―経済再開期待も追い風、日銀による超低金利持続で海外筋の買い観測も―
今月中旬に2万5000円台半ばまで下落した日経平均株価は、足もとでは買い戻しが強まり、この日は2万7000円台まで値を戻した。ただ、依然として米国を中心とするインフレ懸念は強く、先行きに対する警戒感は根強い。そんななか、株式市場ではインフレ耐性の強いセクターを物色する動きが強まっている。石油株や商社株などが、その代表例だが、インフレ環境下での活躍が期待される業種として「不動産株」も市場からの熱い視線を集めている。
●業種別「不動産」は年初から約13%上昇と堅調
足もとで不動産株が堅調に推移している。業種別株価指数(TOPIX、33業種)の「不動産」は昨年末から約13%上昇し、年初来高値圏にある。日経平均株価が年初からマイナスで推移しているのとは対照的に、不動産株は全体相場を大きくアウトパフォームしている。個別銘柄をみても三井不動産 <8801> [東証P]が今月22日に2年4ヵ月ぶりに一時3000円台を回復したほか、三菱地所 <8802> [東証P]も同じく年初来高値を更新。住友不動産 <8830> [東証P]のほか、東京建物 <8804> [東証P]といった大手不動産株が軒並み堅調な値動きとなっている。
●大手不動産会社は軒並み最高益更新基調に
大手不動産の業績は好調だ。三井不の23年3月期連結営業利益は前期比22.5%増の3000億円と3期ぶりに最高益を更新する見込み。菱地所の同利益も前期比4.3%増の2910億円と前期に続く最高益予想だ。大型物件の寄与に加え、マンション販売や商業施設の回復などが期待されている。住友不も今期営業利益は最高益予想で、東建物や野村不動産ホールディングス <3231> [東証P]、東急不動産ホールディングス <3289> [東証P]も経常利益ベースでそろって最高益を更新する見込みだ。また、三井不は前期から総還元性向を純利益の45%程度(従来35%程度)をメドに強化しており増配や自社株買いを積極化する方針。不動産各社は、積極的な利益還元策や前向きな中期経営計画を打ち出している。
●コロナ禍からの脱却でホテル・レジャー事業に回復期待
市場関係者からは、不動産株の評価ポイントとして「足もとの好業績に加え、コロナ禍からの脱却が進み経済再開(リオープン)による ホテルやレジャー施設の回復が期待されること。更に、インフレ耐性の強いセクターとみられており投資資金の流入が見込めること」(アナリスト)を挙げる見方が出ている。コロナ禍による不動産業界への影響では、テレワーク増加など働き方の多様化が進んだことがあるが、オフィスビルに関しては立地の悪い既存ビルは苦戦しているものの都心部の新築ビルの需要は根強いとみられている。東京都心では2023年から25年にかけて新築ビルの開業が相次ぐ「2023年問題」を警戒する声もあるが、リオープンの流れはオフィスビルには追い風となりそうだ。また、在宅時間の増加はマンション販売などには追い風となった。
●インフレ期の1970年代に不動産株は上昇
更に、不動産株はインフレ耐性の強いセクターだと言われている。インフレ下では現金の価値は実質的に目減りするため、不動産投資に目が向かうことも予想される。特に、インフレ下では商業不動産の家賃が上昇することを期待する見方もある。
実際、インフレが進行した1970年から79年までの10年間で菱地所の株価は約2.1倍に上昇している。東証33業種別の不動産指数も同期間に80%近く上昇するなど、過去のインフレ期に不動産株は上昇基調にあったことが分かる。更に、欧米と異なり日本では日銀による超低金利政策が継続する見通しにあることも追い風だ。低金利で借入コストが抑えられていることはプラス要因で、そこにリオープンによる実物不動産のリターンが改善すれば不動産投資の収益は拡大する。この状況を考慮したうえで、「不動産株には超低金利が続く日本の市場を魅力的とみた海外投資家からの買いも入っているのではないか」(アナリスト)との声も出ている。
インフレヘッジの資産として不動産株への期待は膨らんでいる。三井不や菱地所といった上記の大手不動産株に加え、サンフロンティア不動産 <8934> [東証P]やスターツコーポレーション <8850> [東証P]、タカラレーベン <8897> [東証P]、サンセイランディック <3277> [東証S]、それにロードスターキャピタル <3482> [東証P]などの上昇が期待できる。更に、保有不動産の資産価値が注目され高島屋 <8233> [東証P]などの百貨店株や東急 <9005> [東証P]などの電鉄株といった土地持ち会社に、ここから物色のホコ先は広がりそうだ。
株探ニュース
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