2. 事業セグメント別の動向
(1) 不動産セールス事業
不動産セールス事業の売上高は前年同期比26.0%減の31,471百万円、営業利益は同25.0%減の3,924百万円となった。アパートメント販売に関しては、2018年後半以降、同業他社の不正問題を契機として金融機関の融資審査期間が長期化した影響等により販売件数で前年同期比4割減、営業利益で5割強の減益となったものの、シノケングループ<8909>物件に対する高い評価は変わっておらず、適正価格で販売することができたため、売上高でほぼ会社計画通り、営業利益は会社計画を上回って着地した。一方、マンション販売については個人販売に加えて、企業向け販売(BtoB)を実施したことにより、前年同期比で2ケタ増収増益となり会社計画に対しても上回る結果となった。
(2) 不動産サービス事業
不動産サービス事業の売上高は前年同期比29.0%増の8,222百万円(セグメント間売上含む、以下同様)、営業利益は同45.3%増の1,851百万円と大幅増収増益となった。アパートメント・マンション販売の累積販売数の積み上げと高い入居率(2019年6月末で98%超)を維持したことが増収増益要因となった。利益率も増収効果によって22.5%まで上昇し、安定収益基盤として連結営業利益への貢献度も増している。
2019年6月末時点の管理戸数は賃貸管理が前年同期比15.7%増の34,885戸、マンション管理が同7.8%増の6,426戸となった。賃貸管理の伸び率がやや鈍化しているが、これは2019年12月期第2四半期累計期間における販売戸数が前年同期に比べ減少した事が影響したと見られる。また、家賃等の債務保証サービスの契約件数は同19.9%増の29,319件と引き続き高成長が続いた。入居者向け保証プランや少額短期保険商品の充実を図り、新規契約の獲得に取り組んだ成果が継続して出ている。また、家賃延滞率が0.3%と前年同期実績の0.4%から若干ながら改善しており、増益要因となっている。
(3) ゼネコン事業
ゼネコン事業の売上高は前年同期比16.8%増の11,364百万円、営業利益は同23.9%増の942百万円と好調に推移した。(株)小川建設の創業110年を超える歴史と技術、信頼と実績により、グループ内の開発物件だけでなく、大手商社等幅広い顧客からの新規受注を獲得し、受注済みの請負工事の進捗についても順調に進んだことが増収増益要因となった。売上高の内訳を見ると内部売上高については前年同期比16.2%増の2,163百万円、外部売上高は同17.0%増の9,200百万円となっており、グループ内売上比率は19.0%と横ばい水準で推移した。なお、2020年、2021年に竣工予定の受注残高についても順調に積み上がっており、2020年12月期については売上高で2019年12月期並みの水準を確保できる目途が付いたようだ。
(4) エネルギー事業
エネルギー事業の売上高は前年同期比36.4%増の1,372百万円、営業利益は同24.3%増の325百万円となった。アパートメント累計販売戸数の増加に伴いLPガスの契約件数が増加したほか、電力の小売販売についてもLPガスとのセット販売による価格訴求力を打ち出して顧客獲得に努めた結果、順調に契約件数が増加し、増収増益要因となった。
2019年6月末時点のLPガスの契約戸数は前年同期比15.5%増の34,496戸、電力契約戸数は同39.0%増の18,413戸となった。増加戸数で見るとLPガスが4,642戸の増加だったのに対して、電力は5,167戸の増加となっており、新規入居者だけでなく、既存入居者向けで電力契約の他社からの切り替えが進んだことがうかがえる。
(5) ライフケア事業
ライフケア事業の売上高は前年同期比8.9%増の765百万円、営業利益は同30.4%増の113百万円となった。売上高は既存のサ高住やグループホーム等の入居率が高水準で推移したことや、既存アパートメントを使った高齢者が安心して利用できるサービス付きの賃貸住宅(寿らいふプラン)の入居数も順調に増加したことが増収増益要因となった。また、今後の成長を見据えて、高齢者向け商品・サービスだけでなく、年代を問わない新たなライフケアサービスの開発についても検討を開始している。
(6) その他
その他は主に海外事業として上海、シンガポールにおける不動産賃貸・売買仲介業務のほか、インドネシアの首都ジャカルタ中心部において投資用アパートメント事業(桜テラス)に取り組んでいるほか、不動産ファンド運用ライセンス取得のための準備を進めてきた結果、2019年7月にライセンス取得に至った。
「桜テラス」の第1号案件(58戸)については2019年4月にグランドオープンし、用地仕入から施工、入居・宿泊管理を全て自社グループで行う一気通貫体制を構築し、現地事業活動において競争優位なビジネスモデルを確立しつつある。物件は短期滞在から、ウィークリー、マンスリー、長期滞在と様々なニーズに対応できる仕様、サービス提供となっている。顧客は日系企業が中心で稼働率も高水準で推移している。現在、6号までの用地を取得済みで、うち2~3件を2021年末または2022年初の竣工を目指している。
その他の売上高は内部売上高が減少したこともあり前年同期比65.1%減の78百万円に、営業利益はインドネシアにおける事業投資や国内不動産テックに関する開発費等の増加もあり、17百万円の損失を計上した(前年同期は122百万円の利益)。
一方、国内では民泊運営事業会社との業務提携を開始したほか、IoTデバイス技術を活用したアパートメント「Shinoken Intelligent Apartment」の販売を開始するなど新たな取り組みを進めている。まだ、業績への影響はないものの、こうした新たな取り組みの中から将来の成長事業を育成していくことになる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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