―地方創生でも活躍期待、規制緩和が加速すれば関連有力株は投資マネーのターゲットに―
人手不足の問題を背景に移動手段に難儀するという状況は、日本の各地で解決しなければならない重要課題となっている。都市部では公共交通機関が発達していることで、この問題はやや認識されにくいかもしれないが、地方に目を向ければ、公共交通網が年々縮小し、頼みの タクシーもなかなかつかまらない、そんな「移動の空白地帯」を埋める存在として注目されているのが日本版ライドシェアだ。
一般ドライバーが、タクシー運転手のように人を乗せて運ぶ。現在は規制も多いが、今後政府も日本版ライドシェア普及を加速させていく方針にある。2025年から、更に注目を集めることが期待される「ライドシェア」関連にスポットを当ててみたい。
●温泉街でのライドシェア導入
24年の日本ではさまざまな変革が起きた。その変革の一つが「日本版ライドシェア」の解禁である。現状は認可された法人タクシー事業者が主体ながら、4月から始まったこの取り組みは日本各所に広がっている。近々にも東北全県で日本版ライドシェアが実施される見通しにある。また、特に足もとで目立っているのが、日本ならではの人気観光地でもある「温泉(街)」でのライドシェア導入だ。
Uber Japanは、山形県にある銀山温泉組合や地元タクシー会社などと連携し、12月15日からアプリを通じたタクシー及びライドシェアサービスを開始した。銀山温泉と言えば、NHK連続テレビ小説「おしん」のロケ地となったほか、「千と千尋の神隠し」のモデルにもなったと噂されるほど、写真映えするノスタルジックな雰囲気が美しい小さな温泉街として知られる。
Uberによると、この地域を訪れる観光客の数千人がすでにUberアプリにアクセスしていることが確認されているもようだ。また、同じく有名温泉地として知られる大分県別府市でも日本版ライドシェアの運行がスタートした。11月からはJR東日本 <9020> [東証P]などが「公共ライドシェア」の実証実験を長野県野沢温泉村で始めた。ここも全国有数のリゾート地として知られ人気を博す一方、タクシー不足がやはり問題化しており、観光客だけでなく、地域住民の足としても活用すべく検証を進める。
●規制緩和が普及のカギを握る
政府も上述したライドシェア推進を一段と後押しする姿勢だ。12月には、国土交通省が「交通空白地」と呼ばれる、公共交通網の利用が難しい地域の解消に向けた会議を開催し、25~27年度を集中対策期間に設定した。25年5月をメドに取り組み方針がまとまる公算が大きい。
まさに、今後一段とライドシェアの普及が加速していく節目の局面を迎えているといえそうだ。また、こうした流れも相まって、大阪・関西万博の開催期間中は大阪府内で日本版ライドシェアの規制が緩和される方針であることも各種メディアが報じている。24年4月から解禁されたとはいえ、やはりそこは日本。良い意味でも、悪い意味でも、当然規制が存在するのだ(地域、台数、稼働可能時間など)。規制緩和が普及のカギを握ることになる。万博開催中は需要と供給に大きなギャップが生まれることが予測されている。
●地方創生の側面でもライドシェアに期待
地方創生という側面からも、地方の人口増(=東京一極集中からの脱却)はもちろん、観光客数の増加にも当然期待がかかる。もちろん交通が全てではないものの、ライドシェアを通じて交通の利便性が増すことで、一つのボトルネック解消にはつながるだろう。
25年から、ライドシェア推進が一段と加速していくことが予想されるなか、今回は「ライドシェア」関連の銘柄に焦点を当てた。ライドシェアに参入している企業のほか、タクシー会社が運行管理する形で解禁されているため、IT技術で同サービスを支援している企業を中心に銘柄を選抜した。
●熱視線を浴びる関連有力株6選
◆Will Smart <175A> [東証G]~地域交通インフラの課題解決に向けたコンサルティング・企画開発を行う。交通空白地における公共ライドシェアを推進しており、利用者予約システム、運行管理・予約管理システム、ドライバー用アプリ、IoT車載デバイスなどを集約した公共ライドシェア向けシステム基盤を提供する。12月から長崎県平戸市で公共ライドシェアの実証運行を行っており、今後複数の自治体へ導入を目指している。
◆ディー・エヌ・エー <2432> [東証P]~タクシーの配車アプリや、交通事故削減を支援するAI(人工知能)ドラレコサービス「DRIVE CHART」などの開発・運営を行うGO(東京都港区)は、持ち分法適用関連会社である。GOは12月からタクシーの約半額で乗車できる相乗りサービス「GO SHUTTLE」(GOシャトル)を東京・湾岸エリアで開始した。
◆FIG <4392> [東証P]~傘下のモバイルクリエイトでは、主にトラック・タクシー・バス事業者に対して主力製品である業務用IP無線システムを中心とした移動体管理システムを提供している。主力製品である業務用IP無線システム「iMESH」は、GPS受信機能を内蔵しており、タクシー配車システム、動態管理システム及び運行管理システムの端末として活用されている。また、LINEアプリ内で簡単にタクシーの配車注文ができる、石垣島全島を対象としたタクシー配車サービス「石垣島タクシー配車」を9月から提供しており、ライドシェア機能を追加することを検討中。
◆メルカリ <4385> [東証P]~タクシー配車アプリ「newmo(ニューモ)」や「日本版ライドシェア」、ライドシェアドライバー向けカーリース事業の運営など、利用者視点に立った地域交通の実現を目指して、元メルカリ幹部が24年1月に設立したnewmoに出資。newmoは7月に大阪のタクシー会社を買収し、運営主体がタクシー会社に限られる日本版ライドシェアに、M&Aを通じてIT業界から参入した。
◆JVCケンウッド <6632> [東証P]~カーエレクトロニクス製品や通信型ドライブレコーダー、クラウド型配車システムなど、モビリティ&テレマティクス分野が売上の過半を占める。クラウドにより、サーバー設置やメンテナンスの必要がなく、導入時や運用時のコストを削減し、クラウドで常に最新の地図情報を活用することができるタクシー配車システム「CABmee」を手掛ける。ドライバー向けセキュリティーサービスの需要の伸びも期待される。
◆鈴与シンワート <9360> [東証S]~コンピューターソフトウェアの受託開発・開発支援、データセンター&クラウドサービス事業、物流ITコンサルティングサービスなどを手掛ける。クラウドサービス分野において、運転前アルコールチェック&検温クラウドサービスで一般ドライバーの安全運転管理を支援する。同サービスではAI顔認証でなりすましを防止し、ビデオ点呼機能で遠隔地にいるドライバーの顔を視認し点呼できるほか、動画でドライバーの状態も視認することができる。
株探ニュース
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