今週の新興市場は続落。週を通して一進一退が続き、指数の方向感は出なかった。米国で消費者物価指数(CPI)や卸売物価指数(PPI)が軒並み予想を下回ったことでインフレ収束期待が高まり、米金利が幅広い年限で大きく低下したことが支援材料になった。一方、急速な円高進行で日経平均が荒い動きとなるなか、個人投資家心理にも影響する形で新興株も不安定な動きを強いられた。なお、今週の騰落率は、日経平均が+0.01%だったのに対し、マザーズ指数は-0.32%、東証グロース市場指数は-0.32%だった。
個別では、時価総額上位銘柄ではM&A総研HD<9552>が週間で+10.1%と大きく上昇。週間上昇率ランキングでは、決算を材料にWACUL<4173>、SERIOHD<6567>、シイエヌエス<4076>などがランクイン。一方、決算が悪かったものは大きく売り込まれており、エクスモーション<4394>、チームスピリット<4397>、リックソフト<4429>が急落。直近の新規株式公開(IPO)銘柄の中でも人気の高かったABEJA<5574>は会社計画通りではあるが、先行投資の影響で四半期ベースの収益モメンタムが鈍化したことが嫌気され、週末にストップ安まで売られた。アイドマHD<7373>は通期利益計画を上方修正も売上高を下方修正したことや四半期受注率の鈍化が警戒感を誘い、決算発表翌日はストップ安比例配分となった。ほか、サンクゼール<2937>は既存店売上高の鈍化が嫌気されて大きく売られた。
■警戒要因だった米金利はいったん小康状態へ
来週の新興市場は一進一退か。今週末に発表された米7月ミシガン大消費者調査の期待インフレ率が上昇したことで米金利は再び上昇した。ただ、14日の米10年債利回りは3.83%と依然として4%を大幅に下回る水準にある。今週の米物価指標の下振れもあり、目先は警戒感の高まる動きは想定しづらく、新興株への影響は軽微とみる。
来週は海外で重要な経済指標が多く発表されるほか、銀行大手や半導体受託製造大手など注目度の高い企業の決算が予定されている。これらの結果は東証プライム市場の主力株に影響を及ぼすことが想定され、関連銘柄に対しては様子見ムードが強まりやすい。また、米国でのインフレ収束期待や日本銀行の政策修正観測の高まりを背景に為替の円高が警戒されている。少なくとも27-28日の日銀金融政策決定会合で政策の現状維持を確認するまでは為替の動向は不安定となりやすい。これらの要因を背景に来週は東証プライム銘柄への積極的な売買は手控えられやすいと考えられ、相対的には新興株に物色が向かいやすい環境と考える。
一方、今週の新興市場では信用買い残が積み上がった銘柄や売買代金上位に名を連ねることの多い銘柄で値崩れするものが散見された。直近IPOのABEJAの週末のストップ安などは影響が懸念される。地合いも不安定になってきている中、個人投資家は先行きに対して神経質になっていると考えられ、資金の逃げ足の速さには注意したい。
来週末は建設業やIT業界向けに技術者派遣を行うナレルグループ<9163>が東証グロース市場に新規上場する。また、GENDA<9166>、クオルテック<9165>、Laboro.AI<5586>がブックビルディング(BB)期間に入っている。
個別では今週に決算を機に売り込まれたABEJA、アイドマHDに注目。ABEJAの四半期収益の鈍化はあくまで先行投資の影響であり、会社側も計画通りとしていることから、株価反応は行き過ぎに感じられる。また、アイドマHDについては、鈍化した受注率が改善策を実施したうえで10月に入って既に改善してきている。売上高の下方修正率も1.7%と小さく、こちらも足元の株価下落は過剰反応な印象を受ける。それぞれ早々に出直りとなるかに注目したい。
<FA>
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