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「セラピスト」

河合隼雄の箱庭療法を中心に展開される、
1960年代から現在までの心理療法の変遷が、
よーっくわかる書籍。

馴染みのない人には、少し難しいかもしれない。
オイラはクスリ屋として精神病院に5年ほど勤務経験があり、
主に統合失調症の患者さんに、
退院時服薬指導をしたことがあったので、
もともと興味があった。

その中の一例に、
オイラのオマケで語りかけた話が原因で、
患者さんがやる気になりすぎて退院が延期になってしまったことがある。
料理の話だったのだが、
あのとき、少しでも心理療法に関する知識があったのならば、
もっと違った結果になったかもしれない、
という風に、ずっと気になっていた。

★「セラピスト」
  最相葉月著 新潮社 H28.10.20.第二刷

一人前のセラピストになるのには、
どーやったって25年はかかるそうだ。

著者の最相が、あるきっかけで自らが箱庭療法や絵画療法にて、
専門家から鑑定を受けることになる。

この切り口から、
途上、心理療法の変遷を学べるようになっている。

その内容は実際に読んでみると多岐にわたるので、
予想していた以上にオモロイと感じるはずだ。

河合隼雄は「傾聴」することで有名だったが、
どうしてそーしていたのか、
ところどころ詳しく記載されていたりする。

そして実に圧巻なのは、
河合隼雄の箱庭療法に感化した中井久夫という精神科医が見出した、
絵画療法。

ここに統合失調症が大いに関与してくるので、
精神科で服薬指導をする薬剤師には、
相当に参考になる記述が割かれている。

また終盤で明らかにされるのだが、
精神科の診断基準が進化するにつれ、
(ICD-10とDSM)
患者数が爆増するという現実が到来した。

これが原因で、
診察に時間がかけられなくなり、
箱庭療法も絵画療法も、今では下火になってしまわざるを得ないという。

深い深い井戸を掘る、村上春樹と河合隼雄の談話も少し出て来る。







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