―AI爆発的進化のバックボーン、第4次ブームでカギを握る巨大なる山に挑む銘柄群―
2024年相場も遂にゴールテープが目前に迫ってきた。あとは30日の大納会を残すのみとなっている。振り返って日経平均株価は10月以降3カ月間にわたり3万8000~4万円のボックス圏でもみ合う展開を続け、なかなか方向感が見えなかった。12月も強弱観対立の中で上値の重さが指摘され、一時は師走相場の代名詞ともなっている「掉尾の一振」は期待できそうもないというムードが漂ったのだが、最後に来て見事なラストスパートをかけフシ目の4万円大台乗せを果たした。
来年は日経平均が7月につけた上場来高値4万2224円奪回にどういうタイミングで臨むことになるかが注目される。政治や地政学リスクなどグローバル環境の不確実性に不安感を拭い去ることはできないが、それらを呑み込んで株式市場が強靱な上昇トレンドを構築することへの期待は大きい。
●新年はAI周辺銘柄のパフォーマンスに期待
そうしたなか、新年相場におけるテーマ物色の候補として「第4次ブーム」に突入したといわれる人工知能(AI)関連は外せないであろう。そして派生するテーマとして24年相場を席巻したAI用半導体というハード分野一択から、AI技術を取り入れたシステム開発やソリューションビジネスといったソフト分野の進化に投資マネーの視点がシフトし始めている。 生成AIの活躍を筆頭にAIの高付加価値化を後押しするのは、学びの土台となる膨大な情報、いわゆる「ビッグデータ」にほかならない。これまでを振り返って、ビッグデータとディープラーニングを掛け合わせることで飛躍的なAIの進化がもたらされたことはもはや自明である。AIの商業化へのプロセスはまだ黎明期で、これは世界に衝撃を与えた生成AIであっても同様だ。しかし、AI進化のベースともなるビッグデータについては、既にさまざまなシーンでビジネスとして頭角を現し巨額の利益を創出している。
●ビッグデータという巨大な活火山
ビッグデータとは文字通り巨大なデータ群を意味し、それを定義する明確なラインはないものの、人間の頭脳では大きすぎて全体像を把握することができないレベルの情報、なおかつ物理的な量だけではなく多様性や頻度、蓋然性、価値といった項目を満たす情報という概念で語られる。また、ニーズや用途によってその対象も多面的であり、ネット社会ではWebサイトデータやソーシャルメディアデータなどが該当し、消費関連セクターではカスタマーデータ、通信関連ではログデータといったように、その範疇も多岐にわたる。
総務省は「平成29年版情報通信白書」で個人と企業と政府が生み出すビッグデータの構成要素を、国や自治体が提供する「オープンデータ」、企業が保有する「産業データ」、個人情報にあたる「パーソナルデータ」の3つに大別している。いずれにしても、何かを計画し実行に移す際に、勘を頼りにやみくもに動くのではなく、データに裏付けられた論理的な意思決定がなされた方が良い結果に導かれる可能性が高いことは言うまでもない。それを専門的な知見をもとに分析し、分かりやすく加工して顧客に提示できれば大きなビジネスとして成り立つ。いわばニーズの先にある巨大な活火山をどう利活用するか、そのノウハウが重要である。
●米パランティアの急騰劇に視線集中
米国ではビッグデータ分析を手掛けるパランティア・テクノロジーズ
東京市場ではAI関連に位置付けられる銘柄は多いが、業績面で苦戦している銘柄も少なくない。足もとの業績とビジネスモデルの将来的な成長性は元来別モノではあるが、現在進行形で利益を積み重ねている企業の方がマーケットの評価は高く、また安定しているのは確かだ。ビッグデータ関連で括られる銘柄はAI関連の一角と捉えられ、またその大きなAIというテーマの括りの中において勝ち組に属する銘柄が多い。
ビッグデータ周辺でビジネスチャンスを獲得している企業は、トップラインにとどまらず利益の成長に見事に反映されている。そうした事情を踏まえ、今回のトップ特集は新年相場で活躍が期待される好業績かつ成長性を併せ持った関連株を6銘柄エントリーした。米パランティアの例を挙げるまでもなく、ビッグデータやAI関連は業績変化率の高い中小型株が多く、時価総額ベースで考えるとダブルバガーやトリプルバガーの宝庫といっても過言ではない。短期的には値動きが荒くても一喜一憂せず、日足ではなく週足チャートをイメージして株価の成長過程を楽しむというスタンスも肝要かと思われる。
●近未来の伝説となれるか要注目の6銘柄
◎Finatextホールディングス <4419> [東証G]
フィナHDは証券や保険など金融分野のクラウドサービスを展開。基幹システムをSaaS型で提供する。主力の金融インフラ事業は証券向けで旺盛なニーズを捉えるほか、ビッグデータ解析事業も受注拡大が顕著となっている。NEC <6701> [東証P]とは共同で保険会社におけるシステムのモダナイゼーション(レガシーシステムの最適化)支援ビジネスで協業体制にある。ビッグデータ解析は新規事業としてスタートさせたデータAIソリューションビジネスで新規顧客獲得が順調に進んでいる。業績は成長加速局面にあり、トップラインの急拡大に加え、24年3月期に黒字化させた営業損益は、続く25年3月期に前期比3.4倍となる6億8600万円を見込んでいる。しかも依然として保守的との見方が強く、大幅な増額修正余地を内包している。
株価は12月中旬に戻り高値1093円をつけた後は漸次水準を切り下げているが、1000円を割り込んだ時価水準は絶好の買い場提供場面と判断される。売り物一巡から切り返し、7月17日の上場来高値1138円更新が当面の目標となる。
