衣雲さんのブログ
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「増資は買い」という相場格言が蘇る
監督の映画「ウォール街」は、私にとって投資を始める前から好きな映画のひとつです。でも投資を始めたばかりの頃、ふとレンタルした「ウォール街」を観て不思議に思ったことがありました。この物語に登場する主人公のゴードン・ゲッコーという男、「自分はダーツは投げない。確実なものにだけ投資する。」とたやすく言ってのけ、若き証券マンのバド・フォックスに「一番重要なのは情報だ。」と説きます。その際に、ゲッコーが株を買う情報の例として「増資」が挙げられてました(もちろんそれがインサイダー取引であることは承知の上でですが)。
私が投資を始めた頃はもうとっくに「株式の希薄化」という考え方が一般に定着していたので、「このおっちゃん何を言ってるんだろう?」となったのを憶えています。その後よくよく調べてみると、1980年代以前は「増資は買い」という格言が正しいと信じられ、公募増資があると投資家が一斉に群がったと、そんな時代があったということがわかりました。じゃあ、どうして1990年代以降は一転して「増資は売り」になっちゃったのでしょうか?いろんな要因はありますが、スゴく簡単に言うと、先進国が「リスクオフの時代」に入ったからじゃないでしょうか。
どこもかしこも成熟企業が増えて、成長性の見込めない企業がその場しのぎの増資を続けた結果、増資した後も株価が低迷し続けるということが相次ぎ、投資家も増資を毛嫌いしたのでしょう。それが証拠に、この20年間、「優れた企業」の経営に求められたのは成長性ではなく経常利益と自己資本比率でした。でも考えてみるとこれはおかしな話です。経常利益率が高い企業とはつまり設備投資を十分に行っていない企業であり、自己資本比率の高い企業とはつまりレバレッジの低い企業ということになります。誰がなんと言おうと、1990年以降は、十分なリスクをとっていない企業が「優れた企業」とされていた「リスクオフの時代」だったのです。
でも、そろそろその状況に変化が見えています。これまで株主は経営者に経常利益と自己資本比率を高めることを求めてきましたが、その状況が少しずつ変わってきています。投資家はより高い利益を上げるために、より高いリスクをとり始めました。そして経営者にもより高いレバレッジを求め始めたのです。これは日本株が急上昇の後で頭打ちしたことが投資家心理に影響を与えたのかもしれません。こうした「リスクオン」の投資家心理はこれまでの「リスクオフの時代」の常識をひっくり返すだけの力を持っています。
ただ、そのためには「リスクオン」の心理に応える「結果」が求められます。いくら設備投資をしても成長に結びつかなければ意気消沈してしまいます。増資をして今までどおり株価が低迷するなら希薄化リスクを回避し続けるでしょう。でも逆に、もし設備投資や増資が企業と社会の成長に力を与え、マネーが正常に循環するようになれば、この20年ほどの常識を捨てなければいけない時代になるでしょう。その日に備えて私達がやるべきことは、いつでも「常識」を捨てられる様に十分心構えをしておくことです。
衣雲さん
こんばんわ。「慧眼」をお持ちですね。
特に、この段。
「逆に、もし設備投資や増資が企業と社会の成長に力を与え、マネーが正常に循環するようになれば、この20年ほどの常識を捨てなければいけない時代になるでしょう。その日に備えて私達がやるべきことは、いつでも「常識」を捨てられる様に十分心構えをしておくことです。」
おはようごじます。
昔の増資は株価よりかなり安い価格の増資が多かった。
ex株価300円、額面50円、株主は50円の価格で応募出来た。
問題は、増資の方向ですね。 (^o^)♪
本来の主事業でなく、手を広げた新しい分野だと慎重に
考えなければなりませんね。
>kattanさん
たしかに増資の方向は問題ですね。私も、シナジーのない事業に節操無く手を広げたがる会社は要注意だと思います。べつに中部鋼鈑の悪口をいうつもりはありませんが・・・(笑)
でもその反面、一般投資家にとっては集団心理の方が強くて、みんなが「増資は売り」と思ってるから増資が発表されると同時に売りが殺到し、「IPOは買い」と思ってるからみんなIPO買いに殺到するという・・・でも極端な状態が長続きするわけはないので、どこかで集団心理は反転するんじゃないかな?と思ったりもしています。