「閑散相場も、チャートは危険を察知」

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最新投稿日時:2015/12/25 19:43 - 「「閑散相場も、チャートは危険を察知」」(黒岩泰)

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「閑散相場も、チャートは危険を察知」

著者:黒岩泰
投稿:2015/12/25 19:43

「心臓が止まれば、毛細血管から血の気が・・・」

 本日の日経平均は20.63円安の18769.06円で取引を終了した。朝方は堅調な値動きとなったが、基本的には手掛かり材料の乏しい閑散相場。外国人投資家はクリスマス休暇で不在であり、終日、狭いレンジでの値動きとなった。

 市場で話題となっていたのが、年末の換金売り。本日が年内受け渡し最終日ということもあって、個人投資家からは執拗に節税対策売りが出ていたようだ。同時にドル建てMMFなどの非課税措置が終了することも重なって、これにも駆け込み売りが。為替を円高・ドル安に動かす要因となっており、それぞれ相場の重石となった。

 日経平均の日足チャートでは、小陰線が出現。着実に下値を切り下げており、やや売り圧力が優勢であることを意味している。

 もちろん18600円付近には需給的な要因でできた「テクニカルの壁」が存在しており、相場を下支えしやすい。しかし、この壁はいずれ消滅する運命にあり、場合によってはすでに消滅している可能性すらある。もし、今度、株価が下方向に動いた場合には、16800円台に位置する窓がターゲットになる。かなり危うい状態であり、投資家はそれなりの覚悟が必要だ。

 チャートが弱気形状となっているのは、日米の金融政策が“不毛”だからだ。米FRBはついに利上げを実施したが、これは世界の金融経済を混乱させる元凶となりうる。リスクマネーが米国に回帰することで、経済の末端部分である新興国や、弱小企業などの息の根を止める可能性があるからだ。心臓が止まれば、真っ先に毛細血管から血の気が引くということである。

 一方、日銀はと言えば、どうしようもない「補完措置」でお茶を濁している。追加緩和策の「次」がないことを暗に匂わしており、どうも手詰まり感が強いのだ。日銀は実質的に新発国債のほとんどを買い取っている。完全なるマネタイゼーション(国債の貨幣化)なわけだが、分けない分からない金融用語を持ち出して、一般人を煙に巻いている。「それ追加緩和なの?」と言われる始末であり、どうも日銀への信頼感が低下しつつあるようだ。この国の金融政策を日銀に任せて大丈夫なのか――そんな声さえ聞こえてくる。

 はっきり言おう。ダメである。2008年のリーマンショック以降、世界の金融市場には巨大な穴が開いてしまった。それを財政・金融で埋め合わせしてきたのであり、それがいよいよ限界を迎えているのだ。

 今はそんなに危機感はないものの、着実に危機の足音は近づいている。米FRBの利上げはその「狼煙」みたいなものであり、その重大変化に我々は気づかなければならない。中国も一見、生きているように見えるが、経済は完全に「死に体」である。8月の暴落は中国バブル崩壊の初動であり、これから第2波、3波がやってくる。

その一方で、中国・人民元がIMFのSDR(特別引き出し権)入りを果たしたことは、相対的に日本円の地位が低下することを意味する。同時に東アジアの通貨の主導権は人民元に移ったことを意味し、将来的には円と統合されるシナリオがあると見る。それは先の金融危機でギリシャがユーロを離脱しなかったことと同じ意味である。欧州はユーロという地域通貨を完成させており、今度はいよいよ東アジアの番ということになる。もし、日本が野放図に財政赤字の垂れ流し、そして無意味な金融緩和を続ければ、いずれは財政破綻という話になる。なぜならば、先進国でもっとも借金が多いのは何を隠そう日本であり、彼らの息のかかった格付け機関が本気になれば、財政破綻まで一気に突き進む可能性があるからだ。日本の金融危機をきっかけに「人民元と統合」というシナリオを支配者たちは描いており、その前段としての「人民元のSDR入り」がある。個人投資家の多くは、「自分の銘柄さえ上がれば良い」という感覚で相場に臨んでいるが、実際にはそういった大きなうねりの上に乗っかっている。分散投資したつもりでも、「実際には同じ籠に入れていた」というケースも十分に考えられるのだ。チャートが「危険」を察知している以上、投資家もそのような腹積もりだけはしておきたい。
黒岩泰
株式アナリスト
配信元: 達人の予想

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