1. 2022年3月期の業績概要
イー・ギャランティ<8771>の2022年3月期の連結業績は、売上高が前期比9.7%増の7,894百万円、営業利益が同20.8%増の3,732百万円、経常利益が同21.0%増の3,760百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同22.9%増の2,463百万円となり、20期連続の増収増益を達成した※。コロナ禍が長引き企業活動が一部制限を受け続けるなか、売上債権の未回収リスクを懸念して同社の保証サービスを利用する事業会社が増加し、信用保証残高が前期末比20.7%増の5,822億円と順調に積み上がったことが増収増益要因となった。
※親会社株主に帰属する当期純利益は2021年3月期に特殊要因で減益になっている。
期初会社計画との比較で見ると、売上高が7.1%下回ったものの各利益は計画水準で着地した。売上高については、企業倒産件数の大幅減少に伴う平均保証料率の低下が未達要因となった。一方、利益面では倒産件数の減少を背景とした支払保証料の減少等で売上原価率が改善したことにより(2021年3月期25.2%→2022年3月期21.2%)、計画を達成した。
保証残高の増加については、顧客ニーズの高まりに合わせた商品をタイムリーに提供したことで新規顧客の獲得が順調に進んだことや、低リスクで残高の大きな案件のリスク受託が拡大したことが要因として挙げられる。顧客ニーズの高まりに合わせた商品とは、売上債権保証サービスにおける保証料率の仕組みや根拠について完全開示した商品のことを指す。具体的には、従来非開示としていた保証対象先の個社別の保証料率を開示したほか、対象企業数の範囲によって保証料率がどの程度変動するかについても顧客企業に開示するようにした。従来は、同社のサービス料金が高いのか安いのか解りにくい面があったが、保証料率の仕組みをオープンにしたことで、企業側も同社のサービスを導入しやすくなったと見られる。一方、低リスクの大規模案件については、コロナ禍が長引くなかで大企業でも将来の倒産リスクが上昇している企業があり、こうした企業を対象とする信用保証サービスの利用が増加した。
販管費については前期比8.8%増の2,492百万円と増加したものの、増収効果により販管費率は前期の31.8%から31.6%と若干低下した。主な増加要因は、人員体制強化に伴う人件費(給与及び手当、賞与引当金繰入額)の増加で77百万円、租税公課の増加で22百万円となっている。期末時点の連結従業員数は前期末比9名増の170名となっている。
自己資本比率は70%台で推移し、財務内容は良好
2. 財務状況と経営指標
2022年3月期末の財務状況を見ると、総資産は前期末比2,685百万円増加の25,256百万円となった。主な増減要因を見ると、流動資産では現金及び預金が1,238百万円増加し、有価証券を1,200百万円計上した。固定資産については、その他の関係会社有価証券が14百万円増加した。
負債合計は前期末比154百万円増加の5,539百万円となった。未払法人税等が235百万円減少した一方で、前受金が212百万円、保証履行引当金が91百万円、賞与引当金が50百万円それぞれ増加した。また、純資産は前期末比2,530百万円増加の19,716百万円となった。ストックオプションの行使により、資本金及び資本剰余金がそれぞれ412百万円増加したほか、利益剰余金が1,457百万円増加した。
経営指標を見ると、経営の安全性を示す自己資本比率は71.9%と前期比で1.6ポイント上昇した。無借金経営で現金及び預金の水準も170億円超と過去最高水準まで積み上がるなど財務内容は良好な状態にあると判断される。収益性について見ると、売上高営業利益率で47.3%、ROEで14.5%、ROAで15.7%といずれも高水準を維持している。これは同社のビジネスモデルが保証料を月額按分で売上計上するストック型のビジネスモデルであることや、営業活動を提携先との連携により効率的に進めることができていること、また、競合企業がほとんどなく高い競争優位性を維持していることなどが要因として挙げられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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