2. 部門別・地域別動向の詳細
サンワテクノス<8137>は売上高について、その取扱商品別に、電機・電子・機械の3部門に分けて内訳を開示している。また地域別セグメント情報として、売上高及び営業利益を開示している。その概略は以下のようになっている。
電機部門は、半導体関連業界向けの電機品の販売は増加したものの、産業機械業界向けの電機品の販売が減少し、部門の売上高は前年同期比20.8%減の10,565百万円となった。
電子部門は、自動車関連業界向けの電子部品の販売が伸長したものの、産業機械業界向けの電子部品や電子機器の販売が減少したことに加え、半導体関連業界向けの電子機器の販売が減少したため、部門の売上高は前年同期比2.0%減の52,470百万円となった。
機械部門は、半導体関連業界向けの生産設備の販売が増加したものの、産業機械業界向けの生産設備の販売が減少し、部門全体では前期比13.4%減の4,571百万円となった。
日本は、売上高53,889百万円(前年同期比6.5%減)、営業利益529百万円(同50.3%減)となった。半導体関連業界向け電機品や自動車関連業界向け電子部品の販売は伸長したが、産業機械業界向けの販売が各部門で全般的に減少したほか、半導体関連業界向けの電子機器の販売が減少したため、減収減益となった。
アジアは、売上高16,243百万円(前年同期比12.9%減)、営業利益289百万円(同62.9%減)となった。産業機械業界向けの電機品・電子部品及び半導体関連業界向けの電子部品・生産設備の販売が減少したのを、アミューズメント業界向け電子部品の販売増加では補い切れず、大幅減収減益となった。
欧米は売上高3,746百万円(前年同期比10.9%減)、営業利益35百万円(同87.2%減)となった。アミューズメント向け電子部品は好調だったものの産業機械業界向け電子部品などが減少し、大幅な減収減益で着地した。
以上のような部門別・地域別の動向と、需要先別の販売状況は次のようになる。
産業機械業界向けのビジネスは、3部門すべてで低調だったほか、地域的にも日本とアジアの主力市場を始め、全世界的に不振だった。半導体関連業界向けは日本における電機品や機械(生産設備が主体)は増収となったものの、アジアと欧米では減収が目立った。日本国内でも最も売上高の構成比が高いとみられる電子部門は減収となった。
そうしたなかで、自動車関連業界向けは堅調に売上高を伸ばした。同社の自動車関連業界向けの事業は、1)車載向けの電子部品と、2)生産設備の大きく2つのタイプに分けられる。現状は車載向けの電子部品が自動車関連業界向け売上高の70%~80%を占めているものとみられるが、第2四半期は車載向け電子部品と生産設備の双方が順調に伸長した。“車載向け電子部品”の具体的な内容は開示されていないが、自動車業界の大きな流れの1つとなっている衝突防止や自動運転などの運転支援システムに関連した領域で使用される部品とみられ、それゆえに堅調な伸びが継続していると弊社では推測している。
先に、同社の業績はその立ち位置がゆえに商材の実需の状況よりも上下に振れやすい性質があると述べたが、その構図は以下のようなものだ。同社の収益を需要先業界別に分けると、産業機械業界向けが圧倒的に大きい。一方、実際の商品の流れで見ると、同社から最終ユーザーに直接販売するケース(同社があるメーカーに生産ラインの設備を直接納入するケースが典型例)と、同社が生産設備等のセットメーカーに部材を供給するケースの、大きく2つのケースがある。主力の産業機械業界向けビジネスというのは後者のケースになることが多い。
後者の場合には、同社と“企業の設備投資”という言わば“実需”の動きとの間にセットメーカーを挟む形となる。セットメーカーは彼ら自身の需要見通しに基づき、先行き強いとみればそのための部材を同社に多めに発注し、反対に需要が弱くなると手持ちの在庫の消化を優先するため、同社への発注を実需の動向以上に絞り込む傾向がある。これが同社の業績変動性を大きくさせる構図だ。「同社の業績変動幅=製造業における設備投資の変動幅(実需動向)+セットメーカーの在庫調整影響」となる。
この構図自体は同社の立ち位置に根差すものであり、根本的な解消は難しいと弊社では考えている。しかしながら、これは需要の底打ち・回復局面では、同社の業績を上方向に押し上げる力として働くという点を忘れてはならない。また、こうした業績変動性をなくすことは難しいにしても、和らげる方策はある。それは需要先構成や商品構成の変化だ。足元で言えば、自動車関連業界向けの売上高が着実に伸長し、売上構成比が年々高まっていることが挙げられる。既述のように同社の自動車関連業界向け売上高はそのかなりの部分が車載向け電子部品で、最終需要先に直接販売するケースに該当する。間にセットメーカーを挟まない分、同社の業績変動は実需の変動に近く、何よりも現時点は実需が右肩上がりで推移している状況にある。こうした商材や市場を他に拡大させることで、同社が強みを持つ産業機械業界向けの事業を主力事業とする体制を維持しながらも、業績安定性を改善し、好況時には収益拡大に爆発力を発揮できるような収益構造を作り上げることは、十分可能だと弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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