日本近代文学の経済史

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日本近代文学の経済史

昭和52年の高額所得者番付は、

森村誠一6億2264万円、横溝正史4億416万円、松本清張3億545万円とあった。

残念ながら、昭和57年までの記載しかないので、

今どきの人気作家の所得は不明だ。

 

★「カネと文学 ~日本近代文学の経済史~」

  山本芳明著 新潮選書 1,300円+税 2013.3.30.初版

 

文学の世界における作家の収入について、いろいろな資料を紐解いて解明しようとした書籍。

帯には、「赤貧の文士から、億万長者の文化人へ」とある。

 

もちろん、億万長者といったって、ほんの一握りの作家であって、

他のほとんどの作家が赤貧であることは、

大沢在昌の書籍にもあるように事実。

芥川賞や直木賞をとったとしても、消えてしまう作家はたくさんいる。

まるでFXや株の世界と一緒。

 

登場する作家は大正時代から。

出版界の景気にも波があって、儲かるときもあれば、

何をどーやってもダメなときも。

 

ポット出の新人が爆発的に売れたときもあったという。

島田清次郎の「地上」シリーズがそれだ。

出版社は悩みに悩んで、彼に賭けて、その長編小説を出版したのであった。

ところが、一見大成功に思われたその事象は、時間をそうおかず幻となってしまう。

 

問題は、若すぎた彼の傲慢さにあったという。

色のついたゴシップをきっかけに、その傲慢さが作品にも露わになり、

最後には精神病院行きとなってしまった彼の筆は、そこで折れたのだ。

 

「純粋小説」というオモロイ言葉も出てくる。

小林秀雄などが始めた啓蒙運動のようだ。

いわゆる純文学が暗くて売れないのはイカンだろうということで、

出版業界の中ですったもんだがあったらしい。

その近くには、谷崎潤一郎のギャラの話も出てくる。

 

また、今にも通じるが、出版社に缶詰にさせられて

過労死した作家なども登場する。

 

こういったいろいろなエピソードが満載なので、

文学好きにはオモロイと思われる。

 

永井龍男の書いた「回想の芥川・直木賞」(文春文庫1982.7.25.第一刷)

などと併せて読むと、川端康成など作家達の実像が浮かび上がってきてオモロイ。

見ているだけでオモロイキャラが満載なのだ。

過去のオモロイ話には、必ずオモロイキャラが出てくるのであって、

それはキャラクター造型の大きな種になるのだと思う。

 

 

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