◎クロス・マーケティンググループ <3675> [東証P]
クロスマーケはネットリサーチを祖業とするが、近年はデジタルトランスフォーメーション(DX)やデジタルマーケティングといった付加価値の高い事業に舵を切ったことが功を奏し、収益性を向上させている。企業のビッグデータ活用に向けたCRM(顧客管理)分析支援サービスなどで実績を有する。株主還元にも積極的姿勢をみせ、8月上旬には発行済み株式数の3.6%に相当する70万株を上限とする自社株買いを発表し、これを好感する形でストップ高に買われるなど快足ぶりを発揮した。25年6月期は売上高が前期比15%増の300億円予想と2ケタ伸長を確保し、営業利益は同63%増の30億円と高変化を見込んでおり、3期ぶりに過去最高利益更新を果たす。
この成長力の高さにもかかわらず、PERが8倍前後と評価不足が歴然で水準訂正余地の大きさが意識される。株価は12月5日に形成した大陽線を境に動兆著しいが、23日の年初来高値更新後にひと押し入れており、バリュエーションを考慮すれば絶好の買い場に。22年4月以来の4ケタ大台復帰は時間の問題か。
◎共同ピーアール <2436> [東証S]
共同PRは国内トップクラスの独立系総合PR会社として実績が高く、企業PR支援やコンサルティングビジネスを幅広く展開している。トランプ次期米大統領と古くから強力な関係性を築き上げている米大手ロビー会社バラード・パートナーズと戦略的パートナーシップを締結していることから、今後のPR事業における展開力に期待が膨らんでいる。PR事業以外では、SNS普及を背景に時流を捉えたインフルエンサーマーケティング、AI・ビッグデータソリューション事業に注力していることがポイント。ビッグデータ分野では自社で開発したツールを活用し、情報・データの収集及び分析を行い可視化することによって顧客企業を支援する。
業績は絶好調に推移しており、24年12月期の営業利益は前期比25%増の10億5000万円とピーク利益更新が続く見通しで、25年12月期も2ケタ成長が続く公算が大きい。株価はここ急伸後一服しているが、高い成長力を確保しながらPERは10倍前後と割安で、年初来高値853円クリアから中勢4ケタ大台を目指す動きを期待。
◎プラスアルファ・コンサルティング <4071> [東証P]
PAコンサルは自然言語処理を使ってテキストデータから情報を抽出するテキストマイニングを軸に、ビッグデータ分析を主力展開する。人材活用・マーケティング・顧客管理などに対応する形で、可視化を主眼に置いたクラウドソフトの開発・提供を行う。ビッグデータ活用による企業の業務効率化ニーズは高く、同社の商機を高めている。最近では同社がリリースするマネジメントシステム(タレントパレット)に、生成AIを活用した客観的評価制度を支援する機能を導入するなど需要開拓に前向きだ。業績は23年9月期の連結決算に移行する前から大躍進が続いている。25年9月期は売上高が前期比27%増の177億3000万円、営業利益は同23%増の56億円を予想しており、圧倒的な収益成長力を背景に20倍前後の時価予想PERは割安感が強い。
株価は11月中旬にマドを開けて売られた後、もみ合いを経て戻り足に転じている。直近は戻り一服となっているが、目先の押し目は買い向かうところで、中勢2000円台後半を指向する強調展開が見込めそうだ。
◎ファインデックス <3649> [東証P]
ファインデは大学病院を含めた大規模病院向けを中心に医療用汎用ファイルシステム(医療用データ管理システム)を提供するが、国公立大学病院の7割以上に同社のシステムが導入されているという実績は特筆に値する。このほか公共向けビジネスとして公文書管理システムなども納入している。同社の医療ビッグデータ検索システム「Universal Searcher」は、さまざまな院内情報を網羅したデータベースを形成し、検索を重ねることで更なるビッグデータを構築する仕組みであり、無限に広がるデータベース構築と検索システムで優位性を発揮している。
業績はハイペースの成長を続けており、23年12月期営業利益は前の期比46%増の14億9600万円と連続で過去最高を更新。24年12月期も伸び率こそ鈍化する見通しながら、前期比5%増の15億7400万円予想とピーク利益更新が続く。株価は12月初旬に年初来安値をつけるなど底値ゾーンにあるが、売り物を枯らし、戻り歩調に転じている。まずは1000円台復帰が第1目標に。
◎ダブルスタンダード <3925> [東証P]
ダブスタは企業向けにビッグデータの解析受託サービスを主力業務として手掛けるほか、AIを活用した業務自動化サービスにも注力している。AIサービスは顧客案件の大型化などで収益に貢献しており、25年3月期営業利益は前期比10%増の25億5000万円予想と2ケタ増益で過去最高更新が続く見通し。営業利益は今期予想を含め11期連続でのピーク利益更新が見込まれている。来期は大口顧客との契約終了に伴いトップライン、利益ともに減少する可能性は高いものの、営業努力によって新規顧客確保の可能性も十分にあり、事実足もとインバウンド主体で案件獲得が続いている。時流に乗るビジネスモデルで収益の中期成長トレンドに変化はなさそうだ。
時価予想PERが12倍台と割安であることから1500円台は底値買いチャンスといえる。株価は21年11月に4950円の最高値をつけるなど天井も高い。底値圏にありながら信用買い残が膨らんでおらず、貸株調達による外資系証券経由の空売りの買い戻しなどで上げ足を強めるケースも考えられる。
株探ニュース
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