―世界的な金利上昇に再評価強まる、高配当利回りで買い好機に―
大手銀行株を中心とする金融株に物色機運が高まっている。足もとでは新型コロナウイルスに対するワクチン接種拡大で経済正常化期待が膨らみ、景気回復観測から長期金利が上昇し始めている。こうしたなか、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> や三井住友フィナンシャルグループ <8316> など大手銀行株を中心とする金融株に対する見直し買いが本格化している。先行きの金利動向に不透明感は残るものの、割安放置されてきた 金融株の上昇余地は大きい。
●銀行株上昇でTOPIXはいち早く2月高値抜く
株式市場では、出遅れの割安景気敏感株を買う動きが強まっている。その象徴がTOPIXの堅調さだ。この日、TOPIXは1981まで上昇と6連騰し、1991年5月以来、29年10ヵ月ぶりの高値圏に上昇した。日経平均株価は一時3万円を回復したものの2月高値奪回に手間取っているのとは対照的にいち早く調整から脱出した格好だ。日経平均株価がハイテクなど値がさ株の影響が高い指数なのに対し、TOPIXはメガバンクなど時価総額の大きな銘柄の寄与度が大きい。銀行株の上昇が貢献する格好で、市場からは同じく91年5月以来となる「TOPIXの2000乗せは近い」とみる声が出ている。
●米長期金利は景気回復期待で上昇機運に
銀行株を中心とする金融株は金利上昇の追い風に乗っている。米国では、新型コロナウイルスに対するワクチン接種が進み経済正常化への期待が膨らんでいるほか、1兆9000億ドルの追加経済対策が成立したことで景気回復観測が強まり米10年債利回りは1.6%台に上昇した。新型コロナウイルスによる影響が懸念された2020年4月には0.5%前後の水準だっただけに、足もとの上昇は急ピッチだ。いちよしアセットマネジメントの秋野充成取締役は「米国の金利上昇は景気回復期待を背景にしたものであり、先行き2.5%前後まで上昇してもおかしくない」という。
この米国の長期金利上昇は銀行株には長短金利差の拡大となり業績回復期待が浮上。米国ではJPモルガン・チェースやシティグループ株が買われ、主要銀行などで構成するKBW指数は指数算出以来の最高値水準に上昇している。
●「良い金利上昇」なら金融株には追い風
もちろん明晩に結果が発表される米連邦公開市場委員会(FOMC)や18~19日にかけての日銀金融政策決定会合の内容次第では、金利が大きく動くこともあり得る。ただ、足もとでNYダウが連日高で最高値を更新し日経平均株価が3万円を回復する動きは「金融当局の決定で、相場のトレンドが大きく変わることはないと判断した国内外の投資家の買い姿勢を反映したもの」(市場関係者)ともみられている。
市場の見方は、足もとの金利上昇は「景気回復を前提にした良い金利高」というものであり、そのなかでは、シクリカルバリュー(景気敏感の割安株)の代表である銀行株など金融セクターは絶好の買い場となる。前出の秋野氏は「短期的にはハイテク株の戻りが狙い目だが、業績回復が見込める銀行株は中長期的な投資妙味がある」とみている。
●りそなHDや野村、T&D、アコムなど妙味も
今後、景気回復を背景にした良い金利上昇を迎えるのなら、三菱UFJや三井住友FG、みずほフィナンシャルグループ <8411> といった大手銀行株には再評価余地が広がる。三菱UFJや三井住友FG、みずほFGの配当利回りは4%台と高く、3月末の権利取りは絶好の投資機会となる。倒産リスクが抑えられ与信費用が低位で収まれば、金利上昇は長短金利差の拡大となり大手銀行株には追い風となる。中小企業や個人に強いりそなホールディングス <8308> なども再評価されそうだ。ただ、システム障害が続くみずほFGには、今後の業績面への影響を警戒する見方もある。
野村ホールディングス <8604> や大和証券グループ本社 <8601> といった証券株は、世界的な株高に伴い金融市場が活況となるなか、株価面での再評価余地は大きい。オンライン証券では、ビットコイン急騰による仮想通貨人気でマネックスグループ <8698> が大幅高となったが、SBI証券を傘下に持つSBIホールディングス <8473> や松井証券 <8628> にも出遅れ物色期待が強い。対面主体の岩井コスモホールディングス <8707> や丸三証券 <8613> なども上昇基調を強めている。
更に、生保では第一生命ホールディングス <8750> やT&Dホールディングス <8795> 、ノンバンクではオリックス <8591> やアコム <8572> 、みずほリース <8425> 、芙蓉総合リース <8424> 、業界再編機運が高まる地銀株ではコンコルディア・フィナンシャルグループ <7186> や静岡銀行 <8355> 、千葉銀行 <8331> 、名古屋銀行 <8522> などにも市場からはチャート妙味が指摘されている。
株探ニュース
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