インタビューの前半では、リスクを流動化する「マーケットメーカー」としての役割やリスクを引き受ける経済インフラとしての機能を果たしている点についてお話を伺いました。後半は決算説明会を受けて、詳しい業績について見ていきます。
■20年3月期は増収増益
5月14日に2020年3月期連結決算を発表しています。売上高が前期比6.9%増の59.56億円、営業利益が同8.2%増の27.18億円、経常利益が同7.8%増の27.51億円、親会社株主に帰属する当期純利益が同39.3%増の23.01億円となっており、信用リスク保証サービスは引き続き堅調に推移しています。
江藤氏によると「新規顧客の増加を図るべく販売チャネルとの取り組みを強化するとともに、企業が行っている与信管理や債権回収の業務効率化を提案するなどのコンサルティング営業を展開し、また、既存顧客向けWebサービスの浸透を図ったことで保証先の追加や保証枠の増額依頼が増加した」と述べています。これを受けて、事業法人向け保証サービスの売上高は前期比6.9%増の57.86億円、金融法人向け保証サービスの売上高は前期比6.9%増の1.70億円となっています。顧客企業の獲得には全国各地の地銀51行と連携しており、現在の顧客の8割が地銀の紹介をもとにしたものです。
■来期の見通し、売上高の大幅な増加
2021年3月期通期の連結業績予想については、売上高が前期比29.3%増の77.00億円、営業利益が同9.6%増の29.80億円、経常利益が同9.1%増の30.00億円、親会社株主に帰属する当期純利益が同15.3%減の19.50億円を見込んでいます。
背景には、「新型コロナウイルス感染拡大による保証サービスの利用者の増大や、リスク増加による保証料率の引き上げにより、売上高は大幅な増加を見込んでいます。新型コロナの影響により、企業は中長期的な計画が立てにくく、自らリスクを取りにくい状況になっており、企業間取引におけるリスクヘッジニーズは高まっており、今後もこの傾向は継続すると考えられる」(江藤氏)と述べています。
また、同社の売上は月次の期間計上(12分割)となるため、新規・更改契約の売上は来期にもまたがって計上されるため、来期以降もこの影響を受けるとみられます。一方、倒産数の増加によって保証履行額は増加が見込まれること、同社が引き受けているリスクの大半は流動化していることから、リスク流動化にかかる費用の上昇も織り込んでいるとした。
「前期までに、企業の審査・申し込み・請求書発行までがオンラインで完了するサービスの確立をしていたことや、リスク受託力強化のためのファンドの組成を実施してきていました。これらはコロナ以前より進めていた」(江藤氏)。このことからも、常に一歩先の経営を行っていたことや、取引先がテレワーク実施下でも支障なく業務が進められた背景もあり、同社のリスクの引き受け体制は追い風となっています。今後もこの効果が期待され、底堅い成長を見通すことができます。
■次なる野望「蓄積されたデータをフル活用」
イー・ギャランティが築いてきた取引情報データベースには、事業内容や決算情報、過去の支払い遅延、経営者の個人資産などの情報が入っています。そこから、類似企業の倒産実績を分析し、倒産確率をはじき出して保証料に反映させています。「審査依頼が年間約30万社を超えてきており、膨大なデータを保有し、『どの企業がどの企業とどんな取引をしている』というデータや、『どのような支払い状況』があるか等を把握しています」(江藤氏)。この情報を使うと、ある企業は規模が小さいがデータを利用した分析でもう少し保証枠が設定できることがわかるなど、いよいよ、溜まってきたデータを活用できるステージに入ってきているのです。
売掛金が回収できなくなるリスクを回避したい企業のニーズに応え、世の中になくてはならない存在感を示し、高成長を続けているイー・ギャランティの今後の動向からは目が離せない。
(フィスコ 馬渕磨理子)
<SF>
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