。それだけを見ていると、なかなか買いづらいとは思われるが、「インフレ」が今後も中長期のテーマとして存在し続けることを考慮すれば、PBR(株価純資産倍率)が未だに1倍割れの鉄鋼セクターなどは、依然として投資妙味があるとも言えるのではないだろうか。
<AK>
配信元: フィスコ

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