今週の新興市場は続落。米11月卸売物価指数(PPI)の上振れを嫌気した米株安を引き継いで週明けは下落スタート。週半ばはNY連銀の短中期の期待インフレ率が低下したことや予想以上に伸びが鈍化した米11月消費者物価指数(CPI)を支援要因に買い戻しが入った。しかし、週末にかけては大きく続落。米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)が利上げ幅を縮小するも、継続的な利上げと高水準の金利維持の必要性を主張したことが総じてタカ派的と捉えられ、売りが優勢となった。なお、週間の騰落率は、日経平均が−1.34%であったのに対して、マザーズ指数は−1.55%、東証グロース市場指数は−1.49%だった。
時価総額上位銘柄では、週間でANYCOLOR<5032>が−13.0%と大きく下落。業績予想の上方修正や東証プライム市場への市場区分変更申請に向けた準備を発表したが、前の週からの急落で需給が悪化しており、好感されずに続落となった。ビジョナル<4194>は−2.3%。第1四半期は大幅増益で市場予想も上回る好決算だったが、上方修正がなかったことが嫌気されたか、決算発表直後の15日は−10.8%と売られた。ただ、週末の16日は+3.8%と反発している。ほか、時価総額上位ではフリー<4478>が−5.9%、M&A総合研究所<9552>が−6.1%、サンウェルズ<9229>が−4.4%、ウェルスナビ<7342>が−5.9%。セルソース<4880>は今期見通しが物足りないと捉えられて-7.7%となった。週間騰落率ランキングでは好決算が評価されたINTLOOP<9556>、Macbee Planet<7095>、アクシージア<4936>などが入った。
■個人の物色意欲は依然旺盛
来週の新興市場は弱含みか。米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果やECBの定例理事会での政策決定は総じてタカ派的だった。フェデラルファンド(FF)金利先物市場の動きを見る限り、市場は依然として景気後退により、FRBは来年後半には利下げ転換を強いられるとみているようだ。しかし、FOMC後、サンフランシスコ連銀・デーリー総裁やクリーブランド連銀・メスター総裁、NY連銀・ウィリアムズ総裁らは改めて利上げ継続の必要性を再主張していて、市場の見通しとはかなりギャップがある。さらに、ウィリアムズ総裁は最新の政策金利見通しで示された来年末の政策金利中央値5.1%を上回る利上げが必要になる可能性にも言及している。
一方、景気後退懸念を背景に、米10年債利回りは3.5%を下回る水準にまで低下している。今年は上半期を中心に長期金利の急上昇に怯える時期が長かったため、長期金利の低下自体は株式の支援要因と考えられるが、全面的なリスクオフの地合いとなれば、新興株も厳しい地合いが続きそうだ。
また、年末にかけては確定申告に向けた個人投資家による損出し売りが膨らむ可能性があり、今年の株価パフォーマンスが軟調な銘柄には一段安に警戒したい。さらに、新規株式公開(IPO)ラッシュが本格化していて、来週も11社の新規上場が予定されている。全体相場が軟調な中、短期の値幅取り狙いでIPO銘柄の物色は活発化する可能性が高いが、既存銘柄は需給的に厳しい地合いとなりそうだ。
ただ、これまでのところ、IPO銘柄の初値形成は順調なものが多く、投資家の含み損益状況は悪くないと考えられる。スカイマーク<9204>など時価総額の大きい銘柄でもセカンダリーが好調なものも見られ、個人投資家の物色意欲は旺盛といえる。
Macbee PlanetやINTLOOPなど好決算を発表した銘柄には年初来高値や上場来高値を更新する動きも見られており、IPO以外の既存銘柄がすべて軟調というわけでもない。好決算かつ今年の株価パフォーマンスが良好な銘柄はIPOラッシュや年末に向けた損出し売りなどの影響も小さく、上値追いが続くと考えたい。
<FA>
